地下道を利用し、浅葱は目的地
キーストーンゲートのEエントランスに到着
そこに待機していた警備隊とアスタルテが、浅葱を追い掛けていたキリカ・ギリカを無力化
キリカ・ギリカは、監獄結界に引きずり込まれた
すると、アスタルテが浅葱に近寄り
「マスター那月を発見」
と言った
「え? 那月ちゃん?」
「イエス……そちらの少女の特徴が、97%の確率でマスター那月と一致しました」
浅葱が驚きながら問い掛けると、アスタルテはそう言った
そこに
「その子供、渡してくれるかしらぁ?」
と女の声が聞こえて、浅葱とアスタルテは声のした方向に視線を向けた
そこに居たのは、扇情的な服装の妖艶な美女と学生服を着た二人の女学生だった
すると、モグワイが
『不味い! そいつらは、ジリオラ・ギラルティ、姫路瑞希、島田美波! 全員、監獄結界の囚人達だ!』
と言った
すると浅葱は
「惨劇の歌姫に、ポイズンマスター、ハンドシェイカー!? どいつも、S級魔導犯罪者じゃないの!?」
ジリオラ・ギラルティ
だが、彼女に一人の王族男性が恋に落ち、結婚させまいと他の王族が暗殺者を差し向けたが、眷獣の力で支配し、逆に王族の悉くを惨殺
逮捕され別の監獄に収監されていたが、眷獣の力でその監獄を支配
那月の耳に入り、監獄結界に収監された
姫路瑞希
通称、ポイズンマスター
毒を生成し操る
その毒の中には、殆どの物質を溶かす毒もあり、通常の監獄では収監するのが不可能だった
だから、那月の監獄結界に収監されていたのだ
島田美波
通称、ハンドシェイカー
獣人と普通の人間の間に産まれたハーフで、見た目は人としての血が強いが、中身は獣人の血が強いという特殊な個体だった
だが、その後が不味かった
彼女は当初、欧州で産まれ育ち、ある時に日本に帰化した
だがそこで、ある事件が勃発
何処からか、彼女がハーフということが露見し、反魔族派が彼女と彼女の家族のことを聞き付けて、襲撃
彼女の家族は、殺害されてしまった
その後彼女は、怒りに任せてその犯人達を全員殺害
更には、自分が通っていた生徒や教師の大半を瀕死の重傷に追いやったのである
その時に使われたのが、獣人としての並外れた膂力
それで、まるで地面や建物を揺らすように力任せで戦ったのが、ハンドシェイカーの由来である
そんな彼女を捕まえたのが、那月と西村だった
西村が押さえ込んでいる間に、監獄結界に収容したのである
「ミス藍羽、私に任せてください」
アスタルテはそう言って、眷獣
その時、アスタルテに次々と銃弾が撃ち込まれた
それは、周囲に展開していた警備隊の内の半数が、ジリオラ・ギラルティの眷獣
ロサ・ゾンビメイカーによって、操られていたのだ
それに気づいた残り半数は、その隊員達を無力化しようとした
だがそこに、姫路瑞希と島田美波が動いた
生成された毒で、残りの半数が倒れ伏し、残り半数はまるで人形遊びのように叩き潰された
「これは、不味い!?」
「逃げてください、ミス藍羽……!」
浅葱は焦り、アスタルテは逃げるように促した
そこに
「ふぅン……惨劇の歌姫にポイズンマスター。それに、ハンドシェイカーか……どいつもこいつも、監獄結界に収監されていた奴等か……」
と新たな声が聞こえてきた
そして現れたのは、場違いな純白のスリーピースを着た優男
ディミトリエ・ヴァトラーだった
「ディミトリエ・ヴァトラー……」
「戦王領域の貴族ですか……」
「退きなさい! ウチらは、その女を殺さないといけないのよ!!」
三人はそう言って、ヴァトラーを攻撃しようとした
ジリオラはロサ・ゾンビメイカーで、隊員達を操り銃口を向けさせ、姫路は毒を生成
島田は、地面に手を突っ込み、巨大な岩塊を持ち上げた
しかし、ヴァトラーは慌てずに
「バツナンダ!」
と自身の眷獣を召喚
それは、水を操る眷獣だった
膨大な水で、隊員達と毒は押し流され、島田はバランスを崩して、岩塊を落とした
すると、ヴァトラーは
「いいね、中々の強敵じゃないか!」
と歓喜に震えた声を上げたのだった