「なるほど……つまり貴女が言いたいのは、狂ってるのは世界のほうだということですね?」
と問い掛けたのは、巨大な鳥籠に囚われている雪菜だった
雪霞狼では、破壊出来ない
だから、脱出も出来ない
雪菜の居る鳥籠の隣に、別の鳥籠があり、その鳥籠の中には意識を失っているおさなが居る
「そうだ……我々魔女は軽蔑され、差別される……そんな世界、狂ってるに決まっている」
雪菜の問い掛けに答えたのは、着物姿の女
仙都木阿夜だった
阿夜は先程まで、雪菜にある幻影を見せていた
魔女も魔族も、魔術も存在しない世界を
その世界では、明久は剣道部で凄腕の選手になっていて、沙矢華が普通の先輩だった
雪菜はそこで、二人の後輩だった
確かに、そこはある意味で理想の世界だろう
穏やかに過ごせるのだから
しかし雪菜は、その世界を否定した
何故ならば、もし普通の世界だったら出会えなかったかもしれないからだ
そして雪菜は、阿夜を見つめながら
「それに、貴女の認識は間違っています。例え魔女だろうが、キチンと社会に貢献すれば、認められます……認められないのは、誤ったことをしているからです!」
と言った
その言葉に、阿夜が反論しようとした
その時、阿夜はある方に視線を向けた
それを追い掛けるように、雪菜もそちらを見た
その直後、阿夜が貼っていた結界を突き破り、水銀色の双頭蛇龍が現れた
「ちいっ!?」
それを見た阿夜は、舌打ちしつつ空間魔術で回避
雪菜は、反射的にしゃがんだ
そして水銀の双頭蛇龍は、雪菜とおさなが囚われていた鳥籠の上半分を、空間諸とも噛み千切った
それを確認した雪菜は、まず自分の鳥籠から脱出し、おさなを救出
そして、水銀の双頭蛇龍が空けた穴から入ってきた人物達を見た
入ってきたのは、三人
その三人を、雪菜は知っていた
「先輩! 沙矢華さん! 優麻さん!?」
優麻は明久が背負っていたが、確かに居た
そして現れた三人は、雪菜の近くに着地した
そして明久は、優麻を優しく下ろして
「やあ、書記の魔女さん……僕達の学校で、好き勝手してくれたね」
と阿夜を睨んだ
実は明久は知らなかったが、阿夜も彩海学園に在籍したことがあったのだ
だから、阿夜は明久からしたらOGになるのだ
そして阿夜は、優麻と明久を見て
「そうか……人形の血を吸ったのか」
と納得した様子で頷いた
そう、今の明久から魔力が溢れている理由を察したのだ
「そうだよ……あんたが人形と蔑み、まるでぼろ雑巾みたいに扱った優麻が、僕に血を吸わせてくれたから、僕の力が復活したよ」
明久が言葉を言う度に、魔力が昂ってきていた
そして明久は、抜刀した刀
鉋切長光を突き付けて
「覚悟しろ、書記の魔女……あんたが何を企んでるのか知ったこっちゃないが、これ以上好き勝手されてたまるか!」
と告げた
そして続けて
「あんたの企み、全部ぶち壊してやる! ここから先は、
と言った
すると、明久の両隣に沙矢華と雪菜が布陣して
「いいえ、先輩!」
「私達の
と言ったのだった