ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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幕引きの一幕

阿夜が起こした、第二次闇誓書事件の翌日

 

「ったく……こっちがフェスタの準備で忙しいの、知ってるでしょ……那月ちゃん」

 

明久は、突如那月に呼び出された

明久のクラスは準備に時間が掛かり、連日遅くまで準備している

明久に電話が来たのは、まさにそんな時だった

呼び出された明久は、適当な理由を着けて教室から離れた

そして呼び出されたのは、商業地区の外れにあるビルの屋上だった

そこには、何故か幼い見た目の那月が居た

 

「何な……貴様らには、世話になったからな」

 

そこには、沙矢華の姿があった

そして何より、会いたかった人物

優麻の姿もあった

 

「優麻……」

 

「本当なら、厳しい尋問が始まる筈だったんだけどね……空隙の魔女が、今日だけはってね……」

 

明久が視線を向けると、優麻はそう言った

どうやら、那月が許可を取って外に連れ出したようだ

よく見れば、優麻の両手手首には魔法封じの手枷が付いている

もし魔法をしようとすれば、電撃が放たれる仕組みの代物だ

 

「それとだ、吉井明久」

 

「はい? おごっ!?」

 

呼ばれた明久は、顔を那月の方に向けた

その直後、黄金の腕に殴られた

那月の守護者である

 

「何度言えば、覚える? 教師をちゃん付けで呼ぶなとな……ただし、おさなちゃんは特別に許す」

 

「気に入ったのね……それ……がくっ……」

 

「せ、先輩……」

 

一応、明久が悪いので、雪菜は苦笑いを浮かべることしか出来なかった

そして数分後、明久は首をゴキゴキと鳴らしながら

 

「僕じゃなかったら、死んでるからね?」

 

と言った

すると、沙矢華が

 

「あんただから、守護者で殴ったんでしょうが……」

 

と言った

確かに、そうかもしれない

そこに、浴衣姿のアスタルテが歩みより

 

「いりますか?」

 

とビニール袋を掲げた

中を見てみると、街の出店で販売されている缶ジュースと食べ物だった

 

「あ、ありがとう」

 

とりあえず明久は、それを受け取った

断る理由も無かったからだ

ふと気付けば、屋上の一角にベンチが置かれてある

明久が座ると、その両隣に雪菜と沙矢華が座った

それを見た優麻が

 

「本当、明久は昔から変わらないな……」

 

と呟いた

その優麻は、那月の隣に座った

そこに、花火が上がり始めた

 

「おー……なるほど、いい場所だね?」

 

と明久が言うと、那月が

 

「本当なら、私の特等席なんだがな。この事件は、お前達に世話になったからな……特別だ」

 

と言った

考えてみれば、優麻と再会してから一週間と経っていない

だと言うのに、あまりにも怒涛のように起きていた

 

「やれやれ……平和は、何処に行ったのさ?」

 

ここ最近のことを思い出し、明久はそう呟いた

明久としては、平和に過ごしたいのだ

だが、事件が起きるから、走り回ることになる

損な性分なのかもしれない

せめて今は、それを忘れて花火を見ることにした

そして花火が終わると、明久は帰宅することにした

すると、優麻が

 

「空隙の魔女」

 

と那月を呼んだ

すると那月は

 

「……手短にな」

 

と言った

それを聞いた優麻は、明久に近寄り

 

「明久……」

 

と見詰めた

すると明久は、微笑みを浮かべて

 

「出てくるのを、待ってるからね。優麻」

 

と言って、優麻の頭を撫でた

その瞬間、優麻は明久に飛び付き、キスをした

 

「なっ!?」

 

「んなっ!?」

 

それを見た雪菜と沙矢華は、目を見開いた

そして優麻は、明久が驚きで固まっている間に素早く離れて

 

「またね、明久!!」

 

と言って、那月とアスタルテの二人と共に、消えた

そうして、明久はしばらく固まっていた

だがその時、背後から凄まじいプレッシャーが放たれているのを感じて、振り向いた

その先に居たのは、涙目の雪菜と顔を真っ赤にした沙矢華だったのだが、その手には、それぞれ鎗と剣があった

 

「へいへいへい!! ちょっと待っておくんなまし!? 今のは、僕からやった訳じゃないんだよ!?」

 

と明久は言うが、雪菜は

 

「先輩が隙だらけだから、今みたいに体を奪われたんじゃないんですか!?」

 

と言われた

 

「うぐっ!?」

 

そう言われたら、否定のしようがない明久

さらに

 

「あんたは……ここで死ねえぇぇぇ!!」

 

沙矢華は、剣を大上段に振り上げた

 

 

「あーもう! なんでさぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

こうして、島を巡る事件は幕を下ろした

だがこの時、ある場所で

 

「では、私はこれで……止められるなら、止めてみますか? 静寂破り(ペーパーノイズ)?」

 

「いえ、やめておきます……絃神冥雅」

 

新たな火種が、撒かれていた


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