ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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グレンダの正体

激しい爆発と衝撃に襲われて、テントは吹き飛んでいた。全員が助かったのは、志緒が咄嗟に展開した障壁が理由だった。

 

「くっそ……この威力は、対戦ミサイルだな……!? 無茶苦茶しやがって……!」

 

「牙城……!」

 

牙城は威力から攻撃手段を特定しながら、悪態を吐いていたが、右脇腹辺りから出血している。先の戦闘の傷口が、今の衝撃が理由で開いてしまったようだ。

 

「だが……一発は当てた筈だ……! やってやったぜ、あの野郎が……!」

 

そう言って牙城は、持っていた銃を放り投げて、無事な姿の凪沙を見た。すると、イブリスベールが

 

「しかし、あやつら……カインの巫女が居るのに遠慮なく撃ってきたな……」

 

と呟きながら、浅葱を見た。何のことか分からない浅葱は首を傾げるが、それに対して牙城が

 

「確かに……凪沙にばっかり意識を向いてたな……知らないってんなら、余りにもお粗末過ぎるが……まさか、目的は別……龍か!?」

 

と立ち上がろうとしたが、やはり傷口が開いたからか片膝を突いた。

 

「牙城! だから、無理をするな! 今は、治療に専念すべきだ!」

 

そんな牙城を、志緒は嗜めた。確かに、傷口から溢れる血は止まる様子がなく、下手すれば命に関わるのが分かる。

 

「……こうなったら、バカ息子に任せるしかないか……」

 

そう言った牙城を、志緒がベッドに座らせた。周囲からは自衛隊隊員達の困惑する声が聞こえてきて、志緒が

 

「今は、怪我人の確認と治療を最優先! 怪我してない隊員十数名は、武装して不意打ちを警戒!」

 

と指示を出した。そして、志緒は

 

「……まさか、沖山特尉もなのか……」

 

と呟いた。その理由は、先のミサイルが直撃する直前に、安座真元三佐の背後から沖山特尉が現れて、安座真元三佐を助けた後に一緒に逃げたからだ。

そうなると、自衛隊側のトップ二人だけとは思えない。

 

「くっ……指揮系統が」

 

志緒は歯噛みするが、自分ではどうしようも出来ないと考えて、先ほど牙城が言っていたバカ息子とやらに託すしかないと判断した。

その時明久達は、自衛隊と共にワイバーンと遭遇していた。そのワイバーンの上には、一人の騎士が乗っている。

 

「さっきからよく見るけど……それに、季節的にもあってるけどさ……ここって、有明とかコスプレ会場だったっけ?」

 

心底嫌だ、という風体で明久が呆れていると

 

「死ね」

 

騎士が呟いた直後、ワイバーンの口から炎弾が放たれた。その狙いは、負傷者が多く乗っている自衛隊のトラック。それに気付いた明久は

 

獅子の黄金(レグルス・アウルム)!!」

 

雷の獅子を召喚し、その炎弾を迎撃。その流れで、ワイバーンと騎士を狙って雷を落とさせた。だが当たる直前、黒いオーラに雷は弾かれた。

 

「弾かれた!?」

 

「確かにワイバーンは幻想種ですが、あんな対魔防御があるなんて、聞いたことありません! それに、あんなオーラも初めて見ます!」

 

明久は驚き、雪菜は自身の知識と擦り合わせてから雪霞狼を構え

 

「自衛隊の方々は、負傷者の乗っているトラックの防御に専念してください!」

 

と自衛隊に指示を下した。確かに、騎士は負傷者の乗っているトラックを狙ったのだから、正しい指示だろう。

しかし、騎士はそんな二人を無視し唯里に抱き付いているグレンダを見て

 

「正統な後継者が命ずる……グレンダよ、情報を開示せよ」

 

と命じた。だが、グレンダは困惑気味に首を傾げるのみ。そんなグレンダに、騎士は驚いたのか

 

「グレンダよ、情報を開示せよ!」

 

と怒声交じりに命令した。しかし、何も起きない。騎士が何をしたいのか分からず、明久達も固まっていた。その時

 

「ゆっきー! 向こうから更に一体来る!」

 

と唯里が、指差した。その先を見ると、確かに同じワイバーンと騎士が来ている。しかし、先に交戦していた騎士は突撃槍を持っているのに対して、後から来た騎士は金属製の杖を持っている。

 

「何を遊んでいる……我々の大義を忘れたか……」

 

「申し訳ありません! しかし、グレンダが要求しても情報を開示しないのです!」

 

どうやら、後から来た騎士の方が上の立場らしく詰問すると、先に交戦していた騎士は何やら困惑気味に報告した。それを聞いて、後から来た騎士は

 

「まだ覚醒が十分ではないのか……だが、これ以上待つことは出来ない……」

 

そう言って、杖をグレンダに向けて

 

「命ずる……グレンダよ、真の姿を解き放て」

 

と言った。その直後、劇的な変化が始まった。グレンダの体が不気味に脈動し始めて、背中から迷彩服を突き破る形で龍の翼が生えた。

 

「なっ……!?」

 

「ぐ、グレンダ!?」

 

「何が起きてるんですか!?」

 

明久達が驚いている間にも、変化は続く。人型だった見た目が爬虫類を彷彿させる姿になり、一気に巨大化した。その姿は正に、伝説に聞く龍そのもの。

 

「な……」

 

「り、龍!?」

 

明久達が驚いている間、グレンダは苦しそうに身悶えて咆哮を上げている。

 

「グレンダ! どうしたの、グレンダ!?」

 

唯里は必死にグレンダの足にしがみつき、グレンダに声を掛けている。しかし、グレンダは落ち着く様子が見られない。それに危機感を覚えて、明久は唯里に歩み寄り

 

「一度離れよう。最悪、攻撃される可能性が」

 

と一度唯里を、グレンダから離そうとした。

だがその時、グレンダが一際長い咆哮を上げたかと思えば、大きく翼を広げた。次の瞬間、明久は尻尾に凪払われる形で背中に飛ばされ、唯里は足で掴まれた。それを見て、雪菜はしなやかに駆け出して飛び始めたグレンダの背中に飛び付いた。

それと同時に、グレンダは一気に急加速で空高く舞い上がり

 

「グレンダのバカぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

と唯里の悲しい悲鳴が木霊した。


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