「行って！！」
ディセンバーの指示に従い、数多の眷獣が明久と雪菜に向けて殺到する。しかし
「させないわよ！」
「グレンダ！」
いつの間にか地上に降りた沙矢華が剣を振り回し、上から降ってきた氷の塊を破砕し、更に副次効果の空間断裂で防御。
グレンダは尻尾を振り回し、巨体の岩のゴーレムを弾き飛ばした。
「唯里！」
「合わせる！」
志緒に合わせ、唯里は剣を振るう。続々と討伐される眷獣達。しかし、四人の迎撃を突破し、数体が明久や雪菜に迫る。
「邪魔だ！」
「はあ！」
明久は左手の小太刀。鉋斬長光で炎の弾を切り裂き、突撃してきた水の猛禽類を雪菜が槍で斬った。
その勢いのまま、ディセンバーに迫る二人。そうしている間にも、少しずつだがディセンバーの気配が希薄になっていく。
明久は急ぎたいが、最悪はディセンバーの魅了で操られる可能性がある。
だが
「先輩！ 私が前に出ます！」
雪菜がそう言って、明久の前に出た。その狙いに気付き
「分かった！」
と雪菜の後ろに着いた。
「チッ！？」
それを見て、ディセンバーが舌打ちした。
雪菜の雪霞狼が発する神格振動波により、ディセンバーの魅了が無効化され、明久にまで届かないのだ。
勿論だが、雪菜も無効化される。たからディセンバーは、更に眷獣を差し向けようとしたが
「風水陣が！？」
上空に展開されていた魔法陣が、突如崩れて眷獣が無差別に暴れ始めた。
この時、浅葱が警備隊のネットワークを奪還し、ネットワークにばら蒔かれていたウィルスを駆逐。
更には千賀が那月と西村に敗れて、風水陣の制御に使われていた触媒が破壊されていたのだ。
その２つにより、魔族特区破壊の要たる風水陣が崩れ、風水陣が崩れた為に吸血鬼を操って無理やり召喚・使役していた術式も破壊されたので、眷獣達が無差別に暴れ始めたのだ。
その余波は廃棄区画だけでなく、明久達やディセンバーにまで及んだ。
明久や雪菜も対処するが、これまでに召喚された眷獣は数十体に登る。
その時
「志緒ちゃん！」
「ああ！」
唯里と志緒の二人は、突如としてそれぞれの武器を合わせた。元々、二人の武器。六式・改シリーズは扱いの難しかった沙矢華の煌崋燐を弓と剣という形に分離し、特化した武器である。
そして、普段から二人が常に行動しているのは、六式・改の
『六式・改、
２つの武器を合わせて、二人が息を合わせてコマンドを告げた。すると、２つの武器が合わさり変形し、まるでクロスボウを彷彿させる形になった。
しかし、絃を巻き上げる機構も矢も存在しない。
「
確かに、志緒の舞威姫としての総合能力は沙矢華には遠く及ばない。だが、それでも努力とある能力が買われて、六式・改の使い手に選ばれた。
それは、高い空間認識能力。
この時志緒の脳裏には、今この場所に存在している暴走中の眷獣の位置が把握されていた。
志緒は眷獣の位置を把握し終わると、クロスボウを眷獣達の居る上空に向けて
「空間消滅砲撃……発射！！」
まるで、光の槍が走ったかのように、明久には見えた。
放たれた光の槍は、空中で一気に拡散され、全ての暴走眷獣達を消滅させた。
正確には、居た空間そのもの諸ともに消え去ったのだ。
これを防ぎきれるのは、同じ空間消滅を司る眷獣か、雪菜の持つ七式しかない。
確かに六式・改は量産を前提にしたモデルだが、六式・改もまた対吸血鬼の真祖用の決戦兵器の一つなのだ。
これにより、明久達を遮る眷獣は消えた。
「今なら！」
「はい！」
二人は一気にディセンバーに向けて走り出し、ディセンバーは袖の中から数枚の札を取り出して障壁を展開した。
だが
「はああぁぁ！」
雪菜の一撃で全ての障壁が切り裂かれ
「……ごめんよ、ディセンバー」
明久の振るった村正・黄龍で斬られて、倒れた。