ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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舞威姫の襲撃

時は経ち、放課後

明久は上にジャージを着て屋上に居た

なぜ屋上に居るのかと言うと、明久は浅葱と一緒にテニスの練習をしていたところだ

しかし、ペアの浅葱の姿はない

浅葱は今、購買まで飲み物を買いに行っている

明久はベンチに座って、グッタリしていた

はっきり言って、かなり暑いために体力の消耗が激しい

 

「あー………暑い、焼ける、溶ける、灰になる………」

 

明久はそう言いながら、空を見上げた

その時

 

「第四真祖、吉井明久!!」

 

と声を上げながら、一人の少女

煌坂紗矢華が、その手に剣を持っていた

 

「なんとおぉぉぉ!?」

 

明久は叫びながら、前に跳んで避けた

紗矢華が振るった剣により、明久が座っていたベンチは見事に真っ二つにされた

 

「えっ!? 煌坂さん!?」

 

明久が驚いていると、紗矢華はめり込んでいた剣を引き抜いて

 

「吉井明久………あんたが居ると、雪菜が危ないのよ」

 

と言って、再び剣を構えて

 

「だから……ここで死ねぇ! この欲情真祖!!」

 

「そっちが本音だよね!?」

 

明久はなんとか回避しながら、紗矢華を止めようと必死に考えた

だが、その直後

 

「あんたが居るだけで、雪菜が危険な場所に行くことになる! あんたさえ居なければ、私の雪菜はもっと安全な場所に居たはずなのよ!!」

 

という紗矢華の叫びを聞いて、明久の動きが止まった

紗矢華の言葉に、明久は動揺したのだ

確かに、そうかもしれないと

だが、今この時に限っては、致命的となってしまった

回避行動が鈍くなり、彼女が振るった剣が、明久の胸部を浅く切り裂いた

 

「しまっ……待って……」

 

明久はそう呟きながら、自身の体を抱き締めて固まった

 

「出てくるなぁぁぁぁぁっ!」

 

明久が叫んだ直後、明久の体から魔力の奔流が放たれた

それと同時に、明久の体から高周波が解き放たれた

 

「吉井明久!? 今すぐやめなさい!」

 

紗矢華はそう言うが、明久はこれ以上被害を広げないだけで精一杯だった

なにせ、今出ようとしているのは、明久が把握した眷獣ではないのだ

その証拠に放たれているのは、電撃ではなく高周波である

明久は今にも出ようとしている眷獣を必死に押さえ込んでいた

その時、ドアが開いて

 

「明久!? 何が起きてるの!?」

 

とタイミング悪く、浅葱が戻ってきた

そして浅葱は、剣を持っていた紗矢華に気づいて

 

「ちょっとあんた! その手の剣はなに!?」

 

と紗矢華に歩み寄った

その時、浅葱が来たことに明久が気づいて

 

「浅葱!? っつ! ヤバッ!?」

 

ほんの僅かだが、制御が甘くなった

その瞬間、更に強い魔力と高周波が放たれて浅葱は吹き飛んだ

 

「きゃっ!?」

 

吹き飛んだ浅葱は、壁にぶつかると気を失ったらしい

ぐったりと倒れた

 

「浅葱っ………つっ!」

 

明久はなんとか押さえ込もうとするが、一向に収まる気配がない

これ以上はマズイ

明久がそう思った

その時だった

 

「獅子の神子(みこ)たる高神の剣巫が願い奉る!」

 

制服のスカートを翻しながら、黒髪の少女がドアを開け放って現れた

現れた少女

雪菜は手に持った七式突撃降魔機槍

シュネーヴァルツァーを回しながら

 

「雪霞の神狼、千剣破(ちはや)の響きをもて楯と成し、兇変災禍を祓いたまえ!」

 

と祝詞を唱えると、ひび割れた屋上に穂先を軽く突き刺した

その直後、キィンという澄んだ音が響き渡るのと同時に、青白い光が一気に広がった

光が収まると、明久から吹き出していた魔力も収まっていた

魔力が収まり、明久は力なく座り込んだ

紗矢華も安堵したのか、座り込んだ

すると、雪菜が槍を引き抜きながら

 

「先輩。紗矢華さん…………何が起きたんですか?」

 

と二人に問い掛けた

その表情はかなり硬い

いや、はっきり言って怒っている

 

「あー……彼女がいきなり襲ってきてね」

 

「ち、違うのよ、雪菜!! この変態真祖が悪いのよ!?」

 

