ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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復活

翌日の朝九時頃

明久は、甲高い悲鳴で目を覚ました

その悲鳴を聞いた明久は、悲鳴の上がった場所

自室に駆け込み

 

「何ごと!?」

 

と声を上げた

するとベッドの上で、半泣きの浅葱が

 

「明久……私、なんでこんな格好で、明久の部屋で寝てたの……?」

 

と、明久に問い掛けてきた

それを聞いた明久は

 

(あ、浅葱に戻ってるのかぁ……)

 

と気付いた

迂闊にニーナと名前で呼ばなくて、良かった

と、明久は思った

だがその間に、浅葱は

 

「シャワー浴びてる所までは、覚えてるのよ……その後が覚えてない……明久、もしかして私……」

 

と潤んだ目を、明久に向けた

どうやら、所謂桃色な妄想をしているようだ

 

「あー……昨日浅葱ね、シャワーを浴びてる途中で気絶したんだよ。雪菜ちゃん曰く、精神的疲労が重なったのが原因らしいよ」

 

明久はとりあえず、ニーナと予め決めていたでっち上げの理由を言った

それを聞いた浅葱は、まだ混乱しているらしく

 

「つまり……まだ、シてない……?」

 

と涙目で問い掛けてきた

それを聞いた明久は、良心の痛みを堪えながら

 

「浅葱の予想していることは、起きてないよ」

 

と言った

それを聞いた浅葱が、安堵した

その直後だった

 

「つっ!? 今のは!?」

 

明久は、膨大な魔力による揺れを感じた

それの発信源は、港湾地区

 

「今のは……賢者の血液が、目覚めたか」

 

「ニーナ!? 起きたの!?」

 

明久が振り向くと、先ほどまで涙目だった浅葱が、真剣な表情を浮かべていた

 

「この娘、意外と早起きなのだな。まさか、ワシより早く起きるとはな」

 

「それより、賢者の血液が目覚めたって、本当なの!?」

 

と明久が問い掛けると、ニーナは

 

「ああ……今の魔力波は、ワシが知る奴のモノだ」

 

と頷いた

そして立ち上がると、着ていた明久のシャツや短パンが、一瞬にして浅葱の制服に変わった

どうやら、錬金術で変えたらしい

それを見た明久は

 

「……僕の服が……」

 

と落ち込んだ

それを聞いたニーナは

 

「ああ、すまんな。少し動き辛かったからな……一応戻せるが、その場合は少し縮むぞ?」

 

と言った

それを聞いた明久は、深々と溜め息を吐いて

 

「予備ならあるから、大丈夫……とりあえず、現場に急ごう!」

 

と言った

そして数分後、着替えた明久はニーナを抱えて港湾地区目指して、吸血鬼の身体能力で跳んだ

凪沙だが、すでに家を出ている

その理由だが、本土への就学旅行のために検疫局のある港に向かったのだ

絃神島では飛行機と船で、本土と行き交うことが出来る

入るのは比較的簡単だが、出るのは非常に面倒なのだ

血液検査から、未登録魔族でないかの確認

変な病気に掛かってないかや、前科の有無

そういった検査に、かなりの時間を費やすのだ

だから、最低でも二時間前に空港か港で検査をしないといけない

そして出るのを認められると、体の中にナノマシンサイズの発信器を入れられるのだ

それでようやく、船か飛行機に乗るのが許されるのだ

だから凪沙は、かなり早くに港に行ったのだ

 

「これは……」

 

到着した明久は、港湾地区の惨憺たる有り様に絶句していた

積み上げられていただろうコンテナは、軒並み破壊されており、一面が火の海だった

 

「これは……魔力によって撃ち出した荷電粒子ビームだな……」

 

「ビーム!? そんなのも撃てるの!?」

 

ニーナの言葉を聞いて、明久は驚愕した

するとニーナは、足下に落ちていた骨を拾った

 

「その骨は……」

 

「……10年前の犠牲者だ……修道院には、夏音を含めて、多くの霊媒者が居た……その者達の血肉を糧としたのだろう……」

 

明久の問い掛けに、ニーナは辛そうにそう言った

出会って短いが、明久はニーナが優しい性格だと思っていた

浅葱を治したこともだが、浅葱への説明用の言葉を考えるのを手伝った

恐らくだが、修道院の子供達が死んだことにも心を痛めていることが予想出来た

ふとその時、明久はあるモノを見つけた

それは、赤いスライムのような物体だった

しかもそれは、周囲に飛び散っていた

 

「ニーナ……これ……」

 

と明久が問い掛けると、ニーナは

 

「ふむ……奴の支配下から外れた、賢者の血液だな……」

 

と言った

どうやら、それが賢者の血液らしい

それを見たニーナは、少し間を置くと

 

「ワシの全身を作るには、ちと足りぬが……」

 

と言って、胸元を開けた

 

「に、ニーナ?」

 

明久が問い掛けるが、ニーナは無視

胸元に有ったハードコアを、取り外した

そして、数十秒後

 

「ふむ……こんなものか」

 

褐色肌のもう一人の浅葱が、明久の目の前に居た

 

「なんで、浅葱の姿? しかも、胸が大きくない?」

 

「む? ワシの全身を作るには、賢者の血液の量が足らなかったからな。見た目は、娘の姿を参考にさせてもらった。胸は、主へのサービスも含めた」

 

明久の問い掛けに、ニーナは意地の悪い笑みを浮かべながらそう言った

それを聞いた明久は、深々と溜め息を吐いた

その直後

 

「金属スライム風情が、やってくれる……」

 

と声が聞こえた

それを聞いた明久は、声のした方に視線を向けた

そこには、苦々しい表情の那月が居た

 

「那月ちゃん……」

 

「また動いたか、このバカは……む」

 

その時になって那月は、倒れてる浅葱とニーナを見た

そして、数瞬して

 

「ニーナ・アデラードか」

 

と気付いた

すると、ニーナも

 

「この島を守護する、真性の魔女か……」

 

と那月の正体を見破った

 

「那月ちゃん、賢者の血液が……」

 

「分かっている。午前10時30分発、本土行きの船を追い掛けたようだな」

 

明久を遮るように、那月はそう言った

それを聞いて、明久は

 

「そうか! 夏音ちゃんや、凪沙。雪菜ちゃんが狙いか!!」

 

と敵の狙いに気付いた

それを聞いた那月は、頷いて

 

「追い掛けたいが、最早私の魔術でも届かない……だから、出番だぞ。腹黒皇女」

 

と言った

その瞬間、明久の右側に音も無く一人の女性が姿を見せた

 

「あ、ユスティナさん」

 

その人物は、ラ・フォリアが夏音の護衛として派遣した、ユスティナ・カタヤだ

見た目は非常に出来る女性なのだが、その正体は要撃騎士だ

その戦闘力は、獣人化した獣人種にも勝てる程だ

しかし残念なことに、忍者フリークなのだ

そのために、武装も剣ではなく小太刀やクナイなのだ

そのユスティナは、懐から端末を取りだし

 

「殿下、どうぞ」

 

と明久の前に掲げた

その画面には、ラ・フォリアが映っていて

 

『間に合ったようですね、明久♪』

 

とラ・フォリアが言った

それを聞いた明久は、嫌な予感に襲われながらも、それに頼るしかない。とも察していた

こうして、バカは渦中に突っ込んでいく


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