初撃は、安座間の後ろに居たヒュドラモドキだった。ヒュドラモドキは口を開き、炎弾を放った。
その狙いは、明久。
「ここは、私が!」
そう言って、唯里が前に出て
「六式改・剣……
2つに別たれた六式改の剣、その能力を起動させた。
六式改・剣の能力は、沙矢華の持つ
「はっ!!」
気合いと共に振り下ろした剣の軌跡に、空間切断術式による空間の断層が出来て、そこに飛来した炎弾は弾かれた。
「明久くん! あいつは、私がなんとかします!」
「だー!」
唯里はそう言って、動き始めていたヒュドラモドキに突撃を開始。それに同調して、グレンダが龍化して唯里の援護に動いた。
実はこの選択は、正解だった。ヒュドラモドキはワイバーンモドキと違い、聖殲派の騎士が騎乗していない為に異郷による防御が展開されない。だが、攻撃機としての装甲の堅さは健在なので、雪菜の雪霞狼では相性が悪いのだ。しかし、空間切断ならば装甲の堅さは関係無い。
ヒュドラモドキは全ての口を開き、次々と炎弾を放った。
だがその炎弾は、グレンダが腕を振り払って逸らされた。その間に、唯里は一本目の根元に踏み込み
「はああぁぁぁぁ!!」
気合い一閃、一撃で一本目を切り落とした。
僅かに時を戻し、グレンダが動いてそのグレンダを安座間達の視線がグレンダを追った瞬間、明久が動いた。
縮地で一瞬にして、安座間の乗っていたワイバーンモドキの頭の上に移動し
「なっ!?」
「落ちてもらうよ」
安座間が驚いている間に、ワイバーンモドキの首を切断。落ちる前にまた縮地で移動し、今度は沖山のワイバーンモドキの背中に着地。
「貴様!!」
「お前は、直接落ちろ!!」
沖山が振り向く前に、側頭部に思い切り蹴りを放って叩き落とした。それを確認してから、明久は直ぐにワイバーンモドキの首を切断して離脱した。
「先輩!」
「いくよ、雪菜ちゃん!!」
これで、対空戦を意識する必要は無くなった。やはり頭上を抑えられるというのは、戦略的にも意識的にもかなり不利なのだ。
言葉短くやり取りした直後、明久と雪菜は突撃した。雪菜は沖山に、明久は安座間である。
「来い、剣巫!」
「はああぁぁ!!」
なんとか立ち上がった沖山は、蹴りで砕かれた兜を放り投げると、杖を構えた。だがやはり、明久の蹴りが効いてるらしく、足が震えているのを雪菜は気付いていた。
だが、相手は戦闘のプロと言える自衛隊の特務仕官。
雪菜の一撃を、杖でなんとか受け止めた。
つばぜり合いになると、雪菜は
「……その杖が、異郷の道具なんですね? 安座間三佐のあの突撃槍もですか?」
と沖山に問い掛けた。
「その通りだが、我々の持つレプリカを三佐の持つオリジナルと一緒にするな……! 我々のは、三佐の持つオリジナルから能力の一部を与えられたに過ぎない……!」
雪の問い掛けに、沖山は押し返しながら答えた。
どうやら、先に死んだ聖殲派の自衛隊隊員の持っていた槍と沖山の持つ杖は、安座間が持つ槍から能力を与えられたレプリカらしい。
ということは、出力や能力は安座間が持つ槍の方が強力のようだ。
「私たちは、負ける訳にはいかないのだ……! この地球を、魔族共から取り戻す為にな!!」
「そうやって、排斥しようとするから……排斥する為に手段を選ばないから、貴女達はテロリストと呼ばれるんです!!」
魔族を見下す沖山に、雪菜も負けじと全身を呪力で強化し、沖山の腹に蹴りを入れた。
「ぐぅっ!?」
蹴りを叩き込まれた沖山は、明久の蹴りのダメージを有って両膝を突いた。その瞬間
「
全身の力を上乗せし、胸部に掌打を叩き込んだ。
魔族にも大打撃を与える一撃で、沖山は完全に意識を失い倒れ、杖を落とした。
雪菜は安座間に使われないようにと、杖に雪霞狼を叩き込んでへし折った。
(あの異郷というのが展開されなければ、雪霞狼も効くようですね……)
破壊出来たのを確認し、考察してから視線を明久の方に向けた。明久と安座間は激戦を繰り広げていた。
安座間は槍から次々と異郷の弾丸を放ち、明久はその弾を縮地と体さばきで回避しつつ接近を画策していた。
だが、安座間は練度の高い仕官であり、明久を近付けまいと動いていた。
槍から異郷の弾を放つだけでなく、時々拳銃を使ったりしていた。今のところ、明久はその全てを避けており、それで時間を稼がれていた。
もしかしたら、聖殲派の自衛隊隊員達が来るかもしれないと明久は思っていたが、実はその心配は無かった。
今から数十分前、聖殲派の自衛隊隊員達が布陣していた陣地を、ヴァトラーとラ・フォリアが襲撃していて、壊滅していたのだ。
ヴァトラーは未知の相手との戦いが目的だったが、ラ・フォリアは聖殲派の道具の回収が目的だった。
壊滅したことは、安座間も知らない。
だから明久は、少し強引に攻めることにした。
「行くぞ!!」
「死ね、第四真祖!!」
明久が縮地で移動を開始すると、安座間は予想軌道上に弾幕を形成したのだが、当たらない。というより、安座間の予想とは違って跳んでいたのだ。
予想外な動きに反応が遅れ、明久は安座間の頭上を取り、安座間は迎撃しようと槍を向けたのだが、その穂先を明久は蹴り
「はっ!!」
思い切り、袈裟斬りに鉋切長光を振るった。