ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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行き先は

「誰か、あの人を止めて……!」

 

と言ったのは、おさなの目と耳を覆っている浅葱だった

脱獄囚三人との戦闘は、ヴァトラーが終始圧倒

そして今、三人はヴァトラーが召喚した数多の蛇に全身をかじられていた

今も、浅葱の耳には三人の悲鳴と絶叫が聞こえてくる

 

「お願い、誰か止めて……!」

 

と再び、浅葱が願った

その時だった

 

「ヴァトラー!!」

 

と浅葱の知ってる声が聞こえた

そして現れたのは、跳躍してきたらしい明久だった

浅葱との電話が切れた明久は、雪菜と沙矢華の二人と一緒に、ケッテン・クラートで向かおうとした

だが、その途中でケッテン・クラートが燃料切れ(ガス欠)で動けなくなった

すると雪菜が、明久に自身の血を本の少し吸わせ、吸血鬼の身体能力で屋根の上を走ってきたのだ

 

「やァ、明久。こンなところで、どうしたんだい?」

 

「どうしたじゃない! やり過ぎだ!」

 

明久はそう言って、絶叫を上げて血塗れになった三人に視線を向けた

すると、三人の左手手首にあった手錠から鎖が伸びて、三人を拘束

三人の姿は、虚空に消えたのだった

どうやら、監獄結界に収容されたようだ

それを見て、ヴァトラーが

 

「なるほど……監獄結界のシステム自体は、まだ生きている訳か」

 

と感心した様子で呟いた

すると、力ない声で

 

「明久……」

 

と浅葱が、明久を呼んだ

その浅葱に、明久は近寄り

 

「浅葱、大丈夫?」

 

と問い掛けた

よく見れば、浅葱の顔色は蒼白だ

だが、それは仕方ないだろう

目前で行われていた惨劇

それは、浅葱が経験したことない類だったのだから

そして浅葱は

 

「私は大丈夫……それより、なんでアルデアル公のことを知ってるのよ」

 

と明久に問い掛けた

その問い掛けに、明久は

 

「まあ、色々あったとしか言えない」

 

と何処か遠い目をしながら、答えた

そして

 

「それより、なんで那月ちゃんと一緒に居るのさ!?」

 

と浅葱に問い掛けた

すると、浅葱は

 

「那月ちゃんって、おさなちゃんのこと?」

 

と首を傾げた

 

「おさなちゃん?」

 

「そ、幼い那月ちゃんだから、おさなちゃん」

 

「あっそ……」

 

明久の問い掛けに、浅葱はそう答えた

その時だった

 

「まさか、その少女が空隙の魔女かイ?」

 

とヴァトラーが、問い掛けてきた

その問い掛けを聞いて、明久は反射的にヴァトラーの前に立った

ヴァトラーにとっても、那月は邪魔な存在なのは間違いない

もしかしたら、殺しに掛かるかもしれないと判断したのだ

しかしヴァトラーは、額に手を当てて

 

「クハハハハハハ! 欧州魔族恐怖の代表とも言える空隙の魔女が、変わり果てた姿じゃなイか! アハハハハハハ!!」

 

と笑い始めた

突如笑い始めたヴァトラーを見て、明久は怪訝な表情を浮かべながらも、警戒を続けた

ヴァトラーを信用してないからだ

ひとしきり笑ったヴァトラーは、明久達を見て

 

「なんなら、ボクの船に来るかい?」

 

と問い掛けた

 

「なに?」

 

その問い掛けの意図が分からず、明久は思わず首を傾げた

するとヴァトラーは

 

「治外法圏になるが、今のキーストーン・ゲートよりも、安全だと思うヨ?」

 

と言ってのけた

確かに、今のキーストーン・ゲートの戦力はがた落ちも良いとこだ

それならば、ヴァトラーの船に行ったほうがいいだろう

そう判断した明久は

 

「分かった。行くよ」

 

と言った

すると、浅葱が

 

「私も行くわ!」

 

と手を上げた

 

「浅葱!?」

 

「なによ。私一人を、凶悪犯達が居る町中に放り出すわけ?」

 

明久が驚くと、浅葱はそう言った

確かに

もし脱獄囚達が情報を共有していたら、浅葱も狙われるだろう

明久が悩んでいると、ヴァトラーが

 

「一人二人増えたって、構わないサ」

 

と言った

 

「ヴァトラーァァァァァ!!」

 

どう言って引き離そうか考えていた明久は、思わず怒声を張り上げた

ヴァトラーが言ったら、受け入れざるをえなくなってしまったからだ

こうして明久達は、ヴァトラーの船

オシアナスグレイヴⅡに、乗ることになったのだった


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