ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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その名は

「な……何が起きたんですか、これは……」

 

と言ったのは、帰還した雪菜である

雪菜が見たのは、コテージの前にある巨大な穴

直径数mの穴

そんな穴を空けたのは、間違いなく明久だろう

しかし、決着はどうなったのか

それが気になった雪菜は、穴を覗くために近寄った

その時、淵の一ヶ所に沙矢華が倒れていることに気づいた

 

「沙矢華さん! 大丈夫ですか!?」

 

もし戻ってなかったことを想定し、何時でも動けるようにしながら、雪菜は沙矢華に声をかけた

すると、うっすらと沙矢華の目が開き

 

「う……確か、あの研究所っぽい所で、精神操作……」

 

と沙矢華が、額に左手を当てながら呟いた

どうやら、正気らしい

雪菜がそれに安堵した直後

 

「そうだ! あのバカは!? 私思いきり、あのバカの腹に煌華燐をぶっ刺しちゃったんだけど!?」

 

「腹、ぶっ刺し!?」

 

沙矢華が告げた言葉を聞いて、驚いた

煌華燐は雪霞狼のような魔力無効化能力こそ無いが、それでも獅子王機関の切り札の一つに当たる

剣形態の疑似空間切断は、ほぼ防御を無効化する

それで、腹を刺し貫いた

幾ら何でも、大ダメージは確実である

その時だった

 

「あ……やっぱり、記憶が有るんだ……だったら、僕が戦って正解だったね……」

 

と弱々しい声が聞こえた

その声を聞いた二人は、弾かれたように声が聞こえた下の方に顔を向けた

二人の居る場所から、斜め下方

そこに、下半身を海水に入れた状態の明久が横たわっていた

その近くには、自ら抜いたらしい煌華燐が無造作に置いてある

二人は滑落しないように、かつ素早く明久に近寄り

 

「先輩!」

 

「あんた……怪我は……!」

 

と明久を、引き上げた

よく見れば、明久の右腹部に縦に刺痕が残っている

それを見た沙矢華は、泣きそうになっていた

すると、明久は

 

「大丈夫……傷は、大方治ってきてる……流した血も、煌坂さんから少し貰った……」

 

と言った

それを聞いた沙矢華は

 

「けど、私……思いきり……」

 

と刺痕に手を当てた

すると明久は、そんな沙矢華の頬に血が残っている手を当てて

 

「まあ、僕で良かったよ……僕なら、治るし……あー……刀使わないで、良かった……」

 

と呟いた

血が残っているのは、海水が混じったからだろう

幾ら沙矢華から血を吸ったとは言っても、かなり戻っていない筈だ

その証拠に、明久の顔は少し白い

すると、雪菜が

 

「すいません、先輩……私は、結瞳ちゃんを連れ戻せませんでした……」

 

と謝罪した

あの後雪菜は、強化された脚力で車を追い抜き、先回り

霧葉と交戦した

その霧葉だが、獅子王機関とは別の対魔組織

太史局の六刃の一人だと分かった

別名、黒の剣巫

獅子王機関が表ならば、太史局は裏

獅子王機関も任務の為ならば手段は問わないが、太史局は更に過激な面が強いらしい

今回はどんな命令を受けたか知らないが、精神操作という後ろ暗い術を使ってきた程だ

かなりのことをしてくるのは、雪菜にも予想出来た

 

「ん、分かった……だったら、やることは決まってる……」

 

明久はそう言って、起き上がろうとした

すると、二人が

 

「先輩!」

 

「無理しないで!?」

 

と明久を支えた

そして明久は、二人に支えられながら穴から出た

そこに

 

「うわっ!? なにこれ!?」

 

と浅葱の声が聞こえた

どうやら、穴を見て驚いたようだ

そして、明久達を見て

 

「何があったのよ!? というか、明久はどうしたのよ!?」

 

と近寄ってきた

すると、明久は

 

「浅葱……今すぐ、クスキエリゼを調べて」

 

と浅葱に言った

 

「クスキエリゼを?」

 

「うん……結瞳ちゃんが、拐われた……それに、クスキエリゼが深く関わってる筈だ……」

 

浅葱が首を傾げると、明久はそう言った

それは、様々な状況証拠からだ

結瞳が逃げてきたのは、水族館のエリアかららしい

次に霧葉が乗ってきたらしい車だが、側面には水族館の名前があった

そして水族館は、クスキエリゼが出資している

そしてそのクスキエリゼは、裏でテロに深く関わっている

それらを総合すると、どうしても嫌な予感がした

それを聞いた浅葱は、少ししてから

 

「分かったわ……」

 

と言って、コテージに戻った

その後に、三人もゆっくりと戻った

三人が浅葱の部屋に入ると、浅葱はノートパソコンを高速でタイピングしていた

 

「このノートパソコン、少しパワーが弱いから、少し待って……よし、モグワイ!!」

 

『おお、久しぶりだな。嬢ちゃん。バカンスは楽しんでるか?』

 

浅葱が呼び掛けると、画面の端に浅葱の仕事の相方たるモグワイのアバターが映った

しかし浅葱は

 

「そんな余裕無いわよ! それより、クスキエリゼのサーバーに侵入するから、手伝いなさい!」

 

と言った

 

『はいよ……ったく、本当にAI使いの荒い嬢ちゃんだぜ』

 

モグワイがそう言った直後、一気に数枚のウィンドウが表示された

浅葱はそれらを素早く確認していき

 

「やっぱり、相当後ろ暗いことをやってるわね……金の動きが激しいわ……特に、最近は何かやってるわね……」

 

と呟いた

そして、数秒後

 

「はぁ!? ちょっ……本気!?」

 

と驚きの声を上げた

それを聞いた明久は

 

「何か分かった?」

 

と問い掛けた

すると、浅葱は

 

「クスキエリゼの社長、絃神島を……ううん、世界征服にある化け物を支配するつもりよ!」

 

と言った

それを聞いた沙矢華は

 

「ある化け物って、なによ?」

 

と浅葱に問い掛けた

すると、浅葱は

 

「明久でも、知ってる筈よ……欧州の神話にその名を残す、海の化け物……」

 

と言った

 

「待ってください、藍羽先輩……まさか!?」

 

雪菜は浅葱が言おうとした名前に行き当たったのか、目を見開いていた

すると浅葱は、頷いてから

 

「正真正銘の海の化け物……世界最古にして最強の生態兵器……レヴィアタンよ……」

 

とその名前を言った


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