ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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置き去り

翌日、商業地区

 

「ここ、か……」

 

「はい、叶瀬さんの家のある会社……カノウアルケミ・インダストリィの子会社。メイガスクラフトです」

 

二人の前には、一面ガラス張りの建物が見えた

カノウアルケミ・インダストリィ

名前からも分かるように、錬金術を使った製品を多数出している企業である

その子会社

メイガスクラフトは、傀儡魔術を使ったロボット開発・販売をしている会社である

企業母体はアルディギア王国にあるらしい

夏音はそこの社員の一人の養女として、社員寮に住んでいるらしい

それを知った二人は、直接来たのである

真相を知るために

明久と雪菜は中に入ると、受付に歩み寄った

受付に座っていたのは、人型のロボットだった

二人が近付くと、そのロボットが

 

『どのようなご用件でしょうか?』

 

と問い掛けてきた

すると雪菜が

 

叶瀬賢生(かなせけんせい)さんに面会したいのですが」

 

と言った

叶瀬賢生

それが、夏音の養父の名前である

すると、少ししてから

 

『叶瀬賢生は、ただ今不在です。御名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?』

 

と受付ロボットが返した

 

「獅子王機関の姫柊雪菜です」

 

と雪菜が言うと

 

『少々お待ちください』

 

と言った

すると明久が

 

「獅子王機関のこと、言って良かったの?」

 

と雪菜に問い掛けた

それに対して、雪菜は

 

「一応、政府直轄の組織ですから、大丈夫かと。それに、居留守という可能性もなきにしもあらずですから」

 

と返した

その時

 

「すいません。お待たせしました」

 

と声が聞こえた

声が聞こえた方向を見ると、赤いスーツを着た金髪の女性が居た

掛けている眼鏡と微笑みからは、出来る女性を彷彿させる

よく見れば、左手首には登録魔属を示す腕輪がある

だが、この時明久は剣士としての勘故か

その女性を、信用してはいけないと思った

 

「私は叶瀬賢生の補佐をしています、ベアトリス・バスラーと申します」

 

とベアトリスは名乗りながら、頭を下げた

すると雪菜が

 

「私は獅子王機関の剣巫。姫柊雪菜です」

 

と名乗った

それに続いて

 

「彩海学園の吉井明久です」

 

と、明久も名乗った

すると、ベアトリスが

 

「姫柊雪菜様と吉井明久様ですね? 申し訳ありませんが、叶瀬賢生はただ今、当社私有地にて実験をしておりまして、不在なんです」

 

と説明した

 

「私有地?」

 

「はい。敷地内の滑走路から出ますセスナに乗りまして、少し離れた海上の無人島です」

 

雪菜が問い掛けると、ベアトリスはそう答えた

それを聞いて、雪菜は少し頬をひくつかせて

 

「何時戻るか、分かりますか?」

 

と問い掛けた

するとベアトリスは、軽く頭を下げながら

 

「申し訳ありませんが、何時戻るかは私も分かりません」

 

と言った

続けて

 

「叶瀬賢生は、研究が一段落するまで、長期で研究室に籠ることがザラですので、何時戻るというのは、確約出来ません」

 

と言った

それを聞いて、雪菜は顎に手を当てて黙考を始めた

すると、ベアトリスが

 

「なんでしたら、直接行かれますか?」

 

と問い掛けた

それを聞いた雪菜は、驚いた表情で

 

「いいんですか?」

 

と返した

すると、ベアトリスは微笑みながら

 

「はい。政府直轄機関の方を無下には出来ませんから」

 

と答えた

それを聞いた雪菜は、少しすると

 

「では、お願いします」

 

と言った

それを聞いたベアトリスは、僅かに口端を上げて

 

「承りました。手続きをしてきますので、少々お待ちくださいませ」

 

と言って去った

それから数分後、二人はベアトリスに案内されて一機のセスナの所に着いた

そのセスナに背中を預ける形で、一人の男が待っていた

身長は、約180

髪はボサボサで、革のジャンパーを着ている

 

「紹介します、こちらはこのセスナのパイロットを勤めます」

 

「ロウ・キリシマだ。よろしくな」

 

と男

ロウは言って、右手を出した

そのロウの右手首に、登録魔属を示す腕輪が見えた

 

「姫柊雪菜です」

 

「吉井明久です」

 

二人が握手すると、ロウはセスナの後部ドアを開けて

 

「乗りな。直ぐに出るからよ」

 

と言った

そう言われた二人が座席に座ると、ロウは後部ドアを閉めてから運転席に座った

そして、セスナは発進した

 

「大体、数十分で着くからな!」

 

とロウは言ってきた

 

「わかりました!」

 

と明久は返答すると、視線を雪菜に向けた

何故なら、発進してから、雪菜はずっと黙っていたからだ

雪菜は硬い表情で

 

「大丈夫……大丈夫……」

 

と繰り返し呟いていた

そして、外を見ようともしなかった

それを見た明久は、少し考えてから

 

「雪菜ちゃん、もしかして……飛行機が苦手なの?」

 

と問い掛けた

すると雪菜は、凄まじい勢いで明久に顔を向けて

 

「そ、そんなことはありません!」

 

と否定したが、その様子はどう見ても精一杯の我慢をしている子供だった

そんな雪菜が微笑ましかった明久は、雪菜の頭を優しく撫でた

すると、ロウが

 

「ああ、ちくしょう。羨ましいな、こんちきしょうめ!」

 

と叫んだ

今の明久と雪菜の姿は、どう見ても付き合い始めたカップルのそれである

それに気づいたのか、雪菜は顔を真っ赤にしてアワアワとしていた

すると

 

「見えたぜ、お二人さん! あの島だ!」

 

とロウが言った

明久が窓から先を見ると、小さな島が見えた

どうやら、そこらしい

 

「しっかり掴まってろよ? あの島の滑走路は、整地なんてされてねぇんだ」

 

とロウは言うと、着地態勢に入った

明久が手摺を掴むと、雪菜は明久に抱き付いた

そしてセスナは、ガタガタと揺れながら着地した

完全に止まると、ロウがドアを開けて

 

「着いたぜ。降りな」

 

と言った

言われた通り、明久と雪菜はセスナから降りた

そして、島を見た二人の第一印象は

 

《本当に、研究所があるの?》

 

だった

無理もない

木々が生い茂り、所々に建物が見えるが、ボロボロだからだ

二人が固まっていると、セスナが動き出した

 

「はい!?」

 

明久が振り向くと、ロウが

 

「悪いな! 恨むなら、B・Bを恨みな!」

 

と言って、飛び立った

それを見送った明久は

 

「しまった……罠だったかぁ……」

 

と額に手を当てた

そして二人は、この島で出会いをする


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