ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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決着

焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)の名を継ぎし者……吉井明久が、汝が枷を解き放つ……疾く在れ(こい)! 三番目の眷獣! 龍蛇の水銀(アル・メイサ・メルクーリ)!」

 

と明久が言うと、掲げていた左腕から鮮血が溢れた

そして、それを媒介に現れたのは水銀色の対の龍蛇だった

それは互いの尻尾を噛むように現れて、まるで無限の記号を表していた

その龍蛇が咆哮すると、莫大な魔力で空間が震えた

それを見た賢生は

 

「今さら、新しい眷獣を出した所で、夏音の優位性は変わらん」

 

と言った

だが明久は、構わずに

 

「行け!」

 

と指示を下した

そして龍蛇は、その顎門(あぎと)で周囲の空間を噛み千切った

 

「なっ……高次元が噛み千切られた!?」

 

その光景を見て、賢生は目を見開いた

そして、その龍蛇の攻撃の正体を見抜いた

 

「そうか、次元喰い(ディメンジョン・イーター)か!?」

 

そう

龍蛇の水銀の正体は、次元喰いだったのだ

その攻撃能力は、今の明久の中では一番凶悪なのだ

その顎門に噛まれたら、噛まれた場所は存在が次元から消える

それだけでなく、例え高位次元の相手が居ようが、同じ次元に引きずり落とすのだ

だから今の夏音は、確かに天使の力を有しているが、今は明久達と同じ次元に居るのだ

たったそれだけだが、明久達に戦いやすくなった

しかし、依然として明久に夏音の攻撃はみえない

回避出来てるのは、ひとえに明久の直感からだった

夏音に生えている、三対六枚の翼

その翼に付いている、巨大な目

それが、明久を見た瞬間にそこから動いてるだけだ

だから時々、ギリギリのタイミングがあった

更に言えば、明久の眷獣達は対人攻撃に向いていない

いくら夏音が高位の存在だろうが、直撃を受けたら無事とは思えなかった

 

「次元を落とされたとはいえ、夏音の優位性は変わらない! 夏音の体表に施した術式が健在ならば、夏音は人造天使の力を振るえる!」

 

賢生がそう言った直後、夏音の頭上に十数本の光の剣が現れた

見えるのは、恐らく力を高めたからだろう

 

「つっ……これ以上は、どうしようもないのか!?」

 

と明久が言った時、明久の隣に雪菜が現れて

 

「いえ、私達の勝ちですよ。先輩」

 

と言って、駆け出した

そして雪菜は、雪霞狼を構えた

その雪菜を狙い、光の剣が殺到した

しかしその光の剣は、龍蛇の水銀に食われた

それは、次元喰いを使った防御だった

龍蛇の水銀に食われた空間は、消滅する

ならば、先の空間を食えばどうなるのか

それは、沙矢華の煌華燐と同じ効果を得ることになる

その隙に、雪菜は一気に跳躍

夏音と同じ高さになった

そこに

 

「はあぁぁぁ!!」

 

と雪霞狼を振るった

しかしその一撃は、夏音の体表を掠める程度だった

だがその直後、変化が起きた

夏音が苦しみだしたのだ

それは、夏音の体表に施された術式の効果が失われたからだ

制御下を外れた力が、夏音を蝕んでいたのだ

そしてとうとう、力に耐えきれなくなったらしく、夏音の背中にあった翼が夏音から離れた

それに伴い、夏音が落下

しかし夏音は、雪菜がキャッチ

そして明久は、夏音から離れた翼を見上げた

その翼からは、膨大な力が無秩序に放たれていた

放置したら、全員が無事には済まないだろう

すると雪菜が

 

「先輩! あれを!」

 

と翼を見上げた

 

「今は夏音ちゃんの術式を破壊したことで離れてますが、もしまたあれに取り付かれたら、何が起きるか分かりません!」

 

雪菜のその言葉を聞いて、明久は頷き

 

「龍蛇の水銀!」

 

と指示を出した

すると、龍蛇の水銀は翼に向かっていく

翼は逃げようとしたのか、空に向かっていく

しかし、夏音という依り代を失った翼の動きは遅かった

龍蛇の水銀はあっという間に追い付き、その二つの顎門で翼に噛み付いた

そして、一気にその翼を食べていく

最後の翼の欠片も、二つの顎門に食われて消滅

それを確認した明久は、満足そうに咆哮していた龍蛇の水銀を消した

すると、ラ・フォリアが賢生に歩み寄り

 

「これで、終わりです。賢生」

 

と宣告した

すると賢生は、リモコンを手放すと両ヒザを突いた

こうして、人造天使計画は幕を下ろしたのだった


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