ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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決着

「もう諦めろ……阿夜……」

 

「那月……!」

 

那月の言葉を聞いて、阿夜は那月を睨んだ

やはり、負けを認めたくないようだ

その証拠に、背後に闇を出した

それを見た那月は

 

「ああ……そういえば、そいつも解放しないとな」

 

と言って、右手を掲げた

そして

 

「蒼き乙女に誓いの剣を捧げし騎士よ……今一度、真の姿を取り戻し、汝の真の主の下に帰れ!」

 

と呪文を唱えた

すると、闇にヒビが広がり始めた

それを見た明久は

 

「優麻!」

 

と優麻の名前を呼んだ

すると優麻は、大きく息を吸い込んで

 

「青!!」

 

と自分の騎士の名前を呼んだ

その直後、闇の騎士の下から青が姿を現した

そして、阿夜の背後から優麻の背後に位置を入れ換えた

どうやら、青を取り戻したらしい

だが、今度は阿夜が辛そうにしている

そんな阿夜は、那月を睨み

 

「那月……何故分からない! この世界は、間違っている! なまじ魔力や霊力があるから、我々のような魔女や魔法使いは排斥される! それにお前だって、何人を見送ってきた!?」

 

と叫んだ

すると那月は

 

「すまんが、私は今の世界を気に入っている……それにな、見送るのも悪くはない……確かに、辛いことが多い……だがな、子供達が成長していくのを、見守るのは楽しい」

 

と言った

その言葉と表情は、普段の那月からは想像出来ない程に穏やかなものだった

しかし、考えてみれば当たり前なのかもしれない

那月は、もう長い年月を魔女として生きている

それは、監獄結界に安置されていた本体が物語っている

その分、多くの人々を見送ってきたはずだ

それに、学生だった時の友人達は、もう亡くなっているか、かなり年老いているだろう

本当は、辛いはずである

だが那月は、その辛さよりも育てる楽しさに比重を置いている

そして何より、共に生きる喜びは、生徒達に託した

だから那月は、その生徒達を育てる教師を本職にし、その生徒達を守るために降魔官を副職にした

子供達の成長を、見守るために

 

「もう、世界を呪うのは辞めるんだ、阿夜……」

 

那月がそう言った直後、阿夜が

 

「こうなったら、最後の手段だ……」

 

と呟いた

それを聞いた那月は、目を見開き、優麻は

 

「ダメだ、お母様!!」

 

と声を張り上げた

その直後、阿夜の体を漆黒の炎が覆った

 

「なに……あれ?」

 

それを見た明久は、嫌な感覚に襲われていた

すると、雪菜が

 

「ロストです……」

 

と言った

それを聞いた明久が、雪菜に視線を向けた

すると、雪菜は

 

「魔女や魔法使いの最終手段……自身の全てを捧げる代わりに、強力無比の力を得るんです……しかしそうなったら、現代の技術では戻ることが出来ません」

 

と言った

それを聞いた明久は、もう一度阿夜を見た

そのタイミングで、阿夜の周囲に漆黒の炎で編まれた存在が現れた

そんな阿夜を見て

 

「……バカ者が……」

 

と辛そうに声を漏らした

そして、明久達に視線を向けて

 

「お前達は手出しするな……こうなったら、阿夜はもう助からない……だったら、私が始末を付ける」

 

と辛そうに言った

それを聞いた明久は

 

「待った……僕達がやります」

 

と言った

 

「吉井兄……」

 

「僕は決めたんだ……犠牲を出させないって……それが例え、敵だとしても!」

 

明久がそう言うと、その両隣に雪菜と沙矢華が陣取った

それを見た明久は

 

「雪菜ちゃん、煌坂さん……僕が道を切り開く!」

 

と言った

すると二人は、武器を構えて

 

「任せてください、先輩!」

 

「終わらせましょう!」

 

と言った

その直後、雪菜と沙矢華が同時に駆け出した

それを阻もうと、吸う体の化物が二人に飛び掛かろうとした

だが、明久が

 

「獅子の黄金! 双角の深緋!」

 

と召喚していた眷獣に指示を下した

その直後、その二体が二人に殺到した化物達を吹き飛ばした

だが、流石に明久の集中力が切れ始めてきていたのか、一体が残っていた

そしてその一体が、雪菜に攻撃を加えようとした

だが、それを

 

「させないわよ!」

 

と沙矢華が、刀で化物を切り捨てた

その隙を突いて、雪菜は阿夜に接近

雪霞狼を振り上げて

 

「破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて、我に悪神百鬼を祓わせたまえ!」

 

と祝詞を唱えながら、阿夜に雪霞狼を繰り出した

その一撃は、表皮を少し傷付ける程度の一撃だった

しかし、それだけで十分だった

その一撃により、漆黒の炎に包まれていた阿夜が姿を現した

それを見た那月が

 

「よくやった、お前達!」

 

と言った

それと同時に、那月の背後に黄金の騎士が姿を見せた

その騎士が右腕を阿夜に向けると、騎士の周囲から数本の鎖が射出された

その鎖は阿夜を絡めとり、漆黒の炎から引き剥がした

それを見た明久が

 

「龍蛇の水銀!」

 

と新たに、対の龍蛇を召喚

残っていた漆黒の炎を、全て喰らった

それを見た明久は、召喚していた眷獣全てを消し、それと同時に座り込んだ

どうやら、疲労感からのようだ

やはり、複数の眷獣の同時使役はかなり疲れるようだ

しかし、満足そうに

 

「ようやく、終わった……」

 

と言って、満天の星空を見上げたのだった


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