ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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最後の一人

アイランド・サウスの廃棄島。

本島からは切り離され、後は解体されるのを待つその島に、明久達は到着した。

その中心地点に、彼女。ディセンバーは居た。

 

「ディセンバー……」

 

「や……ようやく来たね」

 

明久と雪菜が対峙するが、ディセンバーは気負いした様子もなく、まるで久しぶりに再会した友人に接するような気安さで挨拶してきた。

 

「最後にもう一度聞くね……仲間にならない? 第四真祖」

 

「……ならない」

 

ディセンバーからの問い掛けに、明久は短く答えた。

その答えを予想していたらしいディセンバーは、仕方ないという様子で

 

「やっぱり、そうだよね……じゃあ、始めようか」

 

と言って、右手を高々と挙げた。すると、空中の魔法陣が光り輝いて、そこから数体の眷獣が姿を現した。

 

「なっ!? 眷獣!?」

 

「あの魔法陣が、眷獣を呼び寄せてるみたいです!」

 

喚ばれた眷獣は、若い世代から旧い世代まで様々だ。

そしてこの眷獣達は、絃神島に住んでいる吸血鬼達の眷獣を無理やり呼び出して使役している。

何故、そんな事が出来るのか。それは、人工島管理公社のネットワークにばら蒔かれたウィルスにより、登録魔族達の腕輪の管理システムをハッキング。

それにより、腕輪の魔力干渉を用いて吸血鬼達に無理やり眷獣を呼び出させて、魔法陣がその眷獣をこの地に転移させ、更には使役出来るようにしているのだ。

そして、絃神島に住んでいる吸血鬼は優に1000人に迫る。

 

「くそっ! 倒しても、キリがない!」

 

「あの魔法陣を、何とかしないと……!」

 

明久と雪菜は、刀と槍を振り回して次々と眷獣を対処していたが、魔法陣から次々と新たな眷獣が姿を現して、殺到してくる。

このままでは、数で圧倒されてしまう。

流石に不味い、と二人が内心で焦っていた時だった。一瞬だが、頭上を何か通過した。

 

「雪菜! バカ真祖!」

 

「ゆっきー! 明久君!」

 

「無事か!!」

 

頭上から呼ばれて、明久と雪菜は反射的に見上げた。

そこには、龍形態になったグレンダ。その背には、沙矢華、唯里、詩緒が居た。

彼女達は絃神島に入るのを拒んでいた風水陣を解除すると、グレンダの背に乗って絃神島に来たのだ。

拒んでいた風水陣を解除したとはいえ、方向感覚を惑わせる風水陣は健在。その風水陣を突破するには、音速近い速度で一気に飛ぶ必要があった。

しかし、戦闘機は様々な理由から無理。

だが、グレンダならば突破出来る。三人はグレンダに乗り、明久達の救援に来たのだ。

 

「皆……!」

 

「周りの眷獣は、私たちに任せなさい!」

 

「だから二人は、彼女を!」

 

着地した沙矢華達は、龍形態のままのグレンダと一緒に次々と襲い掛かる眷獣達と交戦開始した。

沙矢華と詩緒は、魔法陣に対して術で干渉を始めて、本当に少しだが眷獣の出現ペースが低下した。そして唯里がグレンダの背に乗り、剣で次々と眷獣を斬り捨てていく。中には高い機動力を持つ鳥型の眷獣も居るが、それはグレンダがブレスを吐いたり、爪で切り裂いたりしている。

これなら大丈夫と考えた二人は、ディセンバーに向かった。

 

「まさか、健人の風水陣を突破する奴が居るなんてね……!」

 

そう言いながらディセンバーは、何処からか古式拳銃を取り出して明久を狙って撃った。

だがその弾丸を明久は、村正・黄龍で斬った。

それを見て、ディセンバーは目を見開き

 

「魔法が発動しない!?」

 

と驚いていた。

 

「流石は、村正か……切れ味が良すぎて、魔法まで斬ったんだ……」

 

村正の鍛えた刀に共通するのは、よく斬れるという点にある。誰が鍛えたかは不明だが、黄龍もその点に漏れずに呪式銃の弾だけでなく、中に封印されていた魔法まで切断したようだ。

するとディセンバーは、弾が切れたからか呪式銃を投棄した。それを見た明久は

 

疾く在れ(こい)! 獅子の黄金!」

 

と眷獣を召喚した。廃棄区画だから、手加減の必要は無い。最大出力での召喚だった。しかし、ディセンバーの目が光り

 

「戻りなさい、獅子の黄金」

 

と呟いた直後、獅子の黄金が消えた。

 

「やはり、精神干渉……いえ、吸血鬼を代表する魅了」

 

それは、ある意味で吸血鬼を代表する能力の一つ。魅了だった。魅了の能力は、個体差が顕著で、目を向けただけで街一つを支配下に置くものから、一人の意識を混濁せる程度と様々である。

しかし、ディセンバーのはかなり強力な魅了になる。最大出力で召喚した第四真祖の眷獣を、目を合わせただけで支配下に置いたのだから。

 

「……確信したよ、ディセンバー……」

 

明久はそう言って、刀を持ってる腕を霞む速度で振るった。すると風の刃が、ディセンバーに迫る。それをディセンバーは、紙一重で回避したのだが帽子が飛んで、その帽子の下から短く切られているが、揺れる度にまるで炎のように色合いが変わる金髪が見えた。

 

「……君は……あの宴に参加してなかった焔光の夜伯……最後の一人なんだね」

 

ディセンバー

つまり、12番目の第四真祖だったのだ。


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