ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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決着

明久の袈裟斬りで、安座間が持っていた突撃槍は半ばから切断され、穂先は地面に落ちていく。それを安座間は、信じられないといった様子で視線が追う。

そしてその隙を、明久は見逃さずに返す刃で腰から肩まで切り裂いた。

その身から流れるのは、先に倒した自衛隊隊員とは違って赤い血だった。どうやら、体は普通の人間らしい。

出血量から考えて、今すぐに治療しないと助からないだろう。そう考えた明久は、刀を突きつけながら

 

「……今投降するなら、命は助けるけど」

 

と投降するように促した。

明久としても、むやみやたらに命を奪うつもりは無いのだ。出来ることなら、殺さないで終わらせたいのが本音だ。

だが安座間は、投降を促した明久を鋭く睨み付けて

 

「……我らが神に誓い、投降はせん!!」

 

と言うと、突撃槍の柄を構えた。それを見た明久は、その柄で戦うのかと思ったが

 

「ふんっ!!」

 

「なっ!?」

 

なんと安座間は、その柄を自身に刺したのである。

まさか自決か、と最初は思っていた明久だったが、突撃槍が脈動し、安座間の体に同化を始めたことに気付いた。

 

「な、なんだ!?」

 

「先輩、下がってください!」

 

明久は驚きながらも、雪菜の言葉に従って後退した。

すると、安座間の姿がみるみると変貌していく。

巨大化し、最早人とは呼べない見た目に変わっていく。

 

「なんだ、あれは!?」

 

「恐らくですが、あの槍によって吸収された生物と融合したんだと思われます! ワイバーンもヒュドラも、あの槍の能力で作り出されたのかと!」

 

明久が混乱していると、駆け寄ってきた雪菜が推測混じりに告げた。そして、雪菜の推測は当たりだった。

安座間が持っていた突撃槍は、刺した対象の情報を吸収し、融合する能力が備わっている。能力はそれ一つだけではないが、今回はそれが中心になっている。

今まで安座間は、様々な物の情報を吸収し、使用してきた。

今回は、自分自身に今まで突撃槍で吸収してきた全ての情報を流し込み、融合したのだ。

しかし代償として、最早理性は無くなり、本能に従って暴れ始め、その醜悪な見た目と相まって怪物としか言い様がなかった。

 

「くっ……! 攻撃範囲が広い!?」

 

やはり巨体な為に、その攻撃範囲も常軌を逸しており、簡単には近づけない。そこに、ヒュドラ擬きを倒した唯里も来て

 

「援護します!」

 

と言って、術式を放った。

巨体だから攻撃範囲は広いが、動き自体はそこまで早くないので避けられる心配は無い。だが、唯里が放った術式は黒いオーラで弾かれた。

 

「あのオーラは!?」

 

異郷(オド)!? あれでは、私達の攻撃は効きません!」

 

雪菜と唯里は、化け物から放たれた異郷の砲弾を回避する為に、一気に後退。それと入れ替わるように、龍形態のグレンダが突撃。尻尾で叩いたが、大して効いてるようには見えない。

やはり巨体なだけあり、生半可な攻撃は大して効かないようだ。

 

「あれを倒すには……」

 

「術式ではなく、単純な物理攻撃……それも、対艦クラスの攻撃力が必要かも……」

 

今の自分達の攻撃では、倒せる可能性は皆無と考えた雪菜と唯里は必死に頭を回していた。その時、明久が前に出て

 

「……本当、いいタイミングでこの眷獣を掌握したよ」

 

と言って、左腕を高々と掲げた。

 

焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)の血脈を継ぎし者! 吉井明久が、汝の枷を解き放つ! 疾く在れ(こい)! 二番目の眷獣、牛頭王の琥珀(コルタウリ・スキヌム)!!」

 

明久が掲げた左腕からマグマを彷彿させる血が溢れ、それが優に10mを越える溶岩で形成された牛頭の眷獣が現れた。

 

「あれは……新しい眷獣!?」

 

「これが、第四真祖の眷獣……!?」

 

雪菜は新しい眷獣だった事に驚き、唯里は眷獣から感じる凄まじい魔力に驚いた。

2つの巨大な存在が相対する様は、まるで怪獣大決戦のようだが、そんなことを気にする余裕は今の明久には無い。

 

「やれ、牛頭王の琥珀!!」

 

明久が指示すると、牛頭王の琥珀は咆哮を上げ、その手に持っていた戦斧を地面に振り下ろした。

眷獣自体は魔力で構成されているので、普通に攻撃したのでは異郷のオーラを突破出来ない。どうするのかと思っていたら、戦斧を振り下ろした場所から溶岩で形成された槍が幾つも隆起し、次々と化け物に向かっていった。

 

「溶岩で形成された槍!?」

 

「この熱さ……本物の溶岩を使ってる!?」

 

牛頭王の琥珀の能力は、魔力で地面を溶岩に変えた後、その溶岩を槍の形にして相手に放つのだ。

その能力は、今までの眷獣とは気色が違うが、物理的破壊力は正に災害級になる。

巨大な溶岩の槍という単純な破壊力もだが、最低でも対象の半径数百mは溶岩の海に変わるのだ。

そして、物理攻撃ならば異郷のオーラも関係なく貫通する。

化け物は槍による破壊と、溶岩の海によって焼かれて苦痛の雄叫びを上げている。

化け物も反撃にその巨腕を振るうが、地中から隆起した溶岩の槍が刺さって止められ、更に破壊される。

その後、同じようにもう片方の腕も破壊され、最早攻撃手段は残されていない。

その時、化け物の姿が崩れ始めたのだ。

しかも、下からも溶け始めている。

 

「終わり……かな……」

 

明久がそう呟いた時、驚くべきものが見えた。

なんと、崩れていた化け物の胸辺りに、安座間の姿が見えたのだ。

 

「なっ!? 安座間三佐!?」

 

「先輩!!」

 

「助けたいけど……!」

 

既に、牛頭王の琥珀の召喚は解除している。しかし、溶岩の海は簡単には消えない。

明久にもどうする事も出来ず、それは雪菜と唯里も同じで、諦めるしかないのか、と三人は思っていた。

その時、頭上から

 

『私にお任せを、明久』

 

と声が聞こえて、三人は頭上を見上げた。

明久達の直上に、一隻の白亜の装甲飛行船が飛んでいた。その飛行船を、明久は知っている。

 

「あれは……ラ・フォリアの!」

 

それは、アルディギア王国のラ・フォリア座乗飛行船に他ならず、それを証明するように、ラ・フォリアが飛び降りた。

雪菜と唯里は驚くが、明久は気付いていた。その身から、神々しい光が溢れている(・・・・・・・・・・・)ことに。

すると、ラ・フォリアの背中から翼が現れて、浮遊を開始。そしてラ・フォリアは、その手に呪式銃を持ち、撃った。

ラ・フォリアが撃ったのは、氷結地獄(ニブルヘイム)を封じ込めた弾であり、その効果は一気に解放された。

みるみると溶岩の海が凍りつき、そして崩壊していた化け物の体も、安座間諸とも凍りついたのだ。

それを見た三人が安堵していると、ラ・フォリアがゆっくりと明久の隣に着地し

 

「最後でしたが、お手伝い出来て良かったですよ、明久」

 

と朗らかに告げた。

こうして、咎神の騎士との戦いは終わったのだった。


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