ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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見えた闇

「捕まえろって言われてもなぁ……」

 

と明久が頭を掻いていると、那月が指を鳴らした

その直後、那月の周囲から神々しい雰囲気の鎖が射出された

その鎖は、束縛の鎖(レージング)

神々が鍛えたとされる鎖で、簡単には切れない代物だ(一瞬、それを見た明久は身震いした)

それを那月は、亜空間を使って召喚

それで、飛び回っている二体を捕まえた

だが次の瞬間、驚くべき光景が見えた

なんと、片方が鎖を引きちぎったのだ

 

「嘘!? あれが千切れるなんて!?」

 

「ちいっ!?」

 

明久は驚き、那月は舌打ちした

しかもその余波で、もう一体を縛っていた鎖も千切れた

その直後、その二体の戦闘で近くの鉄塔の一部が破損

鉄塔はバランスを失い、崩れ始めた

だがその直後、那月が再び鎖を召喚

鉄塔の崩壊を防いだ

すると、那月が

 

「吉井! 手段は問わん! どちらか片方でも捕まえろ! 私は鉄塔のバランスを保つ!」

 

と言って、姿を消した

それを聞いて、明久は深々と溜め息を吐きながら

 

「やるしかないな……」

 

と言いながら、念の為にと持ってきていたケースを下ろした

そして中から、それを取り出した

長さ1、6mに達する刀を

分類的には、ギリギリ野太刀に類する刀だ

普通の野太刀は、約20kg程だ

しかし、明久が持っている野太刀は約倍の45kgある

明久がそれを片手で持つと、雪菜が

 

「先輩、その刀……もしや、火車切広光(かしゃぎりひろみつ)では?」

 

と恐る恐る問い掛けた

明久はそれを肩に担ぎながら

 

「あ、知ってたんだ。その通りだよ」

 

と肯定した

火車切広光

その刀はその昔、火車を切り捨てたという伝説を持つ刀だ

火車というのは、本来ならば悪さをした死者を焼きながら地獄に運ぶ役割の妖怪だ

だが、その切られた火車は生きた人々を焼きながら走っていた火車だった

それを討つために、ある武将がその野太刀を持ち出し、切り捨てたらしい

討ったのは、土御門に連なる一族だった

しかしその一族は禁忌に手を出し、人から鬼に堕ちた

結果、土御門宗家が動き、ある意味内乱になった

その戦闘で、火車切広光が喪失

明久の父親は、それを発見

明久に管理を任せたのだ

 

「本当、父さんってば……フラっと帰ってきたかと思ったら、簡単に置いてくんだ……仕舞う場所、大変なんだよね……」

 

明久はそう言うと、自身の唇を軽く噛んだ

それにより、吸血鬼としての身体能力が解放された

すると、明久は

 

「雪菜ちゃん、準備は?」

 

と問い掛けた

すると雪菜は、雪霞狼をクルクルと回してから

 

「何時でも大丈夫です」

 

と答えた

それを聞いて、明久は頷くと

 

「じゃあ……行くよ!」

 

と言って、跳んだ

お誂え向きに、空中には那月が張った鎖がある

明久と雪菜は鎖の上に着地すると、一気に駆け出した

どういう訳か、二体は鉄塔の周囲で戦っている

鉄塔に渡れば、二体の近くに行けると判断したのだ

そして二人で到着すると、対象を探した

その時だった

 

「先輩!」

 

と雪菜が、明久を突き飛ばした

 

「おろっ!?」

 

明久と雪菜は一緒に転がり、通路に倒れた

その直後、先程まで明久が居た場所を何かが通り過ぎた

明久が頭を上げると見えたのは、二体がもつれあうようになって、一つ下の通路に居たのだ

片方は黒髪で、もう片方は銀髪だった

その時だった

銀髪の個体が、黒髪の個体の翼を切り裂いた

 

「血が出ない……肉体的には繋がってないのか……」

 

と明久が言った直後、その銀髪の個体が黒髪の個体の腹部に噛みつき、捕食を始めたのだ

 

「なっ!?」

 

「あれは……霊的器官を取り込んでる!?」

 

明久と雪菜が驚いた

その時、銀髪の個体の顏に着いていた仮面が壊れて、顏が見えた

 

「そ、そんな……!?」

 

「か、夏音ちゃん!?」

 

その正体は、中等部の聖女

叶瀬夏音だった

結局、明久と雪菜は見ていることしか出来なかった

 

「もう一体には、逃げられた……か」

 

「すいません、南宮先生……」

 

「いや、構わん……もう一体を捕獲出来たしな」

 

雪菜の謝罪に那月はそう言うと、救急車に入れられていくもう一体を見た

腹部に怪我は負ったものの、生きているらしい

そして那月は、ある物を取り出した

それは、砕けた仮面の一部だった

その裏面には、不思議な模様が書かれていた

 

「それで、本当にもう一体の顏は見ていないんだな?」

 

「は、はい……見てません」

 

那月の問い掛けに、雪菜はそう答えた

因みに、報告しているのは雪菜だけだ

明久は嘘が吐けないので、トイレに行っていることにしている

雪菜の報告を聞いて、那月はしばらく雪菜の顏を見ていたが、溜め息を吐いて

 

「まあ、いいだろう。あのバカと一緒に帰ってよし」

 

と言うと、管理公社の人間に持っていた破片を渡した

 

「はい、失礼します」

 

雪菜はそう一礼すると、そこから離れた

そして、ある場所に着くと

 

「先輩、なんとか誤魔化せました」

 

とそこに居た明久に言った

 

「ん、ありがとうね、雪菜ちゃん」

 

明久はそう言うと、ある物を手渡した

 

「あ、これ……」

 

「射的でゲット」

 

それは、誤魔化してくれた雪菜に対しての謝礼だった

猫のキーホルダーだ

そして明久は立ち上がると、月を見上げて

 

「さて、調べないとね……」

 

と言った

そして、事件の中枢に近づく


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