ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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一日の始まり

ルードルフとの交戦の翌日

 

明久と雪菜は二人で学校に向かっていた

 

その理由は、今日が夏休み期間に設けられた登校日だからである

 

二人は炎天下の中、学校に向かって歩いていた

 

「被害総額、五百億円だそうですよ。先輩」

 

雪菜はそう言いながら、ビルの壁面にある巨大な画面を見ていた

 

ニュースキャスターが紙を見ながら声を出しているが、周囲が煩いので詳しくは聞こえない

 

だが、画面下部に《昨日起きた落雷により、アイランドサウスの工業地帯とライフラインに甚大な被害が発生しており、未だに復旧には至っておりません。人工島管理公社の発表によりますと、被害総額は五百億円は下らないとなっており……》

 

という文章が右から左へと流れている

 

「まあ、先輩は不老不死ですから五百年位タダ働きすれば、全額返済出来るかと……って、聞いてますか。先輩?」

 

「聞いてる聞いてます聞いてますよの三段活用……というか、僕だって好きであんなことをしたわけじゃ……!」

 

雪菜の問い掛けに明久は頷くと、近くの電信柱にキツツキみたいに頭を打ちつけ始めた

 

「分かりましたから、止めてください。周りの視線が凄いですから」

 

雪菜が宥めると、明久は頭を打ちつけるのを止めて再び歩き出した

 

「それにしても……街中で眷獣を暴走させたら、ああなるって分かってた筈ですよね? それなのに、なんで制御しなかったんですか?」

 

雪菜が苦言を言うと、明久は渋面を浮かべて

 

「確かに、あの雷は僕の眷獣だけどさ……使役してるのと使えるってのは、別でしょ?」

 

と言った

 

「どういうことですか?」

 

明久の言葉の意味が分からなかったのか、雪菜は首を傾げた

 

「つまりさ……雷を含めて、僕の中に居る眷獣達は、僕を使い手だって認めてないんだ」

 

明久の言葉を聞いて、雪菜は目を見開いた

 

「使い手とは、認めてない!?」

 

「そ……つまり、眷獣達にとって今の僕はタダのアパートみたいな感じなんだよね」

 

明久がそう言うと、雪菜は明久の前に出て

 

「どういうことですか!? なんで、先輩を使い手だって認めてないんですか!?」

 

と詰め寄った

 

明久はそんな雪菜を宥めながら、深々と溜め息を吐いて

 

「まあ、理由としては……僕が一回も血を吸ったことがないから……かな?」

 

と言った

 

すると、雪菜は怪訝そうな表情を浮かべて

 

「血を吸ったことがないんですか? 吸血鬼なのに?」

 

と首を傾げた

 

雪菜の言葉に、明久は唇を尖らせて

 

「前にも説明したと思うけど、僕は春まで普通の人間だったんだよ? それなのに、吸血鬼になったから血を吸えって言われてもね……いきなりは無理だよ……」

 

と明久は言った

 

すると雪菜は、顎に手を当てて数秒間黙考すると

 

「やはり、先輩は危険です」

 

と言った

 

「ん?」

 

雪菜の言葉に明久が首を傾げていると、雪菜は真剣な表情で

 

「今の話が本当だとしたら、先輩は、私が思っていた以上に危険な存在ですね……どうにかして、きちんと眷獣達を制御出来るようになってもらわないと……」

 

と呟いた

 

明久はそんな雪菜を見て

 

「雪菜ちゃんってさ、変わってるよね」

 

「えっ……そうですか?」

 

明久の言葉を聞いて、雪菜は目を丸くした

 

「そんなこと、先輩だけには言われたくないですけど。私のどこが変わってるんですか?」

 

「だってさ……今の僕の話を聞いたら普通は違うと思うよ? 眷獣達を制御出来ない吸血鬼なんて、危険だから近づかないようにするとか、いっそ討伐しようとか、位に考える人が居るって聞いたよ?」

 

明久が苦笑混じりにそう言うと、雪菜は胸元に手を当てて

 

「そうですか? 言われてみればそんな気もしますけど……でも、相手は先輩ですから」

 

「……ねえ、どういう意味さ?」

 

明久が問い掛けると、雪菜は何かを思い出すように

 

「いえ、別に深い意味は。ただ、そんなに悪い吸血鬼《ヒト》ではないと思うので……ただ、少しだらしなくて、たまにイヤらしいだけで」

 

と言った

 

それが冗談ではないと思い、明久は深々と溜め息を吐いた

 

そして、学園に到着すると

 

「あ、明久」

 

「お? 噂の転校生と一緒に登校か?」

 

という声が聞こえた

 

明久が視線を向けると、そこに居たのは一組の男女だった

 

片方は制服を校則ギリギリまで改造して、茶髪にピアスを付けた少女

 

名前は藍羽浅葱(あいばあさぎ)

 

明久のクラスメイトの一人であり、明久は知らないが通称で《電子の女帝(サイバーエンプレス)》と呼ばれている少女だ

 

もう一人は逆立った髪に首に掛けたヘッドホンが特徴の男子だった

 

名前は矢瀬基樹(やぜもとき)

 

陽気な友人で、明久とは何かと話が合う男子だ

 

「あ、浅葱に基樹じゃん。おはよう」

 

明久が挨拶すると、基樹は片手を上げて

 

「おーっす」

 

と軽い感じで挨拶して、浅葱は顔に掛かった髪を右手で払ってから

 

「おはよう、明久」

 

と挨拶した

 

そして浅葱は視線を雪菜に向けて

 

「明久。その子は?」

 

と問い掛けた

 

明久は一瞬雪菜を見るが、雪菜は首を振った

 

すると、明久は頷いてから

 

「ウチの隣に引っ越してきた、姫柊雪菜ちゃん」

 

と無難に紹介した

 

明久が紹介すると、雪菜は軽く頭を下げながら

 

「初めまして、先輩方。姫柊雪菜と言います。吉井先輩の家の隣に引っ越してきまして、まだ学校までの道がうろ覚えだったので、案内してもらいました」

 

雪菜がそう紹介すると、まずは基樹が右手を出して

 

「おう、よろしくな。俺は明久の親友の矢瀬基樹だ。んで、こっちは藍羽浅葱」

 

「よろしくね」

 

基樹が紹介すると、浅葱は手をヒラヒラさせながら挨拶してから欠伸をした

 

「どうしたの、浅葱。眠そうだね?」

 

明久が問い掛けると、浅葱は眠そうに目元をこすりながら

 

「そうなのよ……昨日の事故でシステムが吹っ飛んだとかで、いきなり呼ばれて復旧に今朝方まで掛かったのよ……安いモノを使うからああなるんでしょうが……」

 

浅葱が欠伸混じりに文句を言うと、明久は冷や汗をダラダラと流して

 

「そ、そっか……うん、お疲れ様。浅葱」

 

と浅葱を労った

 

雪菜はそんな明久を、目を細めて睨んでいる

 

すると、浅葱は再び欠伸をして

 

「ダメ……やっぱり眠い……」

 

と言うと、フラフラと揺れ始めた

 

「浅葱。こんな所で寝るなよ……明久、悪いんだが浅葱を教室まで運ぶぞ」

 

「了解」

 

罪悪感もあり基樹からの要請に明久は頷くと、浅葱が落としたカバンを拾ってから

 

「それじゃあね、雪菜ちゃん」

 

と雪菜に言うと、浅葱を基樹と一緒に担いで運び始めた

 

雪菜は明久達が高等部の入り口に入ったのを確認すると、自身は中等部の入り口に入った

 

こうして、また一日が始まった


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