公園に居た明久達の前に現れたのは、
ロギは
最初は攻撃しようとした明久だったが、ロギの発火能力で民間人に攻撃する、と言われて止まった。
そして、千賀の居場所に連れていくというので、着いていった。
場所は、
「……動物病院?」
「まさか、ここに千賀って人が居るっての?」
雪菜と明久の言葉に、ロギは頷き
「そう。ここが、タルタロス・ラプスの
と答えて、休診日という看板が掛けられているドアの鍵を開けて、中に入った。
明久と雪菜は罠を警戒しながらも、中に入った。
どうやら建物の見た目だけでなく、普通に動物病院としても開いているようで、待合室も何処にでもある病院のそれだった。
「まさか、こんな街中に……」
「病院なら、見慣れない人間が入っても怪しまれず、危険な薬品も簡単に仕入れられる。それなりに社会的信用もある。便利だろ?」
雪菜の言葉に、ロギは得意気な表情を浮かべていた。
確かに、その通りである。
医療用と言い張れば、持ち込む事も可能である。
「だけど、その隠れ家に僕達を連れてきていいのかな?」
「先生が決めた事だからね」
明久の問い掛けに答えながら、ロギは診察室のドアを開けた。
確かに、医師ならば先生と呼ばれても何ら不思議ではない。
診察室に入ると、待っていたのは椅子に座った中年男性だった。ヨレヨレの灰色のジャケットを着て、髪を長く伸ばしている。
明久達に気が付くと、男は愉しそうに目を細めた。
その目はまるで、知り合いの教え子を観察するような目付きだった。
「第四真祖に獅子王機関の剣巫か……よく来てくれた、礼を言おう」
「あんたが……千賀毅人か?」
敵意が一切感じられない態度と声に、若干戸惑いながらも明久は問い掛けた。
「そうだ」
「風水術を使って、
「まあ、俺の仕事になるな」
明久の直球的な質問に、毅人は超然と答えた。
すると、毅人の背後のカーテンが揺れて、その向こうから小柄な少女が現れた。
ダブダブの厚手のコートを着て、長いマフラーを巻いている。
両手でトレイを持っており、その上にはアイスのカップが2つある。
「食べて」
「あ、ありがとうございます……」
「え、いいの、これ?」
雪菜もだが明久が躊躇っているのは、そのアイスカップの蓋には太字で《ディセンバーの!》と書かれてあるからだ。
「大丈夫。誰も気にしないから」
「あ、そうなんだ……」
そこまで言われたら断るのも失礼だろうと考えて、二人はアイスカップを取った。
それを確認した少女は無言で奥に消えた。
すると、毅人が
「タルタロス・ラプスの構成員が、子供ばかりなのが意外か?」
と明久に問い掛けてきて、その問い掛けに明久は、当然だろう、と毅人を睨んだ。
吸血鬼のディセンバーは除外し、ロギもだが今の少女は明らかに未成年だった。
すると毅人は、自虐的な笑みを浮かべ
「言い訳に聞こえるかもしれんが……俺は彼らに、タルタロス・ラプスである事を強制はしていない。魔族特区の破壊は、彼らが望んだことだ」
「貴方が、そう仕向けたんじゃないんですか……?」
毅人の言葉を聞いて、思わず雪菜が問い掛けた。
「何も知らない子供達に、テロリストとしての技能を覚えさせて……!」
「……獅子王機関に育てられた
毅人のその言葉に、雪菜は動きを止めた。
光と影という差はあれど、雪菜とロギ達の境遇は鏡合わせのように似ていた。
雪菜は政府の特務機関に拾われて、剣巫になる為に特訓をしてきて、ロギ達は毅人に拾われてテロリストになった。
運命が違えば、真逆だったかもしれないのだ。
「……彼らは君と同じだよ、剣巫……彼らは、魔族特区の被害者なのだ」
そう言って、毅人はロギを見た。