ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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アデラード修道院

「あれ、那月ちゃんは居ない……?」

 

「はい……南宮教官なら、先程警察局に呼ばれて向かいました」

 

那月の部屋に入った明久の言葉に答えたのは、メイド服のアスタルテだった

明久は那月に、錬金術師のことを聞こうとしたのだ

しかし、目的の那月は居なかった

ふとその時、明久はアスタルテがホムンクルスだということを思い出して

 

「ねえ、アスタルテちゃん。錬金術師の目的って知ってる?」

 

と問い掛けた

するとアスタルテは

 

「広義的には、不老不死を目指している。と言えます」

 

と答えた

 

「不老不死……」

 

明久の呟きを聞いて、アスタルテは頷き

 

「その内の一人は、貴方です」

 

と明久を見ながら、そう言った

確かに、明久も不老不死の一人である

負の生命体の極致、第四真祖

それが、明久である

 

「そして、錬金術師が目指す不老不死。その一つの極致が、賢者の血液(ワイズマンズ・ブラッド)です」

 

「賢者の血液……?」

 

賢者の血液が何か分からず、明久は首を傾げた

するとアスタルテは

 

「はい……特殊な流体金属です。それにより不老不死となった代表的錬金術師が、ニーナ・アデラードです」

 

と説明した

 

「ニーナ・アデラード……ん? アデラードって、あの教会の名前……?」

 

明久の呟きに、アスタルテは頷き

 

「アデラード修道院は、そのニーナ・アデラードの偉業を称えて名付けられた教会です。なおニーナ・アデラードは、生きていれば270歳を越えます」

 

と言った

その後明久は、嫌な予感から更に調べることにした

しかし、情報通たる康太と基樹が早退

だから明久は、食堂に居る浅葱の所に行った

そこでは最早、お馴染みの光景が広がっていた

浅葱の前には、大量の皿が積まれている

それを見て固まっている、中等部生徒

そんな浅葱に近寄り

 

「浅葱、今いい?」

 

「ん? なによ?」

 

明久が呼び掛けると、浅葱は飲み込んでから明久を見た

それを見た明久は

 

「ちょっとさ、アデラード修道院で起きた事件のことを教えてほしいんだ」

 

と言った

それを聞いた浅葱は、眉をひそめて

 

「アデラード修道院って、あの丘のでしょ? 私が小学校の時の事件ね……なにが起きたんだったかしら……」

 

浅葱は思い出すようにしながら、スマホを操作した

しかし、片眉を上げて

 

「あれ、記録に残ってない……」

 

と呟いた

 

「残ってない?」

 

「ええ……管理公社のアーカイブに残ってない……これ、消された感じね……」

 

明久の言葉に浅葱はそう言って、再びスマホを操作し始めた

どうやら、探しているようだ

だが

 

「ダメね……これ、完全に隠蔽されてるわ……」

 

と言った

それを聞いた明久は

 

「だったら、直接行って調べるか」

 

と行って、浅葱の所から離れた

すると浅葱は

 

「あ、こら! 待ちなさい!」

 

と浅葱は、明久を追いかけた

それから、数十分後

 

「なんで、浅葱まで来たのさ?」

 

「知りたくなるじゃない!」

 

明久と浅葱の二人は、アデラード修道院の近くまで来ていた

 

「いや、かなり嫌な予感がするから、帰ったほうがいいって! 何があったのかは、今度教えるから!」

 

「嫌よ! 自分の目で見ないと、納得出来ないじゃない!」

 

やはりハッカーとしてのプライドなのか、自分で見ないと納得出来ないらしい

そんな浅葱を帰らせようと、明久は浅葱の肩に手を置いた

その時、明久と浅葱は朝方に降った雨により、足が滑った

 

「わあっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

その見た目は、完全に明久が浅葱を押し倒した形である

その状態に、二人は固まった

そこに

 

「……こんな所で淫行とはな……いい度胸だ、お前達」

 

と不機嫌そうな声が聞こえた

それに驚き、明久と浅葱は素早く離れて、その声の主

那月を見た

 

「な……」

 

「南宮先生!?」

 

その時になって二人は、アデラード修道院が見える位置に来ていることに気づいた

 

「というか那月ちゃん、何があったのさ? なんで、警備隊がフル装備で?」

 

明久がそう問い掛けると、那月は

 

「教師をちゃん付けで呼ぶな!」

 

と言って、扇子を振った

しかし、明久に衝撃は来ない

だがその直後、明久の頭上から何かが落ちてきた

それは、蝶の形に切られた紙

 

「これは……雪菜ちゃんの式紙?」

 

それに見覚えがあった明久は、そう言って首を傾げた

すると、那月が

 

「ここからは、オフレコだ……」

 

と念押ししてきた

 

「吉井明久……叶瀬賢生を覚えているか?」

 

「まあ、覚えてるよ?」

 

那月の問い掛けに、明久はそう返した

それほど時は経ってないのだから、忘れる訳がない

それを聞いた那月は

 

「昨日の朝、襲撃されて重傷を負った。幸いにも一命はとりとめたが、今も意識不明だ」

 

と言った

それを聞いた明久は

 

「まさか、犯人はチェック柄のスーツを着た男?」

 

と言った

それを聞いた那月は、少し驚いた表情で

 

「天塚を知ってるのか?」

 

と明久に問い返した

すると明久は

 

「昨日の昼過ぎに、襲撃された」

 

と言った

それを聞いた那月は、舌打ちし

 

「ちいっ……動きが早いな……狙いは、夏音だろうな」

 

と呟いた

それに首肯し、明久は

 

「かなりしつこく狙ってるみたいだったよ」

 

と言った

それを聞いた那月は、しばらく黙り

 

「やはり、一度島外に避難させる方が正解だな」

 

と言った

それを聞いた明久は

 

「そして、帰ってくるまでに捕縛か打倒する……でしょ?」

 

と言った

それを聞いた那月は、頷きつつも

 

「だが、貴様は動くな。厄介事にしかならないからな」

 

と前置きした

その言葉に、明久は

 

「僕は平和に生きたいんです。でも、気付けば渦中に居るのは仕方ないんだと思うんです……!」

 

と言いながら、両手両膝を突いた

それを聞き流し、那月は

 

「とりあえず、しばらくの間は、ここに近寄るな。いいな?」

 

と念押しして、二人に学校に戻るように言ったのだった

 


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