緋弾のアリア~Sランクの頂き~   作:鹿田葉月

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はいどうも、鹿田(ろくた)葉月(はづき)です。
今回はあまり手を入れることが出来ませんでした。主人公入れる部分ないから当然と言えば当然なんですけれど……
それはともかく、第23話、始まります。


今回は終始あかり視点です!


23話~夾竹桃~

ーsideあかりー

 

『From 火野ライカ

件名 あかりどこだ?

 

錐椰先輩が入院した。命に別状なし――』

 

パタンとあたしはメールを見た後に携帯を閉じ、目の前にいる夾竹桃を睨む。あたしたちは今カフェにいて向かい合っている。

 

「あなたが錐椰先輩を……?」

「やったのは私の友人よ、同格だけど異種の子。うちの組織では学園風に『同期』って呼んでるけど。それに凄腕の用心棒も雇ってるわ」

 

(……仲間も来てるんだ……それに用心棒……?)

 

「まだ殺してないんだから落ち着きなさいな」

「……錐椰先輩の事だけじゃない」キッ

 

夾竹桃の言ったことに対してあたしは怒りを覚えた。あたしの右手は太ももにある拳銃を握っていて、左手は制服の背中に隠してナイフを握っている。

 

「そうよ、その目でいいのよ。そういう間宮の子が欲しい」

 

夾竹桃があたしが殺気立っていることに気づき、そう言ってくる。

 

「二年前、あなたたち間宮は私達の組織に賛同せず技術を()した。だからその技術を私達に奪われ、間宮一族は日本各地に隠れ住んだそうね」

「あなたたちのせいだ、夾竹桃」

 

そこで夾竹桃は手に持っていたパイプを含み、息を吐く。

 

「私、あなたの事は気に入っていてよ。そうね……ペットにしてあげる」

 

夾竹桃は少し考えた後、笑顔でそんなことを言ってきたのでゾッとした。

 

「どうしてあたしの前に現れたの?」

「間宮の口伝――秘毒・『鷹捲(たかまくり)』。知っているんでしょ」

 

あたしは夾竹桃の言ったことに対して驚いた。何故夾竹桃が『鷹捲(たかまくり)』の事を――

 

「知らないし、仮に知っていたとしても――」

「まァ、とぼけちゃって」

 

バレバレよ、っと言ってくる夾竹桃を無視して言葉を続ける。

 

「あたしは間宮の術を全部封じたの。教えない」

「教えたくなるようにしてあげましょうか?」

 

と、そこで夾竹桃は足を組み替える。その時に帯銃していないことを確認した。

やるなら今だ――とあたしは思って拳銃を抜いて立ち上がる。

 

「夾竹桃、あなたを逮捕する!おとなしく……」

 

その時、ピッと何かがあたしの首の皮を切った。

 

「え……?」

 

ヒュッと夾竹桃がさっきまで吸っていたパイプを振るう。その先端には、何か細い紐のようなものがついており、あたしの首を絞めている。

 

TNK(ツイステッドナノケブラー)ワイヤー。その防弾制服にも織り込まれてる極細繊維よ」

 

そう言いながら、夾竹桃はワイヤーで首を絞めてくる。ほどこうにも、無理に外そうとすれば指が切れる。

 

「戦っちゃダメ。()()()()()()()()()……いっちゃおうか?ポトリって。交渉決裂気味だし」

 

夾竹桃が操るワイヤーがどんどん首を絞めてくる。もう……息が……

シュルルル、ズバッ

その時、何かが飛んできてワイヤーが切れた。見るとそれは……扇子(せんす)

 

「――『弱い』ですって?聞き捨てならないわね。これ以上その子を傷つけるなら、障害罪で逮捕するわよ!」

 

現れたのは、カルテットで勝負した高千穂さんだった。

 

「間宮あかりは(わたくし)を倒した。それを『弱い』と侮辱したのは、(わたくし)への侮辱でもあるわ!」

 

そう言ってあたしの隣まで来てそう宣言した。良く分からないけれど、助けてくれたらしい。

 

「高千穂さん……助かったよ」

 

あたしがお礼を言うと、高千穂さんは顔を赤くしていた。熱でもあるのかな?

