ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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復活の時

「ふ……たかが金属のスライムごときに、手酷くヤられたな……」

 

と言って現れたのは、普段とは様変わりした雰囲気の凪沙だった

 

「な、凪沙……ちゃん?」

 

余りにも様変わりしている凪沙に、雪菜は困惑していた

だが、凪沙は無視して彫像と化した明久に歩み寄り

 

「少し、手助けしてやろう」

 

と言って、明久と口づけした

その直後、明久の体から魔力の柱が立ち上ぼり

 

「ぐっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

元の姿に戻ったと思えば、明久が苦悶の声を上げた

 

「せ、先輩!?」

 

その状況に、雪菜は困惑した

しかも気付けば、凪沙の姿が無くなっている

 

「い、一体、何が!?」

 

と言った直後、雪菜は分かった

 

「まさか、暴走!?」

 

それは、今まで何回か見た現象だった

今明久が掌握している眷獣の数は、4体

未だに、過半数以上が明久の掌握外なのだ

手段は不明だが、凪沙は先程の口づけでその内の一体を、強制的に目覚めさせたのである

それにより、掌握していない何れかの眷獣が暴走を始めたのだ

これを放置すれば、間違いなく船は沈んでしまう

そう確信した雪菜は

 

「先輩! 目を覚ましてください、先輩!!」

 

と声を掛けながら、明久に歩み寄り始めた

勿論、それで明久が目覚めるなら苦労はしない

だから雪菜は、手に持っていたナイフで首筋を薄く切った

その傷口から、少しずつ血が流れる

その状態で、雪菜は明久に抱きつき

 

「先輩!!」

 

と声を掛けた

すると明久は、そんな雪菜を抱き締めて、雪菜の首筋に牙を突き立てた

その直後、雪菜の口から艶っぽい声が漏れた

それから、数十秒後

 

「ん……あー……」

 

と明久が、声を漏らした

そして、ゆっくりと体を起こした

そこに

 

「起きたか、第四真祖よ」

 

とニーナが声を掛けた

すると、明久は

 

「えっと……あの砲撃を防いだ時に、天塚が腕を伸ばしてきて……」

 

と呟いた

それを聞いたニーナは、頷き

 

「そこまで覚えているなら、問題あるまい。お主は金属にされたんだ。それから復活する切っ掛けを、剣巫が与えたのだ」

 

と簡潔に述べた

それを聞いた明久は

 

「あー……また、雪菜ちゃんに迷惑掛けたか……」

 

と言って、周囲を見回した

 

「……って、何事?」

 

そして明久は、周りを見て驚いた

何故ならば、船諸とも周囲の海面が凍っていたからだ

それは本来、絃神島では起きない現象だった

すると、ニーナが

 

「これはな、お主の眷獣が引き起こしたのよ。暴走状態でこれか……凄まじいな」

 

と言った

それを聞いた明久が、呆然としていると

 

「先輩……目覚めましたか……」

 

と雪菜が、気だるげに起きた

そんな雪菜を、明久は抱き支えて

 

「ありがとう、雪菜ちゃん。助けてもらったみたいだね」

 

と言った

それを聞いた雪菜は、首を振って

 

「私は、先輩の……監視役ですから」

 

と言った

そこに

 

「凄かった、でした……」

 

と聞き覚えのある声が聞こえた

その声を聞いた明久と雪菜は、揃って声が聞こえた方向に顔を向けた

その先、階段付近には夏音の姿があった

しかも、顔を朱に染めている

 

「夏、夏音ちゃん……」

 

まさか人に見られていたとは思わず、雪菜は狼狽していた

すると、夏音は

 

「お二人共、凄く情熱的でした……」

 

と言いながら、真っ赤な頬に両手を添えた

その状況に、雪菜は

 

「ま、待って、夏音ちゃん! あれはなんて言うか、緊急事態だったから!?」

 

と釈明しようとしていた

だか夏音は聞いておらず、両手で顔を覆っている

その間に明久は、近くに落としておいたギターケースを拾って

 

「夏音ちゃん、危ないから、何処かに隠れてて」

 

と告げた

それを聞いた夏音は、両手を僅かに降ろして

 

「お兄さん?」

 

と明久を見た

すると、明久は

 

「ちょっと派手な、ケンカになるから」

 

と言った

それを聞いた夏音は

 

「わかりました……お兄さん、頑張ってくださいでした」

 

と言って、階段を降りていった

そして、最後の幕が上がる


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