ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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目覚めと

「一応、簡易結界は張りました。ですが、すいません。外には出れなくなりました」

 

「いえ、大義でした。雪菜」

 

雪菜の報告を聞いて、ラ・フォリアはそう言った

雪菜が張った結界というのは、雪霞狼を使った結界だった

それを張ったことにより、三人は冷気に襲われることは無くなった

しかしそれにより、周りは完全に氷に囲まれてしまったのだ

今吹雪は収まっているが、何が起きるか分からない

何より、明久が目覚めないのだ

夏音の攻撃なのか、明久は全身から出血し倒れた

その明久を守るために、明久を中心にして結界を張った

そして、未だに目覚めぬ明久を見て

 

「胸の傷だけが、治らない……」

 

と呟いた

明久の胸部

そこには、手のひらサイズの十字形の傷があった

他の傷は、粗方治った

しかし、それだけは治らない

すると、ラ・フォリアが

 

「この傷は、神気による傷ですね」

 

と言った

それを聞いて、雪菜が

 

「神気の傷?」

 

と問い掛けた

すると、ラ・フォリアは頷いて

 

「ええ。明久の胸には、今も見えない剣が刺さっているのです。言うなれば、神気の剣です」

 

と言った

それを聞いた雪菜は、慌てた様子で

 

「そんな! 何とかならないんですか!?」

 

とラ・フォリアに問い掛けた

すると、ラ・フォリアは

 

「私達には、その剣は抜けません……」

 

と言った

すると雪菜は、砂浜に両膝を突いて

 

「そんな……」

 

と俯いた

しかし、ラ・フォリアは

 

「まだ諦めるには早いですよ、雪菜」

 

と言った

 

「本来ならば、神気の剣に胸部を貫かれた時点で、幾ら第四真祖とは言え消滅は免れない筈です。しかし、未だに消滅していません」

 

ラ・フォリアはそう言いながら、明久の胸部に手を添えた

そして

 

「やはりですか」

 

と言った

 

「何がやはりなんですか?」

 

雪菜が問い掛けると、ラ・フォリアは明久の顔を見て

 

「今明久の中で、神気と明久の眷獣の力がせめぎあっています。ですが、その眷獣の力が弱いのか、徐々に押されているようです」

 

と言った

すると、雪菜が

 

「ですが、高次の気たる神気を押さえる眷獣なんて……」

 

と言いながら、唸りだした

それを聞いて、ラ・フォリアが

 

「確か、明久が掌握している眷獣は二体。雷と音の眷獣でしたね?」

 

と問い掛けた

その問い掛けに、雪菜は頷いて

 

「はい、その通りです」

 

と肯定した

するとラ・フォリアは

 

「ということは、今中で抗っているのは次元を司る眷獣のようですね」

 

と言った

それを聞いた雪菜は

 

「新しい眷獣が、動いてる……まさか、暴走してる?」

 

と呟いた

今まで、明久の中の眷獣は近くに霊媒が居ると目覚めてきた

だが、強制的に起きた場合、凄まじい力を放出した

今は恐らく、神気の剣にその殆どの力が使われているから、まだ災害は起きていない

しかし、その均衡が破れたらどうなるのか

それは、雪菜には想像出来なかった

ふとその時、雪菜の耳に衣擦れの音が聞こえた

それが気になり、雪菜は顔を上げた

その直後

 

「な、何をやってるんですか!?」

 

と雪菜は、悲鳴のように叫んだ

何故ならば、ラ・フォリアが上着を脱いで明久のワイシャツを脱がしていたからだ

 

「何って、明久の眷獣掌握の手伝いをしようかと。吸血が必要なのでしょう?」

 

「そうですが、何故脱いでいるのですか!?」

 

雪菜がそう問い掛けると、ラ・フォリアは

 

「吸血衝動を起こすには、性欲を刺激するのでしょう? 性欲を刺激する方法は、メイド達から聞いています」

 

と言った

それを聞いて雪菜は、心中で

 

(アルディギア国王、メイドの選別はキチンとしてください!)

