ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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決着

刀を構えた明久は、優麻に向かって走り出した

すると優麻は、羽織っていたマントに隠していた腰から一振りの剣を抜いた

それは、武骨な西洋剣だった

優麻はその剣で、明久が振り下ろした小烏丸を受け止めた

その直後、明久の背後から雪菜が明久の頭上を飛び越えて優麻の上を取った

 

「はあっ!」

 

(ル・ブルー)!」

 

雪菜が雪霞狼を振り下ろした直後、横から突き出された大きな剣がその一撃を防いだ

それをしたのは、顔の無い青い騎士だった

一撃を防がれた雪菜は、その衝撃を利用して距離を取った

すると、明久も後退して

 

「何あれ」

 

と雪菜に問い掛けた

すると、雪菜は

 

「あれは、魔女が契約して得る守護者です……しかも、騎士型とは……純粋な魔女のようですね」

 

と言った

この守護者というのは、純粋な魔女が騎士型

適性の低い魔女が自然界に生息する動植物をベースにした物の場合が多い

それにより、純粋タイプと低適性と見分けることも可能である

 

「久しぶりに、(ル・ブルー)を出したよ……獅子王機関の剣巫……中々の腕前のようだね」

 

優麻は雪菜を見ながら、感心したようにそう言った

しかし、次の瞬間

 

「雪菜ちゃんだけじゃ、ないよ」

 

気付けば、明久が優麻の背後を取っていた

しかも、左手に持っていた鉋切を突きだした

それを優麻は、紙一重で回避した

だが、羽織っていたマントは切り裂かれた

 

「本当に厄介だね……その縮地は」

 

「だからこそ、剣術の移動の奥義なんだよね……その気になれば、車並に走れるから」

 

優麻が悔しそうに言うと、明久はそう言った

古流剣術移動の極み

それが、縮地である

過去の文献によれば、極めれば全速で走っている馬車に余裕で追い付いたとされている

その速さは、普通の人間が行った場合だ

もし、魔力を有する魔女や吸血鬼が行えばどうなるか

それは、推して知るべし

しかも、初速から最高速を出せる

それにより、一瞬にして消えたように見えたのだ

これにより、優麻は明久と雪菜に挟まれた形になる

だが、優麻は落ち着いた表情で

 

「忘れてないかな、明久……僕には、空間魔術があるんだよ」

 

と言った

その直後、優麻の姿がユラリと消えた

そして現れたのは

 

「貰った」

 

眠っている那月の頭上

しかし

 

「忘れてはいないさ」

 

と那月の近くに、明久が現れた

そして、持っていた小烏丸を投擲

それを優麻は、持っていた西洋剣で上に弾いた

しかし、次の瞬間には明久が目前に居て

 

「後、僕が使うのは剣術だけじゃないよ」

 

と明久は言って、左手を優麻の腹部に当てた

その直後、優麻の体を凄まじい衝撃が襲った

 

「ガハッ!?」

 

その一撃は予想外だったらしく、優麻は完全にバランスを崩して墜落した

そして那月の隣に着地した明久に

 

「い、今のは……!?」

 

と顔を向けた

すると、明久は

 

「徹し勁と言われる技だね。鉄人から教わった」

 

と返した

それは、衝撃を相手の体内に直接叩き込む技である

雪菜の使う(ゆらぎ)と同種の技だ

そして、幾ら吸血鬼の体とは言えども衝撃による内臓への傷ではないダメージは治らない

その隙を突いて

 

「これで終わりです、優麻さん」

 

と言って、雪菜が雪霞狼を軽く刺した

その直後、バチリと音がして、明久と優麻の体が入れ替わった

すると、明久は膝を突いた

それを見た雪菜が

 

「先輩!?」

 

と心配そうにした

すると、明久は

 

「やっぱり、雪霞狼で刺されるのは、キツいか……」

 

と呟いた

それは、事前に話し合っていた策だった

先程までの明久と優麻は、空間魔術を用いて体が入れ替わっていた状態だった

それを解除するには、優麻を殺すか魔術を解除するしかない

しかし、優麻殺すのは無い

そして、魔術の解除

これには、雪霞狼を使えば簡単だと分かっている

しかし、雪霞狼を刺した後はどうなるかわからなかった

だから、優麻には刺さなかったのだ

不死の明久だからこそ、取れた選択肢だった

しかし、やはり明久とは言ってもかなりのダメージのようだ

そこはやはり、対第四真祖用に作られた兵器なだけはある

そして明久は、倒れている優麻に近づいて

 

「それで、優麻……どうする? まだやる?」

 

と問い掛けた

すると、優麻は

 

「そうしたいところだけど……体が動かない……無理だね」

 

と言った

どうやら、長時間明久の体を使っていたのが堪えたらしい

こうして、優麻の企みは失敗に終わったのだった

 


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