 

「べっ別にお前を助けたかったワケじゃないわよっ、話を聞いてなかったの?」

「で、でも」

「お前はお前でまたイジメてやるっちゃ!」

 

な、何で!?ていうか高千穂さん、方言出ちゃってるし……

 

「――つまり、どこのどなたか知らないけど、(わたくし)を侮辱し、あまつさえ獲物を横取りしようとした罪は重くてよ!」

 

そう言いながら高千穂さんはロングスカートのジッパーを降ろし、スカート内のホルスターからスタームルガー・スーパーレッドホークを取り出した。

これで戦況は2対1。いくら夾竹桃でも二人相手にするのは厳しいはず。一体どう出る……

夾竹桃はあたしたちを無言で見ていた後、何故か頬を赤く染めた……何で?

 

「そう。そういう関係なの」

 

そう言いながら夾竹桃はスッと立ち上がった。

 

「……これで一冊描けるわ。夏に間に合うかしら……」

 

ボソボソと何か夾竹桃が呟いているが、声が小さいので聞こえない。

 

「そういう女同士の友情はジャマしないわ。私は無法者だけど、無粋(ぶすい)じゃない」

 

鼻血をハンカチで拭きながらそう告げてくる夾竹桃。何故鼻血が出ているんだろう……高千穂さんも首を傾げている。

 

「間宮の子、あなたに一週間の時を与えるわ。何にせよ()は二年前に植えた、そろそろ花咲く頃よ……あなたの全てが私のものになれば、誰も傷つかなくて済むわ」

 

そう言い残し、夾竹桃はカフェから出ていった。その時に何か小さな紙を落としていったので拾って見てみると、メアドが書かれていた。

その後にあたしと高千穂さんは外に出た。

 

「高千穂さん、ありがとう」

「か、勘違いしないことね。今のはその……お前がコロッと(たお)されたら、(わたくし)も学校で笑われるからよ」

 

あたしがお礼を言うと高千穂さんは驚いて、アタフタと喋った後、スタスタと歩いていった。あたしはそれを見送った後、武偵病院の方へと向かった。

 

 

 

 

 

現在あたしが居るのは武偵病院。錐椰先輩の様子を見に来たのだが、錐椰先輩は面会謝絶だった。

あたしが落ち込んでいると、ののかが病院に入ってきた。何かフラフラとしているけど、大丈夫かな?

 

「ののか、ここだよ」

 

あたしがそう言うと、ののかはこちらを振り向いた。

 

「お姉ちゃん」

「ごめんね、急に呼び出して。あたし今日ここを離れられないから……はい」

 

あたしが制服のポケットの中から二万円と新幹線の長野行きのチケットを取り出す。それを見て、ののかは不思議そうな顔をした。

 

「しばらく長野のおばさんの所にいて。ワケは後で話すよ」

 

――これは夾竹桃が東京に現れたからだ。多分だが、夾竹桃は東京にしばらく居続けるだろう。

あたしは武偵だが、ののかは一般の中学校に通っている。武装もしていないなか、夾竹桃と居合わせたらののかが危ない。だからしばらく長野に居てもらうことにした。

 

「う、うん……あ……」

「?のの……」

 

あたしの言葉に頷いたののかは受け取ろうとするが、取り損なったと思ったらそのまま倒れこんだ。

 

「ののか……?ののか!ののか!」

 

 

 

 

 

「……ののか、うっ……ぐすっ……」

 

その後、ののかはすぐに入院となり、結果を調べると原因不明の失明とのことだった。現在は病室にいる。

 

(錐椰先輩だけじゃなくて、ののかまで入院だなんて……どうしたらいいの?)

 

「大丈夫だよお姉ちゃん、きっとすぐ治るから」

 

そう言ってののかはあたしの手の上に自分の手を置いてくる。その目には包帯がまいてある。

 

「でも、お医者さんも原因が分からないって……」

「だらしないぞ、お姉ちゃん。目が見えなくても耳は聞こえるし、喋れるんだから」

「――(いな)。視覚の次は聴覚、続いて味覚――8日もすれば、命を落とされる」

 

その時、突然ののかとは違う声がしたのでそちらを見ると、そこには風魔 陽菜がいた。

 

「間宮様!」

「あかり!」

「ののかさん!」

 

それに続いて、麒麟(きりん)ちゃん、ライカ、志乃ちゃんが病室に入ってくる。

 

「ののか殿の症状の原因は、打たれて二年の後に五感と命を奪う『符丁毒(ふちょうどく)』。その分子構造は暗号状になっており、作った本人しか解毒出来申さぬ」

「どうして知っているのそんなこと!」

「……それは元々、風魔の術に御座(ござ)った(ゆえ)

 

風魔さんが言ったことに、あたしたちは驚きを隠せなかった。元々は風魔の技……?

