ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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千賀毅人

公園に居た明久達の前に現れたのは、人工生命体(ホムンクルス)の少年。ロギという名前の少年だった。

ロギは発火能力(パイロキネシス)持ちで、浅葱からの連絡では物資貯蔵庫の爆破はロギの犯行らしい。

最初は攻撃しようとした明久だったが、ロギの発火能力で民間人に攻撃する、と言われて止まった。

そして、千賀の居場所に連れていくというので、着いていった。

場所は、商業地区(アイランド・ウエスト)の裏通りにひっそりと建っていた《センガ・ペットクリニック》と書かれた看板が掛けられた建物だった。

 

「……動物病院?」

 

「まさか、ここに千賀って人が居るっての?」

 

雪菜と明久の言葉に、ロギは頷き

 

「そう。ここが、タルタロス・ラプスの隠れ家(セーフハウス)だよ」

 

と答えて、休診日という看板が掛けられているドアの鍵を開けて、中に入った。

明久と雪菜は罠を警戒しながらも、中に入った。

どうやら建物の見た目だけでなく、普通に動物病院としても開いているようで、待合室も何処にでもある病院のそれだった。

 

「まさか、こんな街中に……」

 

「病院なら、見慣れない人間が入っても怪しまれず、危険な薬品も簡単に仕入れられる。それなりに社会的信用もある。便利だろ?」

 

雪菜の言葉に、ロギは得意気な表情を浮かべていた。

確かに、その通りである。

医療用と言い張れば、持ち込む事も可能である。

 

「だけど、その隠れ家に僕達を連れてきていいのかな?」

 

「先生が決めた事だからね」

 

明久の問い掛けに答えながら、ロギは診察室のドアを開けた。

確かに、医師ならば先生と呼ばれても何ら不思議ではない。

診察室に入ると、待っていたのは椅子に座った中年男性だった。ヨレヨレの灰色のジャケットを着て、髪を長く伸ばしている。

明久達に気が付くと、男は愉しそうに目を細めた。

その目はまるで、知り合いの教え子を観察するような目付きだった。

 

「第四真祖に獅子王機関の剣巫か……よく来てくれた、礼を言おう」

 

「あんたが……千賀毅人か?」

 

敵意が一切感じられない態度と声に、若干戸惑いながらも明久は問い掛けた。

 

「そうだ」

 

「風水術を使って、絃神(この)島を封鎖したのも……」

 

「まあ、俺の仕事になるな」

 

明久の直球的な質問に、毅人は超然と答えた。

すると、毅人の背後のカーテンが揺れて、その向こうから小柄な少女が現れた。

ダブダブの厚手のコートを着て、長いマフラーを巻いている。

両手でトレイを持っており、その上にはアイスのカップが2つある。

 

「食べて」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「え、いいの、これ?」

 

雪菜もだが明久が躊躇っているのは、そのアイスカップの蓋には太字で《ディセンバーの!》と書かれてあるからだ。

 

「大丈夫。誰も気にしないから」

 

「あ、そうなんだ……」

 

そこまで言われたら断るのも失礼だろうと考えて、二人はアイスカップを取った。

それを確認した少女は無言で奥に消えた。

すると、毅人が

 

「タルタロス・ラプスの構成員が、子供ばかりなのが意外か?」

 

と明久に問い掛けてきて、その問い掛けに明久は、当然だろう、と毅人を睨んだ。

吸血鬼のディセンバーは除外し、ロギもだが今の少女は明らかに未成年だった。

すると毅人は、自虐的な笑みを浮かべ

 

「言い訳に聞こえるかもしれんが……俺は彼らに、タルタロス・ラプスである事を強制はしていない。魔族特区の破壊は、彼らが望んだことだ」

 

「貴方が、そう仕向けたんじゃないんですか……?」

 

毅人の言葉を聞いて、思わず雪菜が問い掛けた。

 

「何も知らない子供達に、テロリストとしての技能を覚えさせて……!」

 

「……獅子王機関に育てられた攻魔師(どうぐ)たる君が、それを非難するとは予想外だったな」

 

毅人のその言葉に、雪菜は動きを止めた。

光と影という差はあれど、雪菜とロギ達の境遇は鏡合わせのように似ていた。

雪菜は政府の特務機関に拾われて、剣巫になる為に特訓をしてきて、ロギ達は毅人に拾われてテロリストになった。

運命が違えば、真逆だったかもしれないのだ。

 

「……彼らは君と同じだよ、剣巫……彼らは、魔族特区の被害者なのだ」

 

そう言って、毅人はロギを見た。


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