明久が紗矢華を指差して事実を言うと、紗矢華が明久を指差しながら喚いた

二人の言葉を聞いて現状を理解したのか、深々と溜め息を吐いた

そして、絶対零度の目で二人を見下ろして

 

「わかりました………私が藍羽先輩を保健室へ運びますから、お二人はここで座って反省しててくださいね」

 

雪菜はそう言うと、浅葱を背負った

紗矢華と明久の二人は、本能的に逆らえないと思った

そのタイミングで、息が荒い凪沙が現れて

 

「雪菜ちゃん……いきなり走り出して、どうしたの……って、なにこれ!? しかも、浅葱ちゃんどうしたの!? というか、そこの人! その剣なに!?」

 

と喚きだした

それを見て、雪菜は再び溜め息を吐いて

 

「いいですね。反省しててください」

 

と言うと、歩きだした

なお、槍は既に収納してある

凪沙はその雪菜の後に続こうとしたが、少しの間紗矢華を睨むと雪菜に続いた

そして場所は変わり、保健室

 

「診察を終了しました」

 

そう言ったのは、保健室に居なかった養護教諭の代わりに居た人形のような顔立ちのメイド服の上に白衣を着た少女

アスタルテだった

本来だったらアスタルテの居場所はこの保健室らしく、アスタルテの便利さに目を付けた那月が、自分用のメイドに無理矢理連れ出したらしい

アスタルテは元々、医療品メーカー用に設計された臨床試験用の人工生命体(ホムンクルス)である

医療活動に必要な知識は、標準装備(デフォルト)として遠隔記憶に焼き付けられている

免許取り立ての新人医師並の高度医療知識を備えているらしい

 

「衝撃波、および急激な気圧の変動による軽いショック症状と推定されます。後遺症の心配はありません。ただし、本日中は安静を保つことを推奨します」

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

アスタルテの説明を聞いて、雪菜はアスタルテに礼を言った

お礼を言われるとは思ってなかったのか、アスタルテは少し戸惑ってから

 

受諾(アクセプト)

 

と答えた

そして、強張っていた雪菜の頬から力が抜けて、柔らかさが戻った

浅葱に大きな怪我が無いというのは、何よりもの朗報だった

もし浅葱に大怪我があったり、何らかの障害が出たと聞いたら、明久が落ち込むと思っていたからだ

すると、雪菜の背後に居た凪沙が

 

「わあ……雪菜ちゃん、メイドさんだよ。メイドさん! なんでメイドさんが居るのかな? 新しい看護師さんなの? ねえ、そうなの?」

 

と矢継ぎ早に問い掛けた

 

「えーっと………」

 

どう答えたらいいのか分からず、雪菜は途方に暮れた

そして、どう答えたらいいのか分からなかった雪菜に代わって

 

「アスタルテは私が雇ったメイドだ。吉井凪沙」

 

と保健室に現れた那月が答えた

凪沙はきょとんとしてから、振り返って

 

「あ、南宮先生。いつもお兄ちゃんがお世話になってます。可愛いですね、その服」

 

「お前は兄貴と違って、礼儀をわきまえているな」

 

行儀よく頭を下げた凪沙を尊大に見返して、那月はふてぶてしく微笑みを浮かべた

唯我独尊を地でいく那月でも、服を褒められるのは嬉しいらしい

そして那月は、眠っている浅葱を見下ろして

 

「それで、この有り様は、お前の監督不行き届き、ということでいいのか、転校生?」

 

と雪菜に問い掛けた

 

「はい。すみません」

 

そして雪菜は、何の言い訳もしないで頭を下げた

それを聞いて、那月はつまらないと言わんばかりに鼻を鳴らして

 

「なら、後始末もお前に任せる。本当なら、吉井明久のバカを今からしばきにいくつものところだが、私は急ぎの用ができた」

 

と言った

すると、その用というのが分かったのか、雪菜の目付きが鋭くなり

 

「黒死皇派の潜伏場所が分かったんですか?」

 

と声を潜めて問い掛けた

 

「建設中の増設人工島(サブフロート)だそうだ。なんの捻りもない隠れ場所だな。気持ちは分かるが、余計な真似はしてくれるなよ。今回のテロリストどもの相手は警察局《うちら》の仕事だ」

 

那月の言葉に雪菜が頷くと、那月は悠然と微笑んで

 

「アスタルテは置いていく。看護の手が足りなければ、使っていいぞ」

 

と言うと、姿を消した

この後、この戦いの大きな転機を迎える


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