ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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さあ、開幕です


天使炎上編
序章


「があっ!?」

 

「アーロ!?」

 

燃え盛る船内の通路、そこで一人の騎士が倒れ、それをその騎士の上官

騎士団長が抱えた

しかし、数瞬した後に苦しそうな表情を浮かべると、その騎士の遺体を通路に横たえた

そして、キッと前方を睨み付けて

 

「貴様! この飛行船を我等、聖環騎士団旗艦ランヴァルドと知っての狼藉かぁ!!」

 

と怒声を張り上げた

前方に居るのは、騎士団長の部下を殺した敵が居た

長い金髪に、蠱惑的な肉体をライダースーツに包んだ女が

すると、その女は

 

「はあ……クソ怠いたらないわぁ……」

 

と気だるげに呟いた

そして、左手に持っていた長大な槍を無造作に肩に担ぐと

 

「別に、あんたらの事なんて、どうだっていいの……この飛行船であんたらが後生大事に匿ってるクソ雌ブタをさっさと明け渡せって言ってんのよ」

 

と告げた

それを聞いて、騎士団長は

 

「そう言われて、明け渡すかぁ!!」

 

と怒鳴ると、一気に肉薄して持っていた剣を振り下ろした

その斬撃速度は、通常の人間の速度を超越していた

その理由は、騎士団長が纏っていた甲冑にあった

その甲冑は彼の母国

アルディギア王国の技師達がその技術の粋を尽くして作り出した、騎士団長専用甲冑だった

騎士団長の高い剣術の技量と、高い霊力資質

その二つを活かせるように、何回も作り直した特注品だった

それを纏ってから、騎士団長は殆ど負け知らずだった

事実、騎士団長の剣速に敵の女は反応しきれていなかった

 

(取った!!)

 

と騎士団長が確信した瞬間、驚くべきことが起きた

甲高い音が鳴り響き、剣が弾かれたのだ

騎士団長は弾かれた勢いを利用し、後退

距離を取ると、剣を見て舌打ちした

剣の刀身にヒビが入っていたのだ

騎士団長はその剣を放すと、もう一本の剣を抜いた

そして、女を睨み付けて

 

「貴様、その槍……ただの槍ではないな……」

 

と問い掛けた

何故ならば、先程彼の斬撃を弾いたのは、勝手に伸びた槍だったからだ

女の技量ではない

 

自律武器(インテリジェンス・ウェポン)ってやつよ、知ってるでしょ?」

 

女の話を聞いて、騎士団長は敵の正体を察した

 

「吸血鬼か……」

 

女が担いでいるのは、眷獣なのだ

眷獣は何も、生物の形だけではないのだ

数少ないが、目の前の女のように武器型も存在しているのが確認されている

その時、女の背後に新たに敵が現れた

獣人の男だった

 

「B・B……してやられたよ。……目標(ターゲット)には逃げられた」

 

獣人の男はそう言うと、騎士団長の前に無造作に何かを投げた

それは、引きちぎられた首だった

最後まで奮闘したのだろう

その顏は傷だらけだった

 

「アーノルド……つっ!」

 

それは、ランヴァルドに乗っていた補佐官だった

補佐官もそれなりの腕を誇っていたが、獣人の男はかなりの腕のようだ

 

「何やってんのよ、アンタ……はあ、かっ怠い……」

 

「仕方ねぇだろ……この騎士、かなり強かったんだ。ポッドに乗って逃げられた」

 

その会話を聞いて、騎士団長は補佐官が任務を果たして殉職したことを察し、内心で称賛した

よくやったと

B・Bと呼ばれた女は、深々とため息を吐くと

 

「はあ……怠いわぁ……これ、残業代出るのかしら?」

 

と言いながら、腕時計を見た

 

「貴様ら……ただで帰れると思うなよ!」

 

騎士団長がそう言った直後、騎士団長が持っていた剣が眩く輝いた

その輝きに、二人は目を細め

 

「ヴェルンドシステムによる人工聖剣……流石は、旗艦ってやつね……そんな代物を搭載してたのね……」

 

「面倒な……」

 

と呟いた

ヴェルンドシステム

それは、アルディギア王国が誇る対魔族用戦闘システムだ

ただの剣や槍を聖剣や聖槍にまで引き上げるシステムである

それは、精霊炉が一定範囲内にないと使えないという制限があるが、一度発動すれば、無類の強さを誇るのだ

 

「確かにそれを出されたら、アタシ達は苦戦確実ね……だけど、残念でした……時間切れよ」

 

B・Bがそう言うと、獣人の男が近くの扉を蹴破った

そして、二人して飛び出した

 

「待て!!」

 

騎士団長は二人を追い、扉近くまできた

その時、騎士団長は頭上が明るく輝いていることに気付いて頭上に視線を向けた

その先に見えたのは、仮面を被った存在だった

その背には翼があり、神々しい光を放っていた

 

「あれは、まさか……天使!?」

 

その正体に騎士団長が気付いた直後、騎士団長の意識は消失した

それから数時間後、駆け付けた絃神島の警備隊が海域で見つけたのは、ランヴァルドの残骸だけだった


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