 

と叫んだ

そうしている間にも、ラ・フォリアは明久のワイシャツを脱がしていき

 

「おや、明久は予想以上に筋肉質なのですね。流石は、剣術大会個人戦優勝者」

 

と言った

そして、ラ・フォリアラ・フォリアはリボンをほどき第一ボタンを外そうとした

その時

 

「私が血を与えます!」

 

と雪菜は叫んだ

すると、ラ・フォリアが微笑んで

 

「はい、お願いしますね」

 

と言った

 

「え」

 

アッサリとしたラ・フォリアの返しに、雪菜が固まっていると

 

「では、お願いしますね」

 

と言ってラ・フォリアは、明久の上からアッサリと退いた

それを見て、雪菜は気づいた

 

(しまった! 嵌められた!)

 

雪菜の性格と任務の両方を使った、ラ・フォリアの策だったのだ

そして雪菜は、ものの見事に嵌まったのである

 

「どうしました、雪菜? なんなら、私が脱がしましょうか?」

 

「いえ、大丈夫です。自分でしますから!」

 

手をワキワキと動かすラ・フォリアを止めると、雪菜はリボンを外し、第一ボタンを外した

そして、予備武器のナイフで首筋を薄く切った

そうして、明久の上に乗り

 

「先輩……」

 

と言いながら、明久の頭を抱き締めた

すると、明久の唇に雪菜の首筋から流れてきた血が垂れた

その直後、明久の腕が雪菜を抱き締めた

 

「先輩!? 起きてるんですか、先輩!?」

 

雪菜がそう問い掛けるが、返答は無い

意識はまだ、戻っていないようだ

すると

 

「先輩! すぐ近くに人が居るんですよ!? 何処を舐めてるんですか!? 先輩!!」

 

と雪菜の慌てる声が聞こえた

そして最後に、雪菜は熱を帯びた吐息のような声を漏らして力が抜けた

どうやら、明久が雪菜の首筋に牙をたてたようだ

明久が目覚めたのは、それから数分後だった

 

「あー……んぅ?」

 

明久がそう声を漏らしながら起きると、ラ・フォリアが

 

「起きましたか、明久」

 

と声を掛けた

すると明久は

 

「あれから、何分経った?」

 

と問い掛けて、身を起こした

するとラ・フォリアが

 

「大体、二十分といったところですね。それと、右手の位置に注意を」

 

と言った

それを聞いた明久は、右側を見て

 

「うお、雪菜ちゃん!?」

 

と声を上げた

そして、雪菜の首筋の包帯を見て察した明久が

 

「迷惑掛けたのかぁ」

 

と呟いた

そんな明久に、ラ・フォリアが近寄

 

「雪菜は、貴方を助けるために血を吸わせたのですよ」

 

と言った

そして明久に、詳細を説明した

それを聞いて、明久は

 

「でも、新しい眷獣が目覚めた気配なんて」

 

と言いながら、首を傾げた

するとラ・フォリアが

 

「ちょっと、触りますよ」

 

と言いながら、手を当てた

そして、数秒後

 

「なるほど、そういうことですか」

 

と納得した様子で呟いた

そして

 

「明久。この眷獣は、二人分の霊媒が必要なようですね」

 

と言った

そして、立て続けに

 

「どうやら、かなり特殊な眷獣のようですね。二人の血を吸って、ようやく完全に目覚めるようです」

 

と言った

 

「二人分か……」

 

と明久が呟くと、ラ・フォリアはワイシャツの第一ボタンを外して

 

「明久、私の血を吸いなさい」

 

と言った

それを聞いた明久が目を向けると

 

「明久。貴方は、世界最強の吸血鬼なのでしょう?」

 

と問い掛けた

それを聞いた明久は、頭を掻きながら立ち上がり

 

「まあ確かに、世界最強の第四真祖と呼ばれてるね」

 

と認めた

するとラ・フォリアが

 

「私の父親は、少々親バカの気がありましてね。私を嫁に欲しいのなら、俺と軍を倒せ。と言うでしょう……明久」

 

と言いながら、明久を真剣な表情で見た

そして明久は、そんなラ・フォリアを見ながら

 

「人間に勝てないと、世界最強だなんて言えないよね」

 

と言って、ラ・フォリアを抱き締めた

そして、真剣な表情で

 

「王様とだって、倒してみせるさ」

 

と言った

それを聞いたラ・フォリアが頷くと、明久はラ・フォリアの首筋に牙を突き立て


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