ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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戦王の使者編
序章


「クソッ、クソッ、クソッ、クソッ!」

 

「人間共め、よくも同胞達を!」

 

と悪態を吐きながら、二人の獣人達が屋根や巨大重機の上を跳んでいた

 

彼らは獣人主義者のテロリストで、先兵として島に入っていた

 

しかし、彼らが潜伏していた倉庫に対して、アイランドガードが突入

 

完全に油断していたテロリスト達は、瞬く間に無力化されて捕まった

 

だが、彼ら二人はなんとか脱出に成功

 

這々の体で逃げていた

 

そして遠く離れたことを確認すると、あるコンテナの上に着地して振り返った

 

「こうなったら、一足早いが」

 

「全部まとめて、吹き飛ばしてやる!」

 

二人はそう言うと、ポケットの中から小さな黒い物体を取り出した

 

それは、彼らが潜伏していた倉庫に仕掛けてある爆弾の起爆スイッチだった

 

全てが終わったら、証拠隠滅のために爆破するつもりだった

 

だが、仲間達が捕まったことが我慢ならず、全て吹き飛ばさないと気が済まなかった

 

「同胞達の仇だ!」

 

「死ねぇ!」

 

二人はそう言いながら、同時にスイッチを押した

 

だが、爆発どころか、火災すら起きなかった

 

「ど、どうなってやがる!?」

 

「故障か!?」

 

二人はそう言いながら、慌ててスイッチを何回も押した

 

だが、一切反応しない

 

そして気付いた

 

起爆スイッチが、いやに軽いことに

 

その時だった

 

「今時、暗号化もされてない起爆スイッチとはな……黒死皇派とはいえ、財政難か?」

 

という声が聞こえて、二人は声のした方向に振り向いた

 

すると少し離れた場所に、豪奢なドレスを着た少女とスーツ姿の大柄な男が居た

 

しかも、少女の手の中には機械が剥き出しになった2つのスイッチが有った

 

それは、先ほど二人が押したはずの起爆スイッチの中身だった

 

少女はそれを足下に落とすと、ガシャリと踏み砕いた

 

そして、少女は獣人達に視線を向けて

 

獣人(ネコ)共。今なら、楽に捕まえてやるが?」

 

と問い掛けるが、獣人達は

 

 

「貴様ら、タダでは済まさん!」

 

「八つ裂きにしてやる!」

 

と牙を剥いた

 

すると、少女は呆れた様子で

 

「やれやれ……これだから粋がった獣人(ネコ)の相手は疲れる……」

 

と溜め息混じりに言うと、男に視線を向けて

 

「西村、一匹任せるぞ」

 

と言った

 

「わかった。任せろ」

 

男、西村は頷くと、僅かに腰を落とした

 

「「死ねえぇぇ!」」

 

獣人達は叫びながら、それぞれ西村と少女に飛びかかった

 

少女は軽やかに避けて、西村は上半身を僅かに後ろに逸らすだけで避けた

 

その後、少女に対して一人の獣人がその爪を振るった

 

しかし、少女は軽々と爪の連撃を避け続けた

 

だが気付けば、少女はコンテナの端に追い込まれていた

 

「これで逃げらんないぞ!」

 

「ふむ……そうかな?」

 

獣人の殺気を軽やかに受け流し、少女は首を傾げた

 

そして、その獣人は背後に振り向きながら

 

「おい! 人間一人殺すのに、何時まで……」

 

と言おうとして、途中で固まった

 

なぜならば、西村の前で

 

その獣人はコンテナにめり込むように、倒れていたからだ

 

その光景に獣人が固まっていると、少女が

 

「西村、殺してはいないだろうな?」

 

と問い掛けた

 

すると西村は、少し呆れたように

 

「一発殴っただけだ……まったく、これならばまだ、学校の生徒達の方がタフだぞ」

 

と言った

 

すると、残っていた獣人はビクッと体を震わせて

 

「西村……? まさか、鋼の拳聖の西村か!?」

 

と戦慄していた

 

「ん? なんだ……俺を知っている奴が居たか」

 

西村がそう言うと、少女はクククッと笑って

 

「当たり前だろ。お前は私と同じ位に有名だ」

 

と言った

 

すると、西村は溜め息混じりに

 

「確かにな……俺もお前も、互いに有名になったな……南宮」

 

と少女

 

那月の名を呼んだ

 

その直後、獣人は目を見開きながら那月に視線を向けて

 

「まさか……空隙の魔女、南宮那月か!?」

 

と叫んだ

 

すると、那月は冷たい笑みを浮かべて

 

「ほう……獣人(ネコ)風情が私を知っていたか……」

 

と言った

 

すると、獣人はギリリッと歯を剥き出しにして

 

「魔族狩りの攻魔官共が……なぜ、この島に居る!」

 

と叫んだ

 

すると、西村と那月は笑いだして

 

「教師が学校のある島に居るのが、そんなに不思議か?」

 

「まあ、獣人(ネコ)如きには分からないだろうがな?」

 

と言った

 

すると、獣人は眉をひそめて

 

「教師……学校……だと?」

 

と呟いた

 

「さて……明日の授業の準備がまだ有るのでな」

 

「貴様をサッサと捕まえようか」

 

西村に続いて那月はそう言うと、パチンと指を鳴らした

 

その直後、獣人目掛けて何本もの鎖が殺到した

 

「う、ウワアアアァァァ!?」

 

獣人は逃げようとしたが、呆気なく捕まった

 

そして、那月は捕まえた獣人達を逆さまに吊すと

 

「さてと……尋問はアイランドガードに任せるとしようか」

 

と言った

 

すると、西村が頷き

 

「明日も問題児達で忙しいからな」

 

と同意した

 

そして、西村と那月ある方向に視線を向けて

 

「また、あのバカが動くかな……」

 

「まあ、十中八九動くだろう」

 

と話すと、次の瞬間には姿を消した

 

こうしてまた、人工島に災厄が近づく……


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