ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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前に

「ああ、もう! こんな時に、魔術が使えれば!!」

 

と慌てていたのは、救急箱を開いて包帯を取り出した沙矢華だ

それを見て、ソファに寝転がっていた明久は

 

「あー……煌坂さん……とりあえず、落ち着こう」

 

と言った

そう言った明久の胸元は、真っ赤に染まっている

すると、沙矢華は

 

「落ち着けるわけないでしょ!? 魔力が消されてるから、あらゆる魔術が使えないし、貴方だって回復が疎外されてるのよ!?」

 

と涙目になった

そんな二人が居るのは、港湾の管理事務所らしいプレハブだ

シュトゥラ・Dを撃破した直後、阿夜の襲撃を受けて、明久は重傷

更に、雪菜と那月が誘拐されてしまったのだ

勿論だが、沙矢華は阿夜を攻撃しようとした

だが、阿夜が所持する魔導書

闇誓書の力で、彩海学園を中心に、魔力が消され始めていたのだ

それにより、沙矢華は煌華燐がただの金属の塊になって、魔術も使えなくなっていた

それは明久も例外ではなく、途中まで召喚出来た獅子の黄金が消えた

それだけでなく、回復も出来なくなった

だか、そんな中でも例外は居た

それが、雪菜だった

雪菜の雪霞狼は力を失わず、阿夜が沙矢華と明久を狙って放った魔術を切り捨てた

それを見た阿夜は、ポツリと

 

『おもしろいな』

 

と言い、空間魔術で雪菜と那月を連れて消えたのだ

その後沙矢華は、慌てて逃げたらしく鍵が空いていたこのプレハブに煌華燐と明久を運び込み、明久の治療をしようとしているのだ

しかし、今まで魔術ありきの治療だったので、魔術無しで重傷を治すという事態に半ばパニックに陥っていたのだ

 

「というか、なんで貴方はそんなに落ち着いてるのよ!?」

 

「いわゆる、近くにパニックになってる人が居るから落ち着くってやつかと」

 

沙矢華の問い掛けに答えながらも、明久は内心で

 

(とはいえ、長くは持たないかも……)

 

と思った

その時

 

「やっと……見つけたよ……明久……」

 

と新たな声が聞こえた

明久と沙矢華が見た先に居たのは、病衣を着た優麻だった

 

「優麻!?」

 

「貴女、まだ動ける体じゃないでしょ!?」

 

優麻を見て明久は驚き、沙矢華は一歩前に出た

その直後に、優麻の膝がカクンとなり倒れそうになった

しかし倒れるまえに、沙矢華が支えた

すると、明久が

 

「優麻、無理しないの……」

 

と言った

よく見れば、病衣が所々赤くなっている

どうやら、ここに来るまでに傷口が開いたようだ

明久の言葉を聞いて、優麻が

 

「明久だって、相当無理したんだろ? その出血……長くは持たないはずだよ?」

 

と言った

それを聞いた沙矢華は、明久に視線を向けた

すると、明久は

 

「そうだね……刺された直後に、回復を後回しにして、獅子の黄金を呼んだしね……多分、後小一時間が限界だろうね……」

 

と言った

それを聞いた沙矢華は、顔を蒼白にした

今の明久は、第四真祖としての魔力の大半が使えなくなっている

使える僅かな魔力を生態維持に回しても、それが限界だったのだ

まさに、デッドラインだった

すると、優麻は

 

「明久……ボクの血を吸うんだ」

 

と言った

 

「闇誓書を使うために、母さまは自分の魔力は消さなかった……いや、消せなかったんだ……だから、ボクも魔力を使える」

 

優麻はそう言って、魔力の球を形成した

それは、優麻が阿夜のクローンだから使えたのだ

そして優麻は、明久に自身の血を吸わせることで、明久の魔力を復活させるつもりなのだ

だが、それは余りにもギャンブルだった

今の優麻は、阿夜に契約者を奪われているために、魔力の生成にすら難儀する状態だ

そこに更に、明久に血を吸わせたら、生態維持も困難になるだろう

だが、優麻は

 

「もし死んだとしても、満足だよ……ボクの血は、明久の中で生きていくんだからね」

 

と微笑んだ

だが、明久は

 

「死なせるか……誰も死なせるか!!」

 

と力強く言ったのだった


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