ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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危機

「先輩……」

 

霧の中から現れた明久を見て、雪菜は安堵の表情を浮かべた

しかし、直ぐに明久をキッと睨んで

 

「巡航ミサイルで突っ込んでくるなんて、どういう神経してるんですか!?」

 

と明久に抗議を始めた

明久は、抗議を始めた雪菜に叩かれながら

 

「一応あれ、新型の飛行機らしいよ!? 中には操縦レバーあったしね! 自動操縦だったけど!!」

 

と説明を試みた

しかし雪菜は

 

「そんな簡単に分かるような、嘘を言わないでください!!」

 

と言いながら、明久を叩き続けた

それに対して明久は

 

「詳しくは、ラ・フォリアに聞いてください! というか、雪菜ちゃん! そのナイフ、対魔族術式が付与されてるでしょ!? 痛い! 結構、痛いからぁ!!」

 

と雪菜を止めようとしていた

なお、明久とニーナが乗ってきた巡航ミサイル

もとい、新型飛行機の名前はフロッティ

アルディギア王国が試作中だったという、飛行機らしい

らしいというのは、余りにも信じがたい代物だったからだ

確かに乗れたが、それは余りにも居住性が悪く、人二人がギリギリで入れるスペース

その中に、申し訳程度にクッションと操縦レバー、モニターが有るだけだった

しかも、速度も速すぎた

普通の人間だったら、間違いなく失神していただろう

そんな速度で、明久とニーナの二人は船に向かった

それしか方法が無かったから仕方なかったが、文句は言いたかった

そうして船に迫った所で、明久はミサイル諸とも霧化して、直ぐに自分達のみ実体化

船に着地したのである

そしてフロッティだが、燃料切れで海に没した

その間に、天塚は雷撃のダメージから回復

立ち上がろうとしていた

そこに、ニーナが歩み寄り

 

「もうやめよ、天塚……お主にも、もう分かっているはずだ」

 

と優しく言った

 

「ニーナ……アデラード……」

 

嘗ての師匠の登場に、天塚の瞳が揺れた

それを見たニーナは

 

「お主は、賢者(ワイズマン)に騙されているのだ……偽りの記憶、憎しみ……それらを植え付けて、お主を自分の手駒にしていたのだ……」

 

と語り掛けた

それを聞いた天塚は、足を震わせながら立ち上がり

 

「あんたまで、そんなことを言うのか……師匠!」

 

とニーナを睨んだ

それを見た明久は、落ち着かせた雪菜に

 

「どういうこと?」

 

と問い掛けた

すると雪菜は

 

「彼は、賢者に生み出されたホムンクルスなんです……しかも、自分が人間だったが、賢者によりその半身を奪われたという偽りの記憶を植え付けられていた……そうすることで、賢者は彼を呈のいい手駒にしていたんです」

 

と説明した

それを聞いた明久は

 

「つまり、その賢者という外道を倒せばいい訳か……」

 

と納得した

だが、ふと

 

「……その外道は、どこ……?」

 

と明久は首を傾げた

その直後、膨大な魔力が発せられた

その発信源は、海中から

 

「海中!?」

 

「しまった……! 海水か!?」

 

明久は驚き、ニーナは賢者の真の狙いに気付いた

賢者の狙いは、海水中にナノミクロンサイズで存在する希少金属(レアメタル)だった

海水中には、人間の目に見えないサイズで膨大な量の希少金属が溶け込んでいるのだ

その量は膨大だが、今の人間の技術では回収は不可能

しかし、錬金術では可能だ

それを使い、賢者の血液を精製していたのだ

明久達が視線を向けた直後、海中からそれが現れた

金色に輝く、高さ10mに迫る巨人だった

 

「こいつが……賢者(ワイズマン)!?」

 

と明久は驚き、ニーナが

 

「完全復活を果たしたか……賢者!!」

 

と声を上げた

すると

 

呵呵呵(カカカ)! 平伏せよ、不完全なる者達よ! 今ここに、我は甦った!!』

 

と声が聞こえた

どうやら、それが賢者の声らしい

 

『不滅なる我の復活祝いに、号砲を放とう!!』

 

賢者がそう言った直後、賢者の口らしい部位に膨大な魔力と光が集まっていく

 

「不味い!!」

 

それを見た明久は、左手を掲げた

その直後、閃光が放たれた

その衝撃に、雪菜は船の壁に叩きつけられた

 

「かはっ……つぅ……!」

 

雪菜は痛みに身を捩るが、それが予想より遥かに低い痛みだと気付いていた

 

「これは……賢者の血液……まさか、ニーナさん?」

 

雪菜の体を、赤いスライム

賢者の血液が覆っていたのだ

それが、衝撃から雪菜を守っていた

だが、それだけではない

今雪菜の視界は、一面霧に包まれていた

その霧から、雪菜は知っている魔力を感じていた

 

「まさか……先輩が、船毎霧化させて……私達を?」

 

そう言っている間に、霧が少しずつ晴れていく

そして雪菜が見たのは、まるで彫像のように金属化した明久だった

 

「せ、先輩!?」

 

それを見た雪菜が驚くと、ニーナが姿を見せて

 

「賢者が砲撃を放つ瞬間に、第四真祖は船やワシらを優先して霧化させたのだ……自分なら、助かると思ったのだろう……」

 

と語りだした

 

「だが、その隙を突いて、天塚が金属化させたのだ……ワシは、お主を守るので精一杯だった……すまぬ……」

 

そう言うと、ニーナは頭を下げた

そして、雪菜は気付いてしまった

今の状態からは、明久は復活出来ないと

第四真祖たる明久は、間違いなく不死身である

例え瀕死の重傷を負っても、必ず再生する

だが、金属化はその再生の例外だった

なぜならば、明久本人が傷を負わずに変わってしまったからだ

こうなってしまっては、例え第四真祖でも復活は絶望的だろう

そう理解した雪菜は、両手両膝を突いた

 

「そんな……先輩……!」

 

このまま終わってしまうのか

誰も、助けられないのか

雪菜を、そんな絶望が襲った

その時

 

「ふ……たかが金属のスライムごときに、手酷くヤられたな……」

 

と新たな声が聞こえた

ここから、逆転劇が巻き起こる


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