ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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深海の歌姫

明久と雪菜が並び立った直後、レヴィアタンは咆哮

そして、口を開けた

 

「雪菜ちゃん!」

 

「はい!」

 

明久が雪菜の名前を呼ぶと、雪菜は雪霞狼を構えた

その直後、レヴィアタンから砲撃が放たれた

余りの威力に、雪菜の体が後ろに押される

だが、その雪菜の背中を明久が支えて

 

「頑張って! 雪菜ちゃん!」

 

と激励した

それが聞こえたのか、雪菜は

 

「はああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

雪霞狼の神格震動波を最大展開させ、レヴィアタンの砲撃を防ぎきった

しかし、やはりレヴィアタンの砲撃を防ぐのは雪菜に多大な負荷を与えていた

防ぎきった直後、雪菜は膝を突いて荒く呼吸を繰り返していた

だが、レヴィアタンは攻撃を緩めなかった

数秒後、レヴィアタンはあの生態式ミサイルを発射した

それも、数える気すら起きない数を

 

「獅子の黄金! 双角の深緋!」

 

その生態式ミサイル郡に対して、明久は広範囲攻撃が可能な二体の眷獣を召喚

迎撃した

それにより、空中に炎の絨毯が形成された

 

「つう! 明らかに、数が多い!?」

 

「来た時は、私が放ってたんです! 牽制だけが目的だったから、最低限だけにしました!!」

 

明久の言葉に、結瞳がそう言った

それを聞いた明久は、レヴィアタンを睨み

 

「つまり、これが完全解放されたレヴィアタンの能力か……」

 

と呟いた

それを裏付けるかのように、今のレヴィアタンからは凄まじい魔力が漏れ出している

その比は、来た時の比ではなかった

やはり、眠っていたのだろう

しかし今のレヴィアタンは、完全に覚醒し、しかも怒っている

出力は段違いに跳ね上がっているのだ

 

「……しかも、攻撃だけじゃなく防御の出力も上がってるのか……隔壁付近の魔力の流れが変わってる……いや、学習して、防御の障壁自体を複層式にしてるのか……!」

 

それは恐らく、明久が突撃する時に使った安綱対策だろう

突撃した時は、左腕一本分の血と肉を生け贄にして、レヴィアタンの障壁と隔壁を切り裂いた

しかし、複層式障壁に出力が強化された隔壁

左腕一本分では、斬れるか分からない

その時だった

レヴィアタンは、体を高く持ち上げた

 

「なんだ……なにを!?」

 

と明久が言った直後、凄まじい数の生態式ミサイルが放たれた

 

「なっ!? 何処に!?」

 

しかもそのミサイルは、明久達の頭上を越えていった

すると、雪菜が

 

「先輩、あの方角は!?」

 

「……しまった、ブルエリか!?」

 

雪菜の言葉に、明久はレヴィアタンの狙いに気付いた

自分を使おうとしていたクスキエリゼ

そのシステムと様々な設備と社員を、狙ったのだと

それも、複数波放っていた

 

「このぉ!!」

 

それを見た明久は、二体の眷獣でミサイルの撃破を行った

しかし、余りの数に全て撃破出来ずに、相当数が抜けた

 

「くそっ! 抜けられた!!」

 

「先輩、来ます!!」

 

雪菜の言葉に、明久は振り向いた

すると、レヴィアタンは赤い目で明久達を睨んでいた

そのレヴィアタンに

 

「ある意味、こいつは適任だね……今回、使わないかもと思ってたけど……」

 

と言って、右腕を掲げた

そして

 

焔光の夜伯(カレイドブラッド)の血脈を継ぎし者、吉井明久が、汝が枷を解き放つ! 疾く在れ(こい)! 7番目の眷獣……夜摩の黒剣(キファ・アーテル)!!」

 

明久のその呼び掛けに、一体の眷獣が上空に姿を現した

その見た目は、神仏が持っている武神具、三鈷剣だった

それを見た雪菜は、その三鈷剣の正体に気付いた

 

「あれは……意思を持つ武器(インテリジェントウエポン)!?」

 

そうそれは、吸血鬼の眷獣の中では珍しいタイプの意思を持つ武器だった

しかし、その規模が段違いだった

柄尻から切っ先まで、約100mは優にあった

そして明久は、レヴィアタンを指差し

 

「行けぇ!!」

 

と指示を下した

その直後、夜摩の黒剣は凄まじい速度で落下を始めた

 

「まさか……重力制御!?」

 

夜摩の黒剣の能力

それは、重力制御だった

それも自分だけでなく、相手にもだ

レヴィアタンは避けようとしているようだが、動きが鈍かった

その理由は、夜摩の黒剣がレヴィアタン周囲の重力を不規則変動させていたからだ

幾ら高い学習能力を持つレヴィアタンだろうが、不規則に変わる重力に、簡単には対応出来なかった

その間にも夜摩の黒剣は加速化し、まるで隕石のように赤熱化した気流を伴いながらレヴィアタンに直撃した

推定数十万tの隕石の直撃に匹敵する威力に、レヴィアタンは悲鳴を上げた

だが、悲鳴を上げたのはレヴィアタンだけでなく

 

「落ちる、落ちるっ!?」

 

「先輩、やり過ぎですっ!!」

 

夜摩の黒剣の着弾の衝撃で、海が大きくうねったのだ

それにより船から振り落とされないように、明久と雪菜は必至に柵に捕まっていた

なんとか収まり、明久と雪菜はレヴィアタンの方を見た

すると海中から、流石に無傷ではないが、レヴィアタンが姿を現した

しかもよく見れば、少しずつ損傷が直っている

 

「不味い……これ以上は……っ!」

 

安綱の使用と度重なる眷獣の召喚

それは確実に、明久の体にダメージを与えていた

それに、雪菜の雪霞狼も当たらなければ意味が無い

海という不利なフィールドでは、レヴィアタンに分が有った

雪菜も打開策が浮かばないらしく、悔しそうにしていた

だが、その時

 

「いえ……決まりですよ、明久お兄さん、雪菜お姉さん……」

 

と結瞳が、ゆっくりとレヴィアタンに近づいていく

 

「結瞳ちゃん!?」

 

「何を!?」

 

それを見た二人は、まさか結瞳が生け贄になるのかと思った

しかし結瞳は、大きく深呼吸すると歌を歌い始めた

その旋律に、明久は不思議と安らぎを覚えた

 

「これは……子守唄……?」

 

と呟いたのは、雪菜だった

恐らくその子守唄は、過去に結瞳の両親が結瞳のために歌っていたのだろう

それを結瞳は、レヴィアタンのために歌った

すると、レヴィアタンから放たれていた怒りの雰囲気と迸っていた魔力が徐々に収まっていく

その光景に、明久は

 

「最悪の夢魔? 僕には、最高の歌姫に見えるよ……」

 

と呟いた

結瞳が歌い終わった時には、レヴィアタンはゆっくりと海中に姿を消していったのだった

こうして、世界最古にして最強の生態兵器は深い深い海の底に帰っていったのだった


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