「莉璢……だって?」
その名前を聞いた明久は、いぶかしんだ
その名前は、結瞳から聞いていた双子の姉妹だという名前だったからだ
だが、目の前に居るのは確かに結瞳の体だが、中身が違う
そこから明久は、ある可能性に気付いた
「まさか……二重人格……?」
二重人格
または、多重人格
所謂精神的な病気に属するもので、大概が過去に何らかの辛い経験をしたことで起きる
すると、結瞳
否、莉璢は
「あは、大正解」
と肯定した
そして、莉璢は妖艶な笑みを浮かべ
「結瞳はズルいよねぇ……辛い経験をしたからって、逃げて……私に、罪の意識を押し付けてさ」
と語りだした
その言葉には、軽い軽蔑の念が込もっている
「だけど、仕方ないよねぇ……結瞳は小さい頃から、世界最強の夢魔の力を宿してて……それが理由で、両親からは疎まれて、イジメが起きて、イジメてきた奴が二度と目覚めなくなったんだからさ……」
「夢魔……」
「サキュバス……ですね」
夢魔
女性だとサキュバス
男性では、インキュバスと呼ばれる種族だ
その特性としては、淫らな夢を見せて、その性欲からなる精気を吸いとる種族だ
「最強の夢魔……莉璢……まさか……リリス?」
と明久は、その名前に行き当たった
それは、基樹が言った名前だった
「あれ? 私の名前、知ってるんだぁ……じゃあ、手加減の必要は無いよね!」
莉璢はそう言うと、魔力弾を放った
だが、その一撃は
「はあっ!」
雪菜が振るった雪霞狼によって、防がれた
それを見た莉璢は
「なるほど……それが、七式降魔機鎗なんだ……」
と目を細めた
すると、外を見て
「霧葉も来たみたいだし……バトンタッチね」
と言って、背中から悪魔みたいな翼を出して飛んだ
そして、魔力弾で窓を破砕
外に出た
「先輩!」
「追うよ!」
明久はそう言うと、外に出た
外に出ると、莉璢の他に一人の少女が居た
黒い制服を着た一人の少女
「彼女が霧葉……?」
「恐らく……」
明久の問い掛けに、雪菜は頷いた
すると莉璢は、霧葉の隣に着地して
「やっほ、霧葉♪ 迎えに来てくれて、ありがとう♪」
と朗らかに、声を掛けた
すると、霧葉は
「莉璢……もう、満足したかしら?」
と莉璢に問い掛けた
その問い掛けに、莉璢は
「うん♪」
と朗らかに頷いた
それを聞いた霧葉は
「それじゃあ、行くわよ」
と言って、車のドアを開けた
それを見た明久は
「行かせると思うか」
と言って、縮地を発動させた
縮地を発動させた明久は、一瞬で霧葉に肉薄
鞘入りの刀を、振り下ろした
その直後、車の中から伸びた手が明久の腕を掴んだ
「な!? 煌坂さん!?」
その人物は、行方不明になっていた沙矢華だった
しかしよく見れば、沙矢華のめに意思の光が感じられない
「操られて……がっ!?」
沙矢華が操られていることに気付いたが、明久は沙矢華から一撃を受けて大きく吹き飛んだ
「先輩!?」
そんな明久に、雪菜が駆け寄って助け起こした
そして、車の中から出てきた沙矢華を見て
「沙矢華さん……」
と辛そうな声を漏らした
すると明久が
「精神操作で、操られてるんだ……」
と言って、立ち上がった
その間に、莉璢と霧葉は車に乗り込んだ
それを見た明久は
「雪菜ちゃん……二人を追って……煌坂さんは、僕が引き受けるから」
と提案した
「
明久のその言葉を聞いた雪菜は、しばらく悩むと
「分かりました……お願いします」
と言って、小声で呪文を唱えた
どうやら、
そして、走り出した車を見ながら
「沙矢華さん、本気を出した私でも、五回に一回勝てるかどうかです!」
と言って、駆け出した
「……マジかぁ」
それを聞いた明久は、絶句しながらも雪菜を追い掛けようとした沙矢華の前に立ちはだかり
「ここから先は、通行止めだよ!!」
と言って、飛び掛かった