ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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もう一人の結瞳

「……んぁ?」

 

朝とも夜とも言えない、午前4時

明久はフと目覚めた

最初、何故起きたのか分からなかった

しかし、気付いた

 

「……なんだ、この魔力は……」

 

今居るコテージに、凄まじいまでの魔力が満ちていた

それがまるで、地震のように明久を揺らしたから起きたのだろう

明久は隠し持ってきた刀を手に、ゆっくりと部屋から出た

今のところ、異常は確認出来ない

だから明久は、廊下を歩いた

 

「異様な魔力……下手したら、僕越えてる……」

 

そう呟きながら、明久は居間に出た

時間が時間なので、誰も居ない

はずだった

 

「ん……基樹?」

 

そこには、基樹が居た

そして、明久が名前を呼ぶと体を震わせて

 

「ひーいなさーん!!」

 

某怪盗三世を彷彿させる跳躍で、明久にくっついてきた

なお、基樹が言った名前は、基樹の彼女の名前らしい

 

「ぬあっ!? 寝惚けてるな!?」

 

明久は基樹が寝惚けてると判断し、刀の鞘で基樹の頭を思いきり強打した

その一撃が効いたらしく、基樹は床にうつ伏せに倒れた

それを見た明久は

 

「基樹……? 大丈夫?」

 

と声をかけた

すると、基樹が

 

「ヤラれたぜ……まさか……リリスが……あの子なんて……」

 

と呟いて、意識を失った

 

「リリス……?」

 

そう呟いた直後、明久は知ってる気配を感じて振り向いた

そこには、何故か雪霞狼を展開した雪菜が居た

 

「雪菜ちゃん、リリスって知ってる?」

 

と明久が問い掛けると、雪菜は

 

「また、新しい女の子ですか……?」

 

と呟くように、明久に問い掛けてきた

それを聞いた明久は

 

「……なぁんか、雲行きが怪しくなってきたぞぅ?」

 

と首を傾げた

その直後

 

「先輩は知らないんです……私が、どんな気持ちで過ごしているか……!」

 

と明久に、雪霞狼を突き付けた

 

「ゆ、雪菜ちゃーん……?」

 

明久は両手を上げながら、雪菜を呼んだ

すると、雪菜が

 

「先輩には一度、私の気持ちを分かっていただきますっ!!」

 

と言い、雪霞狼が光った

どうやは、神格振動波が起動したようだ

 

「お、落ち着いてぇ!?」

 

と明久が声を上げた

その時

 

「明久……」

 

と浅葱の声が聞こえた

明久が居間の入り口に視線を向けると、そこには浅葱が居た

 

「明久……私……」

 

と浅葱が、一歩踏み出した

その時

 

「申し訳ありません、藍羽先輩……」

 

と雪菜が、雪霞狼を軽く服に当てた

その瞬間、浅葱の体から力が抜けて、倒れた

 

「ゆ、雪菜ちゃーん?」

 

「どうやら、精神操作の影響のようです」

 

明久が恐る恐ると呼び掛けると、雪菜はそう言った

それを聞いて、明久は

 

「せ、精神操作?」

 

と首を傾げた

雪菜は、それに頷き

 

「ですから、先程の事は忘れてください! いいですね!?」

 

と顔を赤らめながら、雪霞狼を突き付けた

 

「ア、ハイ」

 

それに対して明久は、両手を上げながら頷くしかなかった

そこに

 

「明久君……」

 

と新たな声

すわ、何事か!? と明久は、声のした方向を見た

その先には、凪沙が居て

 

「明久君……私……私……」

 

と繰り返し、呟いていた

それを見た明久は、凪沙を指差して

 

「雪菜ちゃん」

 

と雪菜の名前を呼んだ

それに応えるように、雪菜は駆け出して

 

「ごめんね……」

 

と呟くと、凪沙の眼前で指を鳴らした

その直後、倒れかけた凪沙を雪菜が支えた

そこに、明久が近寄り

 

「どう?」

 

と問い掛けた

それに対して、雪菜は

 

「術で眠らせただけです」

 

と返答した

その時だった

 

「あーあ……せっかく少しだけ、素直にしてあげたのに」

 

と声が聞こえて、二人は声のした上を見た

二階の柵から見下ろす形で、一人の少女が見下ろしていた

明久と浅葱が保護し連れてきた少女、結瞳が

だが、その雰囲気はまるっきり違う

妖艷な雰囲気を醸し出していた

そして何より、その身から漏れ出す強い魔力

 

「君は……誰だ……?」

 

明久がそう問い掛けると、結瞳はニヤリと笑い

 

「私は……莉瑠……もう一人の結瞳……」

 

と告げた


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