ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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すいません、遅くなりました


休憩と謝罪

「さっきのは私が足を滑らしたから起きたことであって、彼は一切悪くないの……だから、七式を下ろしてユッキー!!」

 

「ふー……ふー……!」

 

鼻息荒い雪菜を羽交い締めにして抑えながら、唯里は雪菜に雪霞狼を下ろすように懇願した。そして渦中の明久は、ベッドでお茶の間には放送出来ない姿になっていた。唯里には、それ以上悪化するのを止めることしか出来なかった。

そして、数分後

 

「雪菜ちゃん、僕じゃなかったら本当に死んでるからね!?」

 

明久が抗議するも、雪菜は視線を逸らして無言だった。

こうなったらどうにもならないと考えて、明久は唯里に視線を向けて

 

「グレンダちゃんはどう?」

 

「まだ眠っています……相当疲れたのか……」

 

グレンダのことを問い掛け、唯里は首を左右に振った。どうやら、グレンダはまだ眠っているようだ。

すると、雪菜が

 

「しかし、まさか伝説の龍……それも、人化能力を有する龍なんて、教本でしか見たことありません」

 

「うん、私も」

 

雪菜の言葉に、唯里も同意した。確かに、明久も那月から教えられただけであり、そもそも眷獣以外で龍を初めて見た。

那月から聞いた話では、欧州には絶滅危惧種として龍種の保護区が有るらしいが、それすら話に聞いただけである。

その龍から更に人化能力を有するとなると、最早神話や聖殲での記録にしか残っていない。それほどに、グレンダという存在は希少かつ貴重らしい。

 

「で問題は、そのグレンダちゃんをあの騎士鎧の連中が狙ってるってこと……しかも、僕の眷獣が弾かれたなんて、初めて見たよ……」

 

「はい……それも、見たことないオーラで弾かれてました……結界とは違う感じでしたが……唯里さんは、どうですか?」

 

「私もアレは初めて見たよ……あんな桁外れな魔力の眷獣を弾くなんて……魔道具にしても、聞いたことないよ」

 

明久の話を聞き、雪菜と唯里は同意した。

もし、そんな魔道具を開発したのが反魔族団体ならば、日本本土ではなく欧州などの魔族特区等で大規模な事件を起こしている筈である。

三人が唸っていると、ドアがガチャリと開き

 

「ゆいりー……」

 

と寝惚けた様子のグレンダが入室してきた。それを見て、唯里が立ち上がり

 

「ああ、はいはい。ほら、ちゃんと服着ようね? それと、ご飯にしようか」

 

と胸元がはだけているグレンダの肩を掴み、回れ右させるとグレンダと一緒に退室していった。それを見送った明久が

 

「唯里さんって、面倒見良いよね」

 

「はい。杜でも、よく年下の子達の面倒を見てました」

 

明久の話に、雪菜は同意するように説明した。そして雪菜は、明久に視線を向けて

 

「ところで……グレンダさんの胸元を見てましたよね?」

 

「待って、あれは不可抗力だと思うんだよ」

 

雪菜からの冷たい問い掛けに、明久は説得を開始した。

それから、十数分後

 

「なんか、疲れてませんか?」

 

「大丈夫、気にしないで」

 

居間に来た明久がグッタリしているのに気づき唯里が問い掛けたが、明久は大丈夫と答えた。そして、雪菜が用意したご飯を食べ始めたのだが

 

「ユッキーは昔から、凄い生真面目で近寄りがたい雰囲気でねえ……剣巫適性試験にも最年少で選ばれてて、唯一私の渾身のジョークに無反応だったなぁ……」

 

「あ、あれは、緊張していたから反応出来なかっただけで……!」

 

第一回、唯里による雪菜の過去語りが開催されていた。どうやら、雪菜は訓練生時から生真面目で高嶺の華だったようだ。

 

「ああ、ほら……グレンダちゃん、ゆっくり食べてね」

 

「うー!」

 

そして明久は、小さな子供のように食べているグレンダの口周りを拭いていた。それを見ていた唯里は

 

(面倒見良いなあ……凪沙さんの面倒を見てたからかな……)

 

と思っていた。そして、思い出した。

 

「あっ!?」

 

「羽波さん!?」

 

「ど、どうしたの!?」

 

いきなり大きな声を上げた唯里に、雪菜と明久、グレンダが驚いた表情で顔を向けた。すると唯里は、机に頭をぶつける勢いで頭を下げて

 

「申し訳ありません! 私、凪沙さんを見失ってしまいました!」

 

と明久に謝罪してきた。すると明久は、首を傾げながら

 

「えっと、つまり……羽波さんが凪沙の護衛役だったってこと?」

 

「その通りです! 今回の作戦中、私が凪沙さんを護る筈でした! それなのに、見失ってしまって……」

 

明久の疑問に答えながら、唯里は泣きそうな顔で俯いた。それを見た明久は、少し考えてから

 

「僕はその時の状況を知らないけど……だけど羽波さんは、その時出来ることをしてた筈……だよね?」

 

「は、はい……結界を張ったり式を展開したり……出来る限りはしてました……」

 

「だったら、責める理由はないよ……」

 

と唯里を許した。

 

「しかし……」

 

「まあ、バカ親父が居るから大丈夫だろうし……それに、過ぎたことより間近のことに意識を向けよう……気になるってなら、今後活かすことで反省にしようか……頑張ってね」

 

そう締めくくった明久は、軽く唯里の頭を撫でた。その行動に、唯里が顔を赤くしていると

 

「敵が接近してきます!」

 

と雪菜が声を挙げた。

 

「人数は?」

 

「二人です!」

 

明久の短い問い掛けに答えながら、雪菜は素早く雪霞狼を展開して外に飛び出し、僅かに遅れて明久。その後に唯里とグレンダが出た。

そして、雪菜の視線の先にあの騎士達が居た。


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