 

「それがどうしてののかさんに……?」

「一党の不覚をお詫び致す。数年前に幼子に別の毒を打たれ――解毒して欲しくばと製法を強請(ゆす)り取られたので御座る」

 

麒麟(きりん)ちゃんの質問に、風魔さんが答える。ということは……

 

「毒を以て毒を奪うこの手口、()()()に御座るな」

 

やっぱり……夾竹桃……

 

『あなたの全てが私のものになれば、誰も傷つかなくて済むわ』

 

カフェで夾竹桃が言ったことの意味がようやく分かった。あれは、ののかのことを言っていたんだ……

クシャリとあたしは制服のポケットの中にある、夾竹桃のメアドが書かれている紙を握った。

 

(ののかの毒を解けるのは……夾竹桃だけ……!あたしが夾竹桃のペットになれば……ののかを助けられるんだ!)

 

そう思ったあたしは病室から出て行こうとする。

 

「あかり!」

「あかりさん!」

「ついてこないで!あたしが犠牲になれば……いいの!」

 

そう言ってガラッと病室の扉を開けて駆け出そうとした。

すると、ドスッ!

 

「ゴフッ!」

 

――病室の目の前にいた誰かに思いっきり体当たりしてしまった。

ヤバい!謝らなきゃと思って相手を見ると、

 

「グォォォォ……腹が、腹が~!」

 

――と、腹を押さえてのたうち回っている、錐椰先輩だった。

 

「え!?錐椰先輩!?」

「ああ……あかりちゃん……( ;∀;)ノヤァ……」

 

腹を押さえたまま、挨拶してくる錐椰先輩。でもとても痛そうで、顔文字も泣いている……ってそんなことじゃない!

 

「錐椰先輩、面会謝絶じゃなかったんですか!?」

「ああ、あれね?ちょっと調べたいことがあったから集中できるようにそうしてもらったんだ。怪我自体はもうほとんど大丈夫だよ」

 

そう言ってスクッと立ち上がる。本当に大丈夫そうだ。当たった時は痛そうだったが。

 

「で、調べものしている最中に高千穂さんからメールが来たからアリアと一緒にあかりちゃんのこと捜していたって所。なあアリア?」

「そうよ」

 

ヒョコッとアリア先輩が顔を出す。

 

「それで何かののかちゃんが入院したっていう話を聞いたから病室番号聞いて来てみたら、あかりちゃんからのタックル喰らったってところ」

「う……すみません」

「まあ、冗談はさておき……あかりちゃん、敵に接触(コンタクト)されたでしょ?」

「な、何で……」

 

やっぱりね、と錐椰先輩は言ったが、あたしは何で分かったのかサッパリ分からない。

 

「ねぇ、あかり。アタシ、カンは鋭い方なの」

「……?」

 

アリア先輩がイキナリ真面目な顔でそう言ってくる。

 

「アンタが隠しているのはその事――夾竹桃だけじゃない。自分自身の事も隠している」

「……‼」

 

アリア先輩が言ったことに対して、あたしは何も言えない。

 

「ずっと隠して本当の能力を抑えてきた。だから武偵ランクも低いまま。違う?」

 

アリア先輩の言葉に、麒麟(きりん)ちゃん、ライカ、志乃ちゃんは驚愕する。その中で唯一、錐椰先輩は動じなかった。錐椰先輩のことだ、きっと最初から分かっていたのだろう。

 

「何もかも隠したまま、何もかも解決できるの?」

 

アリア先輩の最後の言った言葉に、あたしはようやく決心がついた。

――話そう。皆にあたしのことを、間宮のことを。例え嫌われようとも、罵倒されようとも。

 

「ごめんねみんな、今まで隠してて……」

 

――これがあたしが武偵としていられる、最後の瞬間なんだ。

 

「……話します。あたし、尊敬するアリア先輩や錐椰先輩の前で……嘘つけませんから……」

 

――サヨウナラ、皆。サヨウナラ、アリア先輩。サヨウナラ、錐椰先輩。

 

「――あたしは元々、この学校に入っちゃいけなかった生徒なんです」




どうでしたでしょうか?
次から主人公絡めることができますので、今回はこれで失礼します。
それでは、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ

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