ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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帰路にて

「やれやれ……凪沙を連れて帰ろうと思った筈なのに……どうして、こうなったんだか……」

 

そう呟いたのは、ラ・フォリアの飛行船に乗っている明久だった。戦闘終了後、ラ・フォリアが氷付けにした安座間を回収するついでに、明久達を乗せてくれたのだ。

 

「そうですね……流石に、疲れました……」

 

そんな明久に同意したのは、隣に居る雪菜だ。雪菜も相当に疲れたらしく、椅子の背もたれに体を預けている。

因みに、大きめのソファーにグレンダと唯里が居るのだが、二人して寝ている。

 

「明久。あれは、絃神島(貴方の所)の人では?」

 

ラ・フォリアのその言葉に、明久はラ・フォリアから双眼鏡を受け取り、下を見た。確かに、赤い多脚戦車に乗った浅葱の姿があった。

 

「あ、本当だ……」

 

「ついでに、回収しましょうか……艦長」

 

「アイ・マム!」

 

艦長と呼ばれた厳つい男性は、威勢よく返答してから部下に飛行船を降下させるように命じた。

それから、十数分後

 

「……なんて格好なの、浅葱」

 

「好きで着てるんじゃないのよ!?」

 

まるで競泳水着を彷彿させる格好の浅葱に、明久は突っ込みを入れて、浅葱は顔を赤くしていた。

余談だが、スタイルの良さが際立つ格好なので、浅葱のスタイルの良さに雪菜が無の表情になっているのだが、明久は気付いていない。

その時明久は、多脚戦車の中から出てきたリディアーヌともう一人に気付いた。リディアーヌは、一度絃神島で会った為に知っていたが、もう一人。

イブリスベール・アズィーズを見て、首を傾げた。すると、雪菜が慌てた様子で

 

「先輩! 彼は、滅びの王朝の王直系のお一人。イブリスベール・アズィーズ殿下です!」

 

と説明した。雪菜の説明に、明久は驚いた表情で

 

「なんで、王家直系の吸血鬼(ヒト)が、一緒に……?」

 

と呟いた。

 

「なにな、ちょっとした目的があってな……まあ、その目的も今達成したが」

 

イブリスベールはそう言って、ククッと笑った。

明久には分からなかったが、イブリスベールの目的は第四真祖たる明久を見に来たのだ。

ただ、絃神島に入るには一度日本本土に入らねばならず、日本本土に来たのだから、ついでに観光するか、という形で歩いていたら、今回の事態に遭遇したのである。

それはさておき、飛行船のクルーが用意してくれた上着を羽織った浅葱が

 

「それより明久、どうやって絃神島に戻るのよ!」

 

「へ?」

 

浅葱の言葉の意味が分からず、明久は首を傾げた。すると、雪菜が

 

「そうですよ、先輩! 私達、絃神島から正規手順を踏まずに日本本土に来たんでした!」

 

と思い出したように言って、明久も理解した。

確かに、明久達は一切正規手順を踏まないで絃神島を出て、日本本土に渡ったのだ。

もしノコノコと帰ったら、即座に拘束されるだろう。

明久が頭を抱えて唸っていると、ラ・フォリアが笑みを浮かべて

 

「それでしたら、問題は無いかと……」

 

と言って、明久達に端末を差し出した。困惑しながらも受け取ると、画面に表示されているのはメールだったのだが、内容は

 

『殿下のご指示に従い、絃神島の出入国管理センターのデータを書き換えておきました。第四真祖様、剣巫様、藍羽浅葱様のお三方は、正規手順を踏んで、日本本土に渡ったことになりました』

 

と書いてあった。メールの送り主は、絃神島で夏音の護衛の任務に就いているユスティナ・カタヤだった。

なるほど、忍者フリークの彼女ならば潜入もこなすだろうと明久は思った。

そして、ユスティナに絃神島の出入国管理センターのデータ書き換えを指示したのは、他ならぬラ・フォリアだと言うことを理解した三人は

 

『大変、ありがとうございました』

 

と口を揃えて、ラ・フォリアに感謝した。

すると、ラ・フォリアは

 

「ということですので、絃神島まではゆっくりしていってください。艦長」

 

「アイ・マム! 空きの客室にご案内させましょう」

 

ラ・フォリアの意図を汲み、艦長は無線を使って案内要員を呼び、それにより明久達とイブリスベールは空きの客室に案内された。

その後、寝ようとした明久の部屋にラ・フォリアが現れてすったもんだ起きたのだが、詳細は割愛させていただく。

こうして、凪沙を巡る戦いは幕を下ろした。

余談だが、その凪沙は獅子王機関が責任を持って絃神島に送ると言い、牙城は深森さんに殺されると怯えながらも、近くのある企業(MAR)傘下の病院に運ばれていたりする。


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