ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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出張所

「へいへい、雪菜ちゃん……ここは流石に……」

 

「先輩、何か勘違いしてませんか?」

 

放課後、明久と雪菜の二人はある場所に居た

そこは、所謂そういうことをするための地区だった

その証拠に、周囲にはピンク色の店や宿泊所がいくつも建っている

なぜ、二人がそんな場所に居るのか

それは、学校から出た後に雪菜が

 

『先輩、行きたい場所があるんですが、いいですか?』

 

と言ってきたからだ

最初買い物かと思い明久は、二つ返事で了承した

しかし実際に連れて来られたのが、そこだった

 

「先輩、目を閉じててください」

 

「……」

 

雪菜に言われた通り、明久は目を閉じた

そして、内心で

 

(いいか、僕。冷静になるんだ。いくらなんでも、これは……いくら雪菜ちゃんが連れてきたからとはいえ、制服姿で入るのは……いや、そもそもまだ僕達は学生であって……)

 

と思考していた

すると

 

「もういいですよ」

 

と雪菜に言われたので、目を開いた

そして見えたのは、一軒の場違いな古物商の店だった

 

「ここは……」

 

「獅子王機関の出張所です」

 

雪菜はそう言うと、その店に入った

 

「いらっしゃいませ」

 

そう出迎えたのは、何故かメイド服姿の沙矢華だった

 

「はい? 煌坂さん!?」

 

明久が驚いていると、雪菜が

 

「先輩、これは式神です」

 

と冷静に教えた

 

「式神? それにしては、凄い似てる……というより、なんでメイド服?」

 

と明久が、不思議そうに首を傾げた

すると

 

「許可もなく、煌華燐の矢を全部使いきっちまったバカな弟子へのお仕置きさね」

 

と女性の声が聞こえた

それを聞いた二人は、弾かれるように声が聞こえた方向を見た

タンスの上に居たのは、一匹の黒猫……に見える式神だった

明久でも式神と分かった理由だが、その黒猫が猫らしからぬ気配を放っていたからだ

その黒猫の前で、雪菜が片膝を突いて

 

「お久しぶりです、師家様。剣巫、姫柊雪菜。ここに参りました」

 

と言った

すると、黒猫は

 

「ん、久しぶりだね。杜に居た時以来かい?」

 

と返した

それを聞いた雪菜は

 

「はい。師家様も壮健そうで、何よりです」

 

と言った

それを聞いた黒猫は

 

「それで、鎗は?」

 

と雪菜に問い掛けた

その問い掛けに、雪菜は

 

「ここに」

 

と背負っていたケースごと掲げた

そのケースを、沙矢華式神が受け取り、中から雪霞狼を取り出した

そして、鎗を一瞥し

 

「ふむ……鎗には受け入れられてるようだね……ただ、眼に頼り過ぎだよ。精進しな」

 

と言った

それを聞いた雪菜は、無言で頷いた

そして沙矢華式神が、雪霞狼をケースに収納

それを奥に仕舞うと

 

「それでは……剣巫、姫柊雪菜……この時を以て、一時第四真祖監視の任を解く……たまには、ただの学生らしく過ごしな」

 

と言った

それを聞いた雪菜は、少しすると

 

「やはり、先輩を一人にするというのは心配です! 今回、私は残ります!」

 

と力説した

それを聞いた明久は

 

「雪菜ちゃん。僕をなんだと思ってるのさ」

 

と突っ込んだ

それに同意するように、黒猫は尻尾で畳を軽く叩き

 

「大丈夫さ。そこは、対策を考えている」

 

と言って、明久を見た

そして、微笑みながら

 

「あんたが、今の第四真祖かい……」

 

と言った

それを聞いた明久が、頷くと

 

「あの眠り姫(アヴローラ)を助けてくれて、ありがとうね」

 

と言った

その直後、明久の脳裏に何かが走った

それにより、明久は激しい頭痛に襲われながら

 

「あんた……先代を……知ってるのか!?」

 

と問い掛けた

すると黒猫は

 

「知ってるさ……あの眠り姫のことは、よく知ってるさ……」

 

と懐かしみながら、肯定した

それを聞いた明久は、更に問い掛けようとした

だがその時、ポケットの中で携帯が震えた

見てみれば、電話だった

相手は、浅葱

 

「浅葱? どうしたの?」

 

と明久が問い掛けると、浅葱は走っているらしく少し荒く呼吸しながら

 

『明久。あんた、私の誕生日プレゼントに買ったイヤリング、覚えてる?』

 

と問い掛けてきた

それを聞いた明久は

 

「あぁ、覚えてるよ? 高かったのを覚えてる。それがどうしたの?」

 

と言った

すると浅葱は

 

『それがさ、あの修道院付近であんたと縺れ合った時に落としちゃったみたいなのよ』

 

と言ってきた

それを聞いた明久は

 

「待って!? まさか、アデラード修道院跡地に向かってるの!?」

 

と驚きながらも、問い掛けた

すると浅葱は

 

『そうよ……今、探してるところ』

 

と言った

それを聞いた明久は

 

「何やってるの!! 今すぐ戻って!? 今度一緒に探すから!!」

 

と怒りながら言った

すると浅葱は、怪訝そうに

 

『何怒ってるのよ……』

 

と言ってきた

だが明久は

 

「今そこら辺は、凄い危ないんだ! 今すぐ戻って!!」

 

と言った

その時だった

 

『何、あれ……警備隊や、研究員が……彫像になってる?』

 

と浅葱の、呆然とした言葉が聞こえた

それを聞いた明久は、浅葱に逃げるように伝えようとした

その時、何かが崩落するような音が聞こえた

 

「浅葱! 今の音は何!? 何があったの!?」

 

と問い掛けたが、返事はこない

 

「浅葱! 聞こえてる!? 浅葱ぃ!!」

 

明久が二度三度と呼び掛けると、遠くから

 

『ごめん、明久……あたし……ミスったみたい……』

 

と弱々しい浅葱の声が聞こえた

 

「待ってて、浅葱!! 今から行くから!!」

 

明久はそう言うと、出張所から飛び出した

自身の嫌な予感を否定するために、全速で走り出したのだった


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