ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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代償と一端

「あたたた……雪菜ちゃん、大丈夫?」

 

「はい、なんとか……」

 

明久が問い掛けると、雪菜は体を起こしながらそう言った

そこに、ノイズ混じりに

 

『悪いな……どうやら……レヴィアタンの中は……電波が通りにくい……らしい……ここまでだ……』

 

とモグワイの声が聞こえた

 

「ありがとう、モグワイ……」

 

明久がモグワイに感謝の言葉を言うと、雪菜が

 

「ここは……ドック……ですか?」

 

と周囲を見回した

 

「なるほど……その入り口だっから、魔力の流れが弱かったのか……狙って正解だった」

 

そんな二人から少し離れた場所には、一隻の船

ヨダカが、懸架されている

クスキエリゼの船に、間違いないだろう

それを見た明久は

 

「ねえ……雪菜ちゃん……少し、血を貰える?」

 

と雪菜に問い掛けた

すると雪菜は、顔を真っ赤にしながら

 

「い、いきなり何を言ってるんですか!? 血なら、沙矢華さんから吸ったじゃないんですか!?」

 

と反論した

確かに、明久は沙矢華から血を吸っている

 

「まあ、確かにそうなんだけどね……割りと切実なんだよね……」

 

「? それって、どういう……」

 

明久の言葉に、雪菜は問い掛けようとした

その時、ビチャリと嫌な音がした

それを聞いた雪菜は、明久の左腕が、真っ赤になっていることに気がついた

 

「先輩!?」

 

「この刀の……反動っていうか……リスクだよ」

 

明久はそう言って、右手でなんとか刀を納めた

 

「童子切安綱……」

 

「天下五剣……まさか……妖刀……?」

 

雪菜のその推察は、正解だった

天下五剣の一振り、童子切安綱

この刀は昔、日本三大妖怪と言われていた内の一体

酒呑童子を切った刀である

しかしその後、安綱は呪われた

絶大な威力を発揮する変わりに、使い手の血肉を喰らう妖刀に

では、博物館に展示されているのは?

その正体は、影打ちである

その昔、神社に奉納される御神刀は二本打たれた

その理由は、何らかの事態により失われた場合、代わりに奉納するためである

一説によれば、その酒呑童子を討った武将は、酒呑童子を討つためにある神社に奉納されていた真打ち安綱を借り受けた

神性の力を帯びているだろうから、討てるだろうと

その目論見は成功し、確かに討伐出来た

だが、討たれた酒呑童子の怨念が非常に強く、御神刀だった安綱を妖刀に変じせた

妖刀になってしまっては、最早神社に奉納することは出来ない

だから真打ち安綱の代わりに、影打ち安綱を納めた

影打ちとは言っても、刃紋から反りに至るまで、完全に同一の代物で、唯一違うのは耐久性位だろうか

しかし、真打ちの安綱は二度に渡る世界大戦の影響で失われてしまっていたのだ

 

「先輩っ!」

 

「つっ……やっぱり、左手一本分の血肉は……厳しいか……」

 

ふらついた明久を、雪菜は支えた

よく見れば、明久の左手は痩せ細っている

はっきり言って、最早使い物になりそうにない

 

「……取り敢えず、しばらく放置すれば……再生するだろうけど……」

 

幾ら不死だろうが、手一本分の血と肉の大部分を失ったのだ

回復に時間が掛かるのは、一目瞭然だ

だが、今居る場所はレヴィアタンの中

つまり、敵地のど真ん中である

長居するのは、リスクがあり過ぎた

そう判断したのか、雪菜は

 

「仕方ないですね……」

 

と呟いた

何より、明久の戦闘力は頼りになる

長時間失うには、惜しいのだ

 

「先輩……」

 

雪菜はそう言いながら、着ていた服の胸元のボタンを外して、うなじを露出させた

 

「雪菜ちゃん……いいの?」

 

「先輩のほうが、辛いじゃないですか……だったら、吸ってください……」

 

雪菜がそう言うと、明久は優しく雪菜を抱き締めて

 

「ありがとう、雪菜ちゃん……結瞳ちゃん……助けようね」

 

と言って、雪菜の首筋に牙を突き立てた

その頃、水族館エリアの一角では

 

「どういうことよ……藍羽さんが……カインの巫女?」

 

と沙矢華は、倒した霧葉を見下ろしていた

どうやって倒したのかと言えば、沙矢華は自分に呪い間近の身体強化(フィジカルエンチャント)を付加

高められた身体能力を活かして、肉弾戦で倒したのだ

しかし、気になることを聞いていた

それが、今ロッジにて電脳戦を繰り広げている少女

浅葱が、旧神カインの巫女であり、絃神島がその祭壇だと聞いたのだ

 

「取り敢えず、今は……待機するしかないわね……頼むわよ、雪菜……吉井明久……」

 

今は出来ることが無い沙矢華は、レヴィアタンに取りついたと信じることしか出来なかった


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