ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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出会い

「暑い……焼ける……溶ける……灰になる……」

 

最早お決まりの台詞を言いながら、明久は学校に登校していた

その両隣には、雪菜と凪沙の姿もある

絃神島はあれからは一応の平和を保っていた

明久達は普通に過ごし、普通に登校していた(成績はギリギリだが)

 

「今日は暑いですね……」

 

「だね……」

 

流石に暑さに参ったのか、雪菜と凪沙の二人はハンカチで汗を拭いている

球技大会も問題なく終わった(結果は聞かないでほしい)

校門に入れば、生徒達が挨拶を交わしている

明久は下駄箱から上履きを取って履き替えると、廊下に出た

その時

 

「あ」

 

と雪菜の声が聞こえた

見てみると、雪菜の下駄箱の中から凄まじい数の便箋が溢れてきていた

全て、ラブレターなのだろう

 

「相変わらず、凄い数だね。雪菜ちゃん」

 

「ええ……」

 

明久の言葉に頷きながら、雪菜は鞄の中から出した紙袋にラブレターを入れていく

雪菜は全て読むつもりである

そして、真摯に受け止めたうえで、振るのである

今の自分には、それよりも優先すべきことがあると

 

(まあ、雪菜ちゃんは掛け値無しの美少女だしね……気持ちは分かる)

 

明久はそう思いながら、少し前を思い出した

約一ヶ月前、雪菜に強引に迫った輩が居た

サッカー部所属で、校内でもかなりイケメンと知られている男子だった

しかし、同時にかなり女遊びをしているとも噂されていた男子だった

その男子からの告白も、雪菜は振っている

すると、こともあろうにその男子は雪菜に襲いかかったのだ

そして、その男子は……大変なことになった

具体的な表現は避けるが、病院に入院している

今もだ

これに関して、雪菜も少しやり過ぎたと反省しているが、見ていた明久からしたら自業自得としか言えなかった

その後、その男子のやっていたこと全てが露見

その男子の評判は、地に落ちた

なんでも、サッカー部も強制退部になったらしい

閑話休題(話を戻して)

雪菜が紙袋に全てのラブレターを入れて立ち上がった時、明久は凪沙の姿が無いことに気づいた

 

「凪沙、どうしたの?」

 

明久はそう呼び掛けながら、凪沙の下駄箱の方に視線を向けた

その先では、凪沙の手に一通の便箋があった

 

「明久君……」

 

「あれま……」

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

時は経ち、昼休み

明久は校舎の屋上

その給水塔の影で寝ていた

ふとその時、明久は近くに人が来たことに気づいた

薄く目を開けると、雪菜の姿が見えた

 

「やっぱり、雪菜ちゃんか」

 

「探しましたよ、先輩」

 

雪菜はそう言うと、明久の隣に座った

 

「気にならないんですか? 凪沙ちゃんに来た手紙」

 

「んー……」

 

雪菜の言葉に、明久は気の無いような声を出した

 

「先輩っ」

 

「……まあ、気にならないって言ったら嘘になるけどさ……凪沙だって、もう中学生なんだ……彼氏の一人は居ても可笑しくないよ」

 

雪菜が責めるように声を上げると、明久はそう言った

雪菜の影に埋もれているが、凪沙も美少女だ

明久が知らないだけだが、中等部では凪沙も人気である

スタイル的には、所謂お子様体型だろう

しかし、その元気さに励まされているという男子が多数居る

特に凪沙は、チアリーディング部に所属している

運動部の男子達から人気なのだ

その時

 

「来てくれてありがとう、凪沙ちゃん」

 

と男子の声が聞こえた

 

「ここだったんかい……」

 

明久はそう言いながら、縁まで移動した

すると下に、凪沙と男子が居た

その二人の間には、段ボールがあって、中には

 

「ニャー」

 

「かわいい!!」

 

猫が居た

 

「猫かい!?」

 

それを見た明久は、思わず突っ込みを入れていた

 

「明久君……何してるの?」

 

気付けば、凪沙が明久を見上げていた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

そして放課後

 

「すいません、お兄さん。私のせいでした」

 

と明久に謝罪してきたのは、銀髪碧眼の美少女

叶瀬夏音(かなせかのん)

通称、中等部の聖女と呼ばれている少女である

 

「つまり、捨て猫が増えすぎたから、里親を探してたってことか」

 

「そうだよ」

 

明久の言葉を聞いて、凪沙が頷いた

 

「ごめんね、竹内君」

 

「まあ、あんな方法じゃあ誤解されますね」

 

明久は相手の男子

竹内正也(たけうちまさや)に謝罪した

彼は剣道剣術部時代の後輩である

人の良い少年で、彼も夏音からの相談に応じたようだ

その時、明久の妹を思い出したらしい

そして相談するために、凪沙の下駄箱に手紙を入れたらしい

 

「しかも、これでもまだ一部なんだ?」

 

「はい、そうなんでした」

 

明久の問い掛けに、夏音はそう言った

話を聞く限り、まだかなり居るらしい

学校に持ってきたのは、その一部らしい

その時

 

「知っているか、貴様ら。学校に動物の持ち込みは禁止されているぞ?」

 

と声が聞こえた

振り向くと、黒いゴスロリ服を着た少女教師

南宮那月が居た

 

「あ、那月ちゃん。づあ!?」

 

「吉井兄、お前はいい加減に学習しろ」

 

ちゃん付けした明久は、那月の空間魔術を使った衝撃攻撃で蹲っている

そんな明久を無視して、那月は夏音の持っている段ボールを覗き込んで

 

「という訳で、この猫は私が没収して夜食にしよう」

 

と言った

次の瞬間、夏音がその段ボールを抱えて震えている

しかも、涙目だ

 

「冗談なんだがな」

 

「冗談って分かりづらいんだよ。那月ちゃんは」

 

那月の言葉にそう言った直後、明久は再び衝撃攻撃を喰らって倒れた

 

「まあいい……今回は見逃してやるから、さっさと行け」

 

那月はそう言うと、校舎に戻っていった

そして明久は立ち上がると、夏音の後に付いていった


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