ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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渦中へ

クタクタになりながらも、体育の補習であるマラソンを終えて、明久は雪菜と一緒に買い物に向かった

 

目的は第一に雪菜の布団やら、生活必需品の買い物で、第二に凪沙からメールで送られてきた夕飯の買い物である

 

「そういえば、雪菜ちゃんて幾ら位お金を持ってるの?」

 

ふと気になって、明久が問い掛けると、雪菜は持っていたカバンの中から真新しい通帳を取り出して

 

「これくらいです」

 

と見せた

 

通帳に記載されている金額を見て、明久はビシリと固まった

 

「い、一千万……?」

 

そこに記載されていた金額は、一学生が持つには過剰な金額だった

 

「はい。なんでも、先輩の監視をする為の前払い金だとか……」

 

「僕が理由なの? ねえ、僕が理由なの!?」

 

雪菜の言葉を聞いて、明久は目を見開いた

 

それではまるで、戦場に向かう人への前手向けてはないか

 

と明久は思った

 

だがとりあえず、お金の心配はしなくて済んだ

 

そして、明久は雪菜と一緒に買い物を終えて帰宅した

 

そして、夕食後

 

「ふぃ……満腹だよー」

 

凪沙はそう言いながら、リビングのソファに寝転がった

 

「凪沙、行儀悪いよ?」

 

明久が注意するが、凪沙は気にせずに寝転がったまま

 

「明久くん、アイスー」

 

とねだった

 

「冷蔵庫には無いよ」

 

明久がそう言うと、凪沙は頬を膨らませて

 

「だったら、買ってきてよー」

 

と言った

 

凪沙の言葉に、明久は深々と溜め息を吐いて

 

「わかったよ……太っても知らないからね?」

 

と言うと、リビングから出た

 

「太りません!」

 

凪沙の抗議の声を聞きながら、明久は自室に戻って財布を取ると玄関から出た

 

すると

 

「どこに行くんですか?」

 

という、雪菜の声が聞こえた

 

明久が視線を向けると、そこには半裸状態の雪菜が居た

 

「なんで、そんな格好なの!?」

 

明久が驚愕していると、雪菜は胸元を隠しながら

 

「シャワー浴びてる最中だったんですから、仕方ないじゃないですか!!」

 

と顔を赤くしながら抗議した

 

確かに、言われてみれば、雪菜の髪は水気がある

 

どうやら、明久が出掛けようとしたことに気づいて、慌てて出てきたらしい

 

そのことに、明久は溜め息を吐くと

 

「待ってるから、ちゃんと拭いて、服を着てきてよ……」

 

と言った

 

すると、雪菜はジト目で明久を睨み

 

「本当ですね……?」

 

と問いかけてきた

 

「本当だから、早く着替えてきて……下手したら、僕が変態扱いされかねないから……」

 

雪菜からの問い掛けに、明久はそう言いながら手をヒラヒラとさせた

 

雪菜は数瞬悩むと、部屋に戻っていった

 

そして数分後、雪菜はキチンと服を着てその背中に、あのギターケースを背負って現れた

 

「よし、それじゃあ行こうか」

 

明久はそう言うと、雪菜を伴って歩き出した

 

「それで、どこに行くんですか?」

 

「コンビニだよ……凪沙に頼まれてアイスを買いに行くんだ」

 

明久の説明を聞いて、雪菜は納得した様子で頷いた

 

「コンビニですか……高神の社には無かったですね」

 

「高神の社ってのは、獅子王機関の?」

 

雪菜の言った場所を聞いて、明久は首を傾げた

 

「ええ……獅子王機関の育成所がある場所です」

 

「そっか……」

 

雪菜の説明を聞いて、明久は頷いてから目的地に向かって黙々と歩いた

 

そして、コンビニで目的のアイスを買って出ると、雪菜はコンビニ前の建物

 

ゲームセンターの入り口にある筐体の中を見て、動きを止めた

 

雪菜が止まったことに気づいて、明久も筐体、UFOキャッチャーの中に視線を向けた

 

中に入っていたのは、招き猫のぬいぐるみだった

 

「確か、ねこまたん……だっけ……興味あるの?」

 

明久が問い掛けると、雪菜は慌てた様子で手をパタパタと振りながら

 

「い、いえ! あの、そういうわけじゃ!?」

 

とドモりながら、否定していた

 

