ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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交戦開始からの、落下。そして

長光を握った明久は、ナラクヴェーラ目掛けて駆け出した

ナラクヴェーラはそんな明久に気付いて、レーザーを撃ったが、明久は吸血鬼の身体能力を活かして回避

肉薄すると、長光を振るった

長光は魔殺しとして有名だが、斬鉄剣としても有名だった

魔殺しと斬鉄

その二つと更に明久の剣術家としての腕が合わさり、ナラクヴェーラの足を一本切断した

しかし、ナラクヴェーラは多脚式の兵器

一本切断したとて、他の足ですぐにバランスを調整

そして、前足を明久目掛けて振り下ろした

明久は初撃は避けたが、次撃

振り回しは避けられそうになかった

だがそれを、沙矢華が防いだ

~六式降魔機剣《デア・シュライフッツ》を振ったのだ

すると、その軌跡上でナラクヴェーラの前足が火花を散らしながら止まった

 

「これは……」

 

「煌火燐の空間切断術式……」

 

沙矢華はそう答えると、再び剣を振るった

次の瞬間、ナラクヴェーラのもう一本の足が切断された

 

「最強の楯と最強の切れ味……それが、煌火燐の能力よ!」

 

彼女がそう告げた直後、二本の前足を失ったナラクヴェーラは倒れた

 

「よし、これで!」

 

と明久は喜ぶが、それはすぐに驚愕に変わった

何故ならば、ナラクヴェーラの足が修復されたからだ

 

「そんな!? 増設島(サブフロート)の素材を吸収、物質変換して修復してる!?」

 

沙矢華が驚いている間にナラクヴェーラは立ち上がり、沙矢華を狙ってレーザーを発射した

 

「危ないっ!」

 

直撃する直前に明久が突飛ばしたから、沙矢華には当たらなかった

しかし、明久の左足が大きく抉れた

それを見て、沙矢華は顔を青ざめて

 

「あ、あんた……足が……」

 

と呟くが、明久はなんとか笑みを浮かべて

 

「僕なら、大丈夫……もう、再生するから……」

 

と答えた

事実、明久の左足は白煙を上げながら再生

明久はよろめきながら立ち上がった

すると、ナラクヴェーラは足を全て折り畳んでいた

 

「なんだ、あいつ……なにを?」

 

ナラクヴェーラが何をしようとしてるのか分からず、明久は首を傾げた

その時、ナラクヴェーラの胴体下部から炎が噴き出し、ナラクヴェーラが浮き上がった

 

「まさかあいつ、飛ぶつもり!?」

 

「させるか!」

 

沙矢華は驚き、明久は右腕を上げた

そして

 

疾く在れ(来い)! 五番目の眷獣! 獅子の黄金(レグルス・アウルム)!」

 

明久の右腕から放たれた濃密な雷撃は獅子を象り、空中に現れた

そして、明久が手を振り下ろしたら、獅子の黄金はナラクヴェーラに落雷した

その直後、増設島の表面が、割れた

 

「あ、やべ」

 

手加減を忘れていた明久が、思わず呟いたが、時既に遅しだ

ナラクヴェーラだけでなく、二人も増設島の中に落ちた

 

「この、バカーー!?」

 

「ごめんなさい!」

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「あんたね……私が居なかったら、瓦礫に潰されてたわよ?」

 

「返す言葉もありません」

 

沙矢華の苦情に、明久は軽く頭を下げた

なにせ、なんとか着地はしたものの、明久が破壊した増設島の表面が崩落してきたのだ

それを、沙矢華が剣を振って防いだのだ

空間切断術式による、切断断層の守り

そして、空間切断による切れ味

それを使って、瓦礫を防いだのだ

そして二人は今、脱出するための出口を探していた

 

「まったく……貴方に雪菜を任せるのは、やっぱり危ないわね」

 

そう苦言を呈したのだが、沙矢華は微笑んでいた

そして、捜しながら歩いてでいた時だった

 

「あのね……雪菜ちゃんから、聞いたんだ……煌坂さんが男嫌いになった理由を」

 

