ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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母親

「ここに……」

 

「先輩のお母様が……」

 

と沙矢華と雪菜が見ていたのは、一軒の建物

MARの来賓用宿舎だった

そこに、明久と凪沙の母親が居る

しかし、なぜ来賓用宿舎に居るのか

その理由は、その母親

吉井深森(よしいみもり)が研究バカだったからだ

生活能力が欠如している代わりに、研究に対する意欲が並外れていたのだ

最初はちゃんと、アパートから出勤していたのだが、気付けば来賓用宿舎に住み込み始めた

最初はMAR側も、深森にきちんと帰宅するように促した

しかし深森には、生活能力の欠如から来る自己管理の無さがあった

しかもそれに重なって、研究バカ

倒れる寸前まで研究し、同僚達に運ばれるという事態が多発

そして運ばれたのが、件の来賓用宿舎だ

そうしている内に、来賓用宿舎には深森の私物(主に服や化粧品)が散乱

それにより、MARは諦めてその来賓用宿舎を深森用の宿舎として貸し与えたのである

そして明久は、二人を見て

 

「取り合えず、気をしっかり持ってね」

 

と言って、インターホンを鳴らした

すると

 

『はーい! ちょっと待っててねー』

 

と若い女性の声が聞こえた

それを聞いた明久は、僅かに後退した

そして少しすると、ドアが開いて

 

「バァ!?」

 

とかぼちゃ頭が眼前に現れた

 

『キャアァァァ!?』

 

それは流石に予想外だったらしく、雪菜と沙矢華は驚いた

しかし明久は、優麻を背負ったまま器用に、何処からかハリセンを取り出して、叩き

 

「いきなり何やってんのさ!?」

 

と突っ込みをした

すると、そのかぼちゃ頭

深森は、かぼちゃの被り物を脱いで

 

「だってさ、今日はせっかくのフェスタでしょ? だっていうのに、今日は出れないのよ? だったら、目一杯楽しむしかないじゃない……トリック・オア・ダイ!」

 

と言った

最後は、盛大に間違えている

だから、明久は

 

「イタズラか死ってなにさ!? 嫌過ぎるから!?」

 

とまた突っ込みを入れた

しかし深森は、そんな明久を無視

雪菜と沙矢華を見て

 

「何々、この可愛い娘達!? 付き合ってるの!? 出来てるの!? 私、お祖母ちゃんになっちゃうの!?」

 

と怒濤のように、嬉しそうに言った

すると、明久は

 

「付き合ってないから! 出来てないから!! ならないから!!!」

 

と重箱突っ込みを繰り出した

その突っ込みに疲れて、明久はゼーゼーと荒く呼吸していた

その時になって深森は、明久に背負われている優麻に気付いた

 

「あら……ユウちゃん?」

 

と呟いてから、明久を見て

 

「何があったの?」

 

と問い掛けた

その問い掛けに、明久は

 

「詳しく説明してる暇は無いんだ。優麻を治療してほしい」

 

と言った

それを聞いた深森は

 

「ま、いいわ。中に入りなさい」

 

と言って、受け入れた

そして中に入ったのだが

 

「あれ、明久君?」

 

そこには、猫を彷彿させる仮装をした凪沙が居た

 

「凪沙!? こっちに来てたのか!」

 

「そうだよ。今朝早くに、いきなり電話があってね。替えの服や料理を作ってたんだよ」

 

明久が問い掛けると、凪沙はそう答えた

そして、明久に背負われてる優麻に気付いて

 

「ユウちゃん!? 何があったの!?」

 

と近寄った

その時、沙矢華に気付いて

 

「貴女は……前に学校の屋上で、明久君に剣を向けてた……」

 

と呟いた

そして、警戒した表情で沙矢華を睨んで

 

「また何か、家の明久君に御用でしょうか?」

 

と詰め寄った

 

「あ、いや、あの……」

 

どう答えればいいのか分からず、沙矢華は狼狽えた

それを見て、明久は

 

「煌坂さん……頼んだ」

 

と言って、部屋の奥に向かった

 

「え!? ちょっ!?」

 

まさか押し付けられるとは思ってなかったらしく、沙矢華は更に狼狽えた

そして

 

「後で覚えてなさいよ!?」

 

と叫んだ

その間に明久と雪菜は、深森と一緒に優麻をソファーに寝かせた

すると深森は、そんな優麻の腹部に軽く触れて

 

「出血の割りに、傷口は深くないわね……」

 

と呟いた

だが、顔をしかめて

 

「やっぱり、服越しじゃあ、分かりにくいわね」

 

と言って、優麻の胸元に手を突っ込み

 

「はい、これ。預かっててね」

 

と雪菜に、優麻の下着を投げ渡した

 

「ちょっ!?」

 

やはり下着を投げ渡されるとは思わず、雪菜は顔を赤くした

しかしその間に、深森は直に優麻の胸を触り

 

「なるほどね……そういうことか」

 

と納得していた

すると、その光景を見た雪菜が

 

「先輩……まさか、この人は」

 

と明久に視線を向けた

すると、明久は頷きながら

 

「うん……サイコメトラーの過応適応者(ハイパーアダプター)だよ」

 

と言った

深森は、相手に触れることでその相手の情報を知ることが出来る、所謂超能力者なのだ

ただ、少し変態混じりなので、質が悪い

 

「しかし、納得しました。やはり、先輩のお母様ですね」

 

「どういう納得の仕方かな?」

 

明久が睨むが、雪菜は答えなかった

すると、深森は

 

「取り合えず、奥の部屋で治療をしないと……雪菜ちゃんだったかしら? 手伝ってくれる?」

 

と雪菜を見た

すると明久が

 

「運ぶんだったら、僕が運ぶけど……」

 

と言った

しかし深森は、そんな明久に近寄り

 

「ウチの研究室は、男子禁制よ……それに」

 

と言って、明久の下腹部に肘打ちを叩き込んだ

 

「痛っ!?」

 

「先輩!?」

 

明久が痛みで踞ると、深森がそんな明久の耳元で

 

「あんたも、治療が必要でしょう? 救急箱は、寝室のクローゼットの中よ」

 

と言って、立ち上がった

そして

 

「雪菜ちゃん、手伝ってね」

 

と言ったのだった


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