転移した明久と雪菜が見たのは、まるで城を彷彿させる建物だった
しかし、窓には鉄格子が嵌められていて、壁の上には有刺鉄線が張り巡らされている
それは正しく、監獄だった
「ここが、監獄結界……」
「先輩、早く中へ」
雪菜に促され明久は、監獄結界の中に入った
中に看守は居らず、人の気配は感じない
しかし明久と雪菜は、とてつもない量の魔力が満ちているのを感じた
「なるほどね……確かに、普通の監獄じゃあ無理そうだね」
「はい……人数はわかりませんが、凄い魔力を感じます」
二人はそう会話しながら、奥へと走った
そして、見えたのは優麻の背中と
「な……そんな……」
「なんで……」
椅子に座って眠っている、少し幼い印象の那月だった
「那月ちゃん!?」
「南宮先生!?」
明久と雪菜が驚くと、優麻はゆっくりと振り向いて
「彼女が、監獄結界の主さ」
と二人に語りかけた
そして続けて
「監獄結界というのはね、明久……彼女の夢の世界なのさ……その人の夢の中では、あらゆる凶悪犯だろうが無力に捕まる」
と言った
それを聞いて、明久は
「待って、そんなのおかしい! だったら、僕達に教えていた那月ちゃんは偽物だとでも言うの!?」
と優麻に問い掛けた
すると優麻は
「ある意味では、偽物と言えるね……本体はここで眠り続け、外には空間魔術を使って幻影を編み出して行動させていたんだ……外を知るのと、島を見守るためにね」
と言った
それを聞いた明久は
「島を……見守るため?」
と首を傾げた
明久の言葉を聞いて、優麻は頷き
「そう……それが、彼女と人工島管理公社の契約だった……真正の魔女ならば、不老長寿だからね……ほぼ悠久と言える時を生きる……だから、守護者とするにはちょうどいいのさ……」
と説明した
「そして、外に出ている体のほうが、彼女にとっては夢なのさ……成長することのない自分が、成長する子供達を見守るのがね」
確かに、そうなのかもしれない
過去には那月も、学生だったはずである
その時は、他にやりたいことがあったはずである
しかし、人工島管理公社との契約があり出来ない
だから那月は、教師となって生徒を教育することを選んだ
生徒達には、夢を追い求めてほしいから
そして那月がなんやかんやと面倒を見るのは、自分と同じような道を進んでほしくないからではないだろうか
そこまで思い、明久は拳を握り締めた
すると、優麻が
「その長い間続いた夢を……終わらせよう」
と言いながら、右手に魔力を集めた
今の那月の体は、眠っている
無防備なのだ
「つっ!!」
その瞬間、明久の姿が掻き消えた
そして、優麻の右手から魔力弾が放たれたがそれは
「疾!」
と明久が振るった長光によって、斬られた
「今の動きは……」
「縮地……優麻も魔女だからね、魔力を有してる……感覚を掴むのに手間取ったけどね……今は、十全に使えるよ」
明久はそう言いながら、両手に刀を構えた
そして、優麻に
「確かに……優麻はお母さんが大事なのかもしれない……だけど、僕は島と那月ちゃんが大事なんだ……それに、優麻のお母さんだけでなく、他の凶悪犯も解放されてしまう……だから、ここから先は
と宣言した
すると、いつの間にか雪菜が明久の隣に現れて
「いえ、先輩……私達の
と言った