と言った

その瞬間、沙矢華の体が僅かに震えた

彼女が男嫌いになった理由

それは、虐待だった

巫女の素質を持つ少女というのは、得てして人並み外れたモノを持つ者が多い

容姿然り、能力然り

沙矢華は幼い頃から巫女としての能力が開花しており、それを気味悪がった父親が殴る蹴るの暴行を加えていたのだ

なお、母親は物心付いた頃から居なかった

それでも沙矢華は、何時か父親が優しく接してくれると信じていた

それが裏切られたのは、中学生になって少し経った時だった

ある日、沙矢華が学校から帰宅した時、父親が突如襲いかかったのだ

沙矢華は、当時から同年代の中でも抜きん出た容姿だった

そして父親は、そんな沙矢華を犯そうとしたのである

しかしそれは、タイミングよく来た警察によって防がれた

それは、通っていた学校の先生が沙矢華の体の痣に気付いて警察に通報していたのだ

虐待の疑いアリと

それが功をそうし、間一髪で間に合ったのだ

その後、沙矢華は警察に保護されて、児童相談所に預けられた

そこから更に、沙矢華の能力を知った獅子王機関が引き取ったのだ

そして、高神の杜で修練を積み重ね、舞威姫になったのだ

 

「ごめん……知ってたら、別の方法を考えたけど……」

 

「え? ……ああ、渡る時ね? いいわよ……それに、嬉しかったし」

 

沙矢華は最後を頬を染めながら言った

 

「へ? 嬉しかった?」

 

「ええ……ほら、私、大きいでしょ?」

 

と沙矢華は、何かを気にした様子で明久に問い掛けた

そして、明久は沙矢華の胸部を見て

 

「まあ、うん……大きいね」

 

と答えた

その直後、沙矢華は顔を真っ赤にしながら

 

「胸じゃないわよ! 背よ! 背!」

 

と明久に反論した

 

「え、あ、はい。すいません」

 

明久は一旦謝った後、沙矢華を見て

 

「そんなに、気にしなくていいんじゃない? 煌坂さん、いわゆるモデル美人なんだし」

 

と言った

それを聞いて、沙矢華は顔を真っ赤にしたまま固まった

 

「雪菜ちゃんは人形みたいな美少女で、煌坂さんはモデル美少女だね」

 

「あ、ありがとう……」

 

沙矢華はそう言うと、小さくくしゃみした

どうやら、今までで濡れたから体が冷えたらしい

 

「あ……これ着てて」

 

明久はそう言うと、着ていたジャージを差し出した

すると、沙矢華はプイとそっぽを向いて

 

「要らないわよ、あんたの汗が染み込んだジャージなんて。妊娠するわよ……それに、雪菜に悪いし」

 

と言った

それを聞いて、明久は

 

「いやいや、しないから。煌坂さんは吸血鬼をなんだと思ってるのさ」

 

と突っ込んだ

そして、真剣な表情を浮かべて

 

「それに、雪菜ちゃんは関係ないでしょ? 煌坂さんだって女の子なんだから、体を冷やしたら大変なんでしょ?」

 

と言った

それを聞いて、沙矢華は少ししてから

 

「……ありがとう」

 

と呟いてから、受け取った

そして、羽織った

その間に、明久は周囲の瓦礫を蹴ってどかしたりしながら

 

「獅子の黄金じゃあ、感電するだろうしなぁ……」

 

と呟いた

それを聞いた沙矢華は、何かを決心した様子で

 

「ねえ、吉井明久」

 

と、明久に声を掛けた

 

「うん? なに?」

 

「もしかして、新しい眷獣が欲しいのかしら?」

 

沙矢華の問い掛けに、明久は少し考えてから

 

「まあ、欲しくないって言ったらウソになるね……獅子の黄金は、現状じゃあ使えないし」

 

と答えた

すると、沙矢華は明久に抱き付いて

 

「だったら、私の血……吸う?」

 

と呟くように問い掛けた

 

「煌坂さん……?」

 

まさかそんな事を言うとは思わず、明久は固まった

そして、気付いた

彼女の体が、小さく震えていることに

 

「今の状況を打開するには、どう考えても貴方の力が必要……だけど、今の貴方の眷獣の中には最適な奴は居ない……だったら、新しい眷獣に賭けてみない?」

 

沙矢華はそう言いながら、着ていたワイシャツの胸元を開けた

そこに見えたのは、豊かな胸の谷間だった

明久は、少し間を置いてから

 

「いいの? 僕が、怖くないの?」

 

と問い掛けた

すると沙矢華は、優しく微笑みながら

 

「なんでかしらね……貴方は、怖くないの……」

 

と答えた

その答えを聞いて、明久は沙矢華を優しく抱き締めて

 

「僕、まだ大して経験無いから……痛くしたら、ごめんね」

 

と優しく囁いた

それを聞いて、沙矢華は小さく

 

「ん、大丈夫」

 

と答えた

その数秒後、二人の体は完全に重なり、艶やかな声が静かに聞こえた


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