非常に短いです
狙撃で那月が一時的に行動不能に追い込まれたが、明久と雪菜はディセンバーを追った。
だが、懸念事項があった。それは
「先輩……」
「うん……何故か、ディセンバーに眷獣が操られた」
それはディセンバーと相対した時、明久は先手を打って獅子の黄金を放った。しかしディセンバーが何か呟くと、獅子の黄金が消えたのだ。
それに明久が驚き固まっていると、カーリからの狙撃が明久に襲い掛かった。しかし初撃は、雪菜の霊視と卓越した槍捌きで防いだ。
次弾は雪菜を狙ったのだが、それは明久が刀で斬り捨てた。
そして、眷獣が効かないという理由から明久が攻めあぐねていると、ディセンバーは後退した。
追い掛けようとしたが、頭痛が激しくなったために明久の動きが止まり、見失ってしまった。
問題は、(一応仮にも)真祖たる明久の眷獣が操られた事。それはつまり、ディセンバーも真祖級の能力。または、眷獣を有している証明になる。
そして何より、ディセンバーを見ていたら頭痛がした。
それはつまり
「……もしかして……ディセンバーは……」
「先輩?」
「ううん、なんでもない……」
明久の呟きが聞こえた雪菜が顔を向けるが、明久は片手を上げて止めた。今は何より、ディセンバーを見つける事が最優先になる。
でなければ、絃神島が滅ぶ。
「急ぐよ、雪菜ちゃん!」
「はい!」
雪菜の返事の直後、二人は一気に加速した。
ほぼ同時刻、Eゲートからキーストーンゲートに入った浅葱は公開されている最下層よ更に下。第0層のCに入っていた。
絃神島のメインサーバーと直接繋がっているCの事を浅葱は、その狭さから
「あーもう……ここが一番安全だっていうのは分かるけど……もう少し、広く出来ない訳?」
広さとしたら、約9畳あるか無いかという位で、その半分以上がパソコンで埋められている為に、浅葱からしたら息苦しさすら感じる程に狭いと思っていたのだ。
『しょうがないだろ? 絃神島のメインサーバーを守るのが主目的で、使える人員は二の次になったんだから』
「あのね……私からしたら、壊れたら新しいのを導入すれば良いのよ! その方が、こんな棺桶より安上がりよ!」
『酷い事を軽く言うね……』
浅葱の言葉を聞いて、モグワイは泣くようなモーションをした。本当に一々人間臭いAIアバターである。
しかし浅葱は、そんなモグワイを無視して
「それより、早く相手がネットワークに放ったウィルスを除去しないとね」
と言って、両手の指を解し始めた。
だがモグワイが
『いやいや、もっと確実な方法があるぜ?』
「え?」
モグワイの言葉に浅葱が首を傾げた直後、天井が開いて何かが降りてきて、そこで浅葱の意識が無くなった。
これが後に、浅葱を巡る戦いの幕開けになるが、明久は知るよしが無い。
そして舞台は、廃棄区画に移り、そこで明久は今まで見つからなかった存在に出会う事になる。