少女の名前は、
少女の名前を聞くと、浅葱はスマホを取り出して調べ始めた
それを見つつ、明久は
「えっと……なんで、僕の後を追い掛けてきたの？」
と結瞳に問い掛けた
すると、結瞳は写真を一枚取り出して
「沙矢華さんが、言った時間までに来なかったら、この写真の人……つまり、貴方を頼れと」
と明久に見せた
確かにその写真には、明久が写っている
しかも裏には、明久のプロフィールがビッチリと書かれてある
それを見た明久は
（なんで僕が写ってる写真を持ってて、裏にプロフィールが書かれてあるのか……凄い気になる）
と思った
しかし、それよりも
「煌坂さんは、どうしたの？」
と明久は問い掛けた
何だかんだで面倒見のいい沙矢華が、結瞳を放置するのはおかしいと思ったのだ
すると結瞳は、俯いて
「それが……クスキエリゼの施設から私を助けてくれたんですが……途中で、追手が来て……その足止めをすると言って、そのまま……」
と言いながら、声を震わせ始めた
その声音を聞いて、明久は慌てながら
「あぁ！ 泣かないで！？ 焼きそば、食べる！？」
と近くの机に置いておいた、賄い代わりの焼きそばのパックと飲み物が入ったカップを差し出した
今三人が居るのは、あの売店の休憩フロアである
すると、浅葱が
「あんた、何泣かせてるの……」
と呆れていた
すると、明久は
「不可抗力というか、なんというか……地雷を踏みました」
と土下座を敢行した
そんな明久の首根っこを掴んで、浅葱は引きずってから
「絃神島の戸籍を調べたけど……あの子の名前は無かったわ……親族の戸籍も」
と耳打ちした
それを聞いた明久は
「ということは、結瞳ちゃんは、外部から来たってことか……」
とゆっくりと焼きそばを食べている結瞳を見た
そして明久は
「にしても、クスキエリゼ……確か、ブルエリの出資会社だったよね？」
と浅葱に問い掛けた
すると、浅葱は
「そうね。一応、水棲魔獣を含めた水族館も出してるわね……会社のキャッチコピーも、魔獣の保護だし」
と言った
だが、すぐに渋面を浮かべて
「だけど、それは表向きね……裏では、戦闘力が高い魔獣を密売したり、環境保護と称してのテロ活動なんかに武器を売ったりしてるわ」
とスマホを見せた
そこには、武器を掲げている男達が写っていた
それを見た明久は
「魔獣保護をしてる会社が、テロ活動ねぇ……」
と呟いた
すると浅葱は
「こういう輩は、手段と目的が入れ替わってることに気付かないものよ……」
と溜め息混じりに言った
その時、明久は凄まじい魔力を感じた
「つっ……今のは……なんだ？」
感じた魔力の量からは、第四真祖たる自分に匹敵すると感じた
だが同時に、違和感も感じた
それは、余りにも遠い所からのように感じもしたからだ
そうなれば、実際の魔力量は明久を越えることになる
しかし明久は、それが何なのかは分からなかった
実は同時刻、雪菜と凪沙が居た水族館でも、雪菜もその魔力を感じていた
しかも、その魔力に恐怖したらしく、水棲魔獣達が恐慌状態になり、暴れだしたのだ
どうにかしなければ、水族館で大変なことが起きる
雪菜がそう思った直後、凪沙からとてつもない魔力が放たれて、魔獣達は静まった
そして雪菜は、そこである人物に出会った
年齢的には、明久と同い年位の長い黒髪が特徴の美少女だった
名前は、
この少女が後に、今回の事件に深く関わっているのだが、この時の雪菜には分かる筈もない
そして時は過ぎ、明久と浅葱は一日目のバイトが終わったので帰ることにした
なお結瞳だが、よほど疲れていたのか眠っており、明久が背負っている
ふとその時、浅葱が
「明久、財布持ってきてる？」
と明久に問い掛けた
すると明久は
「あ、うん……ここに、あるけど」
と水着のポケットから、財布を取り出した
その直後、その財布を浅葱は奪い取り
「ちょっとばかり、結瞳ちゃん用に服を買わないとね。あのブランド、絃神島には出てないのよ。アルディギアの王室御用達なんだって」
と言って、明らかに高そうな店に向かって、歩きだした
それを見た明久は
「へいへい、待っておくんなまし！ そんなことされたら、僕の財布が死ぬ！！ 少し待って！ ラ・フォリアに連絡するから！！」
と慌てて、浅葱を追い掛けたのだった