ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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到着と困惑

「……なにこれ。何が起きたの……」

 

呆然と呟いたのは、オシアナスガールズが運用する装甲車から降りた明久だった。確かに神緒田近辺は寒い地域だが、それでも湖が凍るというのは、予想外にも程があった。

 

「先輩、この一帯に凄まじい魔力が……」

 

「うん……こんなの、吸血鬼の真祖級だけど……」

 

雪菜の言葉に、明久は同意するように頷いた。今神縄湖周辺には、凄まじい魔力が残留していた。その濃度や量から、明久は真祖級だと考えた。

しかし、日本本土に自分以外の吸血鬼の真祖が居るとは思えなかった。

すると、装甲車から降りてきたオシアナスガールズが

 

「第四真祖様……無線を傍受したのですが、どうも自衛隊は大きな損害を受けているようです」

 

と報告してきた。それを聞いて、明久は怪訝な表情をして

 

「自衛隊が大きな損害?」

 

「はい。無線も混乱してましたが、どうやら未知の魔物が現れて、対応出来なかったと言ってました」

 

明久の問い掛けに、一人がそう報告してきた。視線を動かすが、別の一人がヘッドホンを着けて機械を操作している。恐らく、それが無線なのだろう。

 

「……なぁんか、こっちの予想を上まってきてるなぁ……」

 

「少し前に見た、龍の影も気になります……一体、神縄湖(ここ)で、何が起きてるのでしょうか……」

 

装甲車のカメラでモニターに映された映像で、巨大な龍の影を見ていた。それも気になり、オシアナスガールズは完全武装である。

装甲車の一角には、凄まじい武装が大量にあった。しかも、全員が訓練を受けているらしく、対魔族も相手可能らしい。

 

(メイドの定義が分からないなぁ……)

 

明久はそう考えながら、ジッと神縄湖を見て

 

「……確か近くに、登山家用の休憩小屋が有った筈……そこに行って、一度対策を考えようか」

 

と言った。神縄湖のある神緒多は登山家達も多く訪れるために、何ヵ所かに休憩小屋が設置されているのだ。

明久はそこに行くことを提案し、全員が了承。一番近い休憩小屋に行くことにした。

そこでなら、無線での情報収集を鑑みながら落ち着いて会議出来ると考えたからだ。

そうして、明久達は休憩小屋に向かった。

この時、実は凪沙の方は危機に陥っていた。

飛竜に乗った騎士だが、異質な強さを誇っていた。飛竜は確かに強力な魔物だが、それでも琥珀金を使った対魔物弾を食らっては無事では済まないのだが、その飛竜は何故か無事だった。それだけでなく、飛竜諸とも騎士を狙って放った式紙は、騎士に触れた瞬間に