ニーナ・アデラード
約三百年前の大錬金術師
そのニーナは、ハードコアという金属製の玉に自身の意識と魂を移し、更に肉体を
そんな人物が今、明久の前に居た
しかも、明久が殺した天塚はそんなニーナの弟子の一人だと言う
(どうしよう……そいつを殺したこと、一応謝るべきかな……)
天塚のことが許せなかったことは事実だが、天塚はニーナの弟子の一人だった
だったら、形式だけでも謝るべきか明久は悩んだ
すると、ニーナが
「どうした、第四真祖よ」
と問い掛けてきたどうやら、明久が悩んでいることを察したようだ
すると、明久は
「えっと……その天塚のことなんだけ……」
と言いづらそうにしながら、殺したことを謝罪しようとした
すると、ニーナは
「状況は知っている……それにな、あれは天塚本人ではない」
と告げた
それを聞いた明久は
「本人じゃない!?」
と驚いた
すると、ニーナは
「うむ。主が殺したのは、ダミーコアを使った分身の一つよ」
と説明した
ダミーコアというのは、天塚が造り出したハードコアの劣化版とも言うべき代物
ハードコアと違うのは、ダミーコアは一つには人間一人の魂と意識を入れられない
その代わりに、複数個用意すれば、ダミーコアと賢者の血液を使った分身体を複数造り出せるようだ
それを聞いた明久は
「つまり、僕が殺したのは……限り無く本人に近い偽者……ってことか」
と呟いた
それを聞いたニーナは、胸元に手を当てて
「この娘には、すまないことをしてしまった……ワシの支配下を離れた賢者の血液で、危うく死ぬところだった」
と申し訳なさそうに言った
そもそも、浅葱が生きている理由はなんなのか
それは、浅葱が倒れた時に伸ばした手が、転がっていたハードコアに触れて、ニーナは浅葱を生かすために一時的に浅葱の体にハードコアを融合させ、近くに残っていた極僅かか賢者の血液を使い、浅葱の体を治したらしい
それを聞いた明久は
「まあ、ニーナのお陰で浅葱は助かった訳だし……ありがとう、ニーナ」
と頭を下げた
するとニーナは、一瞬驚いた表情をしてから
「第四真祖よ……主、甘いか優しいと言われたことはないか?」
と明久に問い掛けた
それを聞いた明久は、苦笑いを浮かべて
「んー……バカってなら、結構言われたね」
と言った
それを聞いたニーナは、くくっと短く笑い
「なるほどな……だが、主のは善きバカだ」
と言った
この後、買い物に出ていた凪沙が帰宅したので、夕食にした
なおニーナの服装だが、今は明久の予備のジャージを着ている
最初は裸だったが、明久が鼻血を流すと居間のテーブルの上にあった花を使って、シーツを錬成
だが、余りにも刺激的な姿だったので、ジャージを貸したのだ
そして夕食後、明久はニーナとまだ話をしたかったから、明久の自室で待っているように頼んで、凪沙と一緒に片付けをした
そして部屋に戻ると、ニーナは明久のベットで寝ていた
それを見た明久は、頭を掻いてから
「まあ、明日でいいか……」
と言って、着替えと寝間着を持って自室から出た
そして入浴すると、居間のソファーで寝たのだった
その頃、島の港湾区画では
「どうだ、康太。見つかったか?」
「……この近辺に居ることは分かっているが……」
基樹と康太が、何かを探していた
そして、康太の報告を聞いた基樹は
「……うしっ! だったら、この辺に仕掛けるか。人的被害を出さないって意味なら、この辺が最適だ」
と結論着けた
そして、賢者の血液を巡る戦いは加速する