少し皆様にお話が。
実は私用により今まで1日最低1話にしていたところを、これからは3日に1話のペースになります。なにとぞご理解ください。
では、第12話、始まります。
銀行強盗達を数分で無力化し、警察にシャッターの件についてお咎め無しというありがたい配慮を頂き、『紅電』の名前が意外な所にまで知れ渡っているということを知った翌日。俺はキンジに連れられて女子寮の前の温室に来た。なんだ、花でも見たかったのか?乙女かよ。
実際のところはそうではなく、誰かと待ち合わせに来ているらしい、その相手は……
「――理子」
「あ、キーくぅーん!レイレーイ!」
バラ園の奥で、理子がくるっと振り返った。
理子はアリアより少し背が大きいくらいだが、美少女の部類に入る。ふたえの目はキラキラと大きく、緩いウェーブのかかった髪はツーサイドアップ。ふんわり背中に垂らした長い髪に加えて、ツインテールを増設した欲張りな髪型だ。
「相変わらずの改造制服だな。なんだその白いフワフワは」
「これは武偵高の女子制服・白ロリ風アレンジだよ!キーくん、いいかげんロリータの種類ぐらい覚えようよぉ。あとレイレイも」
「悪いが俺も全然分からないわ」
「キッパリと断る。ったく、お前はいったい何着制服をもっているんだ」
そう言われて指を折り折り改造制服の種類を数え始めた理子。おいおい、両手でも数えきれないのかよ。
「理子こっち向け。いいか。ここでの事はアリアには秘密だぞ」
「うー!らじゃー!」びしっ。
理子はキヲツケの姿勢になり、両手で敬礼ポーズをとる。この前もやったな、それ。
キンジは苦い顔で紙袋を差し出すと、理子は袋をびりびり破いていった。ふんふんふん。荒い鼻息。まるでケモノだな、可愛い顔が台無しだ。
「うっっっわぁ――――!『しろくろっ!』と『
ぴょんぴょん跳びはねながら理子が両手でぶんぶん振り回しているものはいわゆるR―15指定、つまりギャルゲーだ。
後にキンジに話を聞いたところ、理子は服装から分かる通りオタクらしい。
しかし世間一般のオタク女子と違うことには、理子は女のくせにギャルゲーのマニアという奇特な趣味の持ち主なのだ。中でも特に自分と同じようなヒラヒラでフワフワの服を着たヒロインが出てくる物に強い関心を示す。
もちろん理子も15才以上なのでギャルゲーを買うことができる。しかし先日、理子がゲームショップも兼ねている学園島のビデオ屋でバイトのお姉さんに身長で中学生と勘違いをしたのか、R―15のゲームを売ってもらえなかったらしいから代わりにキンジが買いにいったということだ。
「あ……これと、これはいらない。理子はこういうの、キライなの」
……なんでだ?全て理子が好みそうなパッケージなんだが。
ぶっすぅー、と、膨れっ面で理子がキンジに突っ返したのは『
「なんでたよ。これ、他と同じようなヤツだろ」
「ちがう。『2』とか『3』なんて、
……ワケの分からないヘソの曲げかたしてるな、理子。
「まぁ……とにかく、じゃあ続編以外のそのゲームをくれてやる。あと零も連れてきたんだ、こないだ依頼した通り、アリアについて調査したことをきっちり話せよ?」
「――あい!」
「……ん?何で俺が出てくるんだ?」
てかなんで俺がここに呼ばれたんだ?
「それは~、理子が依頼の報酬に~、レイレイと会わせてって入れたからだよ~?」
何故に?
「レイレイに~、質問があるんだよ」
「なんだよ、俺に質問って?」
なんか気になるようなことでもしたか、俺?