そんな雪菜を見て、明久は微笑むと

 

「ちょっと待ってね……」

 

と言うと、お金を取り出して筐体に入れた

 

すると、テンポのいいBGMが鳴りだすが、明久は気にせずに操作を始めた

 

「よし……ここだ!」

 

明久は意気込みと共に、降下ボタンを叩いた

 

すると、アームがゆっくりと下がっていき、人形の山に突っ込んだ

 

そして、数秒間固まってからゆっくりとアームが上がった

 

「よし……そのままそのまま……」

 

アームは確かに、ねこまたんを挟んでいた

 

そして数秒後、ねこまたんは取り出し口に落ちた

 

「はい、ゲットっと……はい」

 

明久は取り出し口から取り出すと、雪菜に手渡した

 

「あ、ありがとうございます……」

 

雪菜はお礼を言うと、ねこまたんを胸に抱いた

 

その姿は年相応の少女らしさがあり、明久は笑みを浮かべた

 

その時

 

「貴様ら……こんな時間になにをしている?」

 

今、一番聞きたくない声が聞こえた

 

その声を聞いて、二人はビシリと固まった

 

二人は筐体のほうに体を向けているので、声を掛けてきた人物の姿が筐体のガラスに映った

 

「貴様ら……こんな時間に学生が外出していると、補導の対象になると知っているか?」

 

声を掛けてきたのは、彩海学園教師にして国家攻魔官

 

南宮那月だった

 

どうやら仕事帰りらしく、その手には何時も学園に持っていくカバンを持っていた

 

「さて、私には貴様らを補導する権利が有る……というか、そっちの茶髪は私の知っている奴のような気がするんだがな?」

 

背後から放たれている威圧感(プレッシャー)に、二人はガタガタと震えた

 

彼女、南宮那月は空隙の魔女と呼ばれる手練れの魔術師である

 

雪菜ももちろん、そのことを知っているので震えている

 

「さて、貴様らには大人しく付いて来てもらう……」

 

那月がそう言いながら、一歩前に出た時だった

 

遥か彼方で、大爆発が起きた

 

「なんだ!?」

 

そのことに気を取られて、那月が爆発の起きた方向に視線を向けた

 

「今だ!」

 

その隙を突いて、明久は雪菜の手を取って駆け出した

 

「あ、こら待て! ええい……明日は覚えていろよ、吉井明久!!」

 

どうやら、バレていたらしい

 

明久は雪菜の手を握ったまま、しばらく走り続けた

 

そして気づけば、自宅のアパートの近くまで戻っていた

 

そこからでも、爆発によって起きた火災が見えている

 

「先輩……先ほどの爆発……」

 

「うん……一瞬だったけど、魔力を感じた……多分、吸血鬼だね」

 

雪菜が問い掛けると、明久は頷いてから答えた

 

雪菜は少しすると、ギターケースから雪霞狼を取り出した

 

「雪菜ちゃん?」

 

明久が懐疑的な視線を向けると、雪菜は未だに燃えている場所に視線を向けて

 

「私は今から、あの場所に行ってきます……先輩はここに居てください」

 

と言った

 

「雪菜ちゃんが行く必要なんて……」

 

明久がそこまで言うと、雪菜は真剣な表情を浮かべて明久を見上げながら

 

「私は国家攻魔官です。魔族絡みの事件が起きたら、その事件を止める義務が有ります」

 

と言うと、再び燃えている場所に視線を向けた

 

「先輩は一応、一般人ですし、なにより……凪沙ちゃんが待ってます。ですから、ここで別れましょう」

 

と言った

 

「でも、雪菜ちゃん……」

 

と明久が口ごもっていると、雪菜は身を翻して

 

「それでは……」

 

と言うと、二人が居た高架橋から飛び降りて通り過ぎようとしていたモノレールの屋根に飛び乗った

 

そのモノレールの行き先は、丁度よく爆発の有った方向だった

 

「あ……」

 

咄嗟に手を伸ばしていた明久は、すぐに欄干から身を乗り出すようにモノレールに乗り移った雪菜を見下ろした

 

そして、雪菜が乗ったモノレールの行き先を見ると

 

「ほっとける訳ないでしょ!」

 

と言うと、自宅の方へと駆け出した

 

この時は気付かなかったが、明久は絃神島を巡る戦いに飛び込んだのだった


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