「アリアと付き合ってるの?」
「は?」
何言ってるんだこいつ。
「だって~二人が朝にバイクに乗って登校してきたって聞いてるよ?それを聞いたアリアのファン達が『
「ナニソレ、ボクシラナイ」
「片言になってるぞ……」
いやしょうがないだろ、いきなりそうなってるなんて思いもしないし。
「で、実際のところはどうなの!?アツアツ!?アツアツ!?」
「うるさい、俺とアリアはただのパートナーだ」
「――ふぅん、パートナー、ね」
パートナーという単語を聞いた途端、理子の目付きが鋭くなった。その目は俺を見定めるような感じだ。
「そんなことより理子、早くアリアの情報をくれ」
「うぉっと、そうだった。じゃあ教えまーす!」
そう言って理子はアリアの情報について語りだした。
理子からアリアの情報を聞いたあと、俺達は男子寮へと帰ってきた。男子寮の窓から見渡す『学園島』を夕陽が金色に染めていた。
武偵高とその寮、生徒向けの商品だけが乗っているこの
そのがらんとした人工浮島の南端には仕方なしに立てられた風力発電機がノンキに回っている。のどかだなぁ。
『太平洋上で発生した台風1号は、強い勢力を保ったまま沖縄上空を北上しています』
ニュースを垂れ流す液晶テレビが、
「遅い」
ぎろ、とアリアがソファーから頭を傾けてこっちを見てきた。なんだ、いたのか。全然気づかなかった。
「どうやって入ったんだ、鍵は渡してなかったはずたが?」
「レイから貰ったわよ」
「おい零!どういうことだ!」
「女子を玄関先で待たす訳にもいかないだろう?」
「うっ」
こいつまさかそのこと分からなかったのか?それだったらヤバイぞ。
「そうよそうよ、失礼よ」
「お前にだけは言われたくないぞ、でぼちん」
「でぼちん?」
「額のでかい女のことだ」
「アタシのおでこの魅力に気づかないなんて本格的に人類失格ね、この額はアタシのチャームポイントなのよ。イタリアでは女の子向けのヘアカタログ誌に載ったことだってあるんだから」
「そうかい、流石は貴族様、身だしなみにもお気をつかっていらっしゃる」
そう言ってキンジは洗面所へと向かう。アリアは自分のことを貴族様と呼んだキンジに最初は驚いていたが、すぐに嬉しそうにキンジの後についていく。
「アタシのこと、調べたのね」
「神埼・H・アリア。
キンジは答える代わりにアリアのプロフィールを言う。
「へぇ~、そこまで調べたんだ」
「他にも泳げな――」
「風穴開けられたいの?」
ぎろ、とアリアが睨むとキンジが黙る。
「――まあでも、この間一人逃がしたわ。生まれて初めてね」
おっと、理子の情報に間違いがあったのか。あいつバカのくせに情報探るのが上手くて
「ちなみに逃がしたのは誰だ?」
「キンジよ」
ブッハアッとキンジがうがいをするために含んでいた水を吐き出す。きたねぇ!
「な、なんで俺がカウントされてんだよっ!俺は犯罪者じゃないぞ!」
「
なんかキンジの評価がどんどん堕ちていくな。ドレイに始まりケダモノ、さらにウジ虫か。
「だからあれは不可抗力だっつってんだろ!それに零だって逃げたじゃないか!」
おいキンジよ、さりげなく俺まで巻き込むな。
「レイは逃げただけであって犯罪を犯してないでしょ!――とにかく!」
びしっ!とアリアは真っ赤になりながらキンジを指さした。
「あんたなら、レイのいない時の代わりになるかもしれないの!
「あれは……あの時は……零がいたからうまく逃げられただけだ。俺はEランクの、大したことない男なんだよ。はい残念でした。出ていってくれ」
「ウソよ!あんたの入学試験の成績、Sランクだった!」
アリアにそう言われてキンジはギクリとした表情になる。やっぱりキンジのことについて調べていたか。
「つまりあれはレイがいたからってだけじゃないってことよ!アタシの直感に狂いは無いわ!」
「と、とにかく……
あ、キンジ。墓穴掘ったぞ。その言い方なら――
「
――てことになるからな。
アリアにそう言われてキンジは赤くなる。
もちろんアリアはヒステリアモードのトリガーを知らないから気軽に言ったんだろうが、キンジにとっては爆弾発言だ。なんせ『性的に興奮させる』って意味だからな。このままじゃキンジは混乱してさらに自爆するだろう。
――しょうがない、助けてやるか。
「アリア、キンジ」
「何、レイ?」
「な、なんだ零?」
「一回だけお試し期間をつければどうだ?」
「「お試し期間?」」
「キンジは一回だけ
「「……」」
二人は暫くの間考えていたが、やがて顔を上げて頷いた。
「分かったわ、アタシにも時間がないし。その一件で、キンジの実力を見極めることにする」
「どんな小さな事件でも、一件だぞ」
「OKよ。そのかわりどんな大きな事件も一件よ」
「分かった」
「ただし、手抜きしたら風穴あけるわよ」
「ああ。約束する。全力でやってやるよ」
……キンジのヤツ、通常モードの全力でやるつもりだな。まあいいや、これで丸く収まったし。
「さあ、
「――あら?誰が組むことにしたら帰るって言ったかしら?」
「「はっ?」」
え、どういうこと?俺も訳分からないんだけど……
「ど、どういうことだ!組んだら帰るはずじゃなかったのか!?」
「確かに『パーティーに入らなかったら泊まっていく』って言ったけど、誰も『組んだら戻る』って言ってないじゃない。それにレイの御飯も美味しいし」
「なん……だと……?」バタッ
「大丈夫か~キンジ?」
……返事がない。そうとう参ったみたいだな、合掌。
「ということで、これからもよろしくね。レイ」
「おう、分かった」
とはいえ、俺は別に嫌じゃないから反対しないけどな。
ドンマイ、キンジ。
どうでしたでしょうか?
ヒロインアンケートの結果ですが、
1に16標
2に8標となっています。
締め切りは11日までなので、早めにご参加ください。
では、ご機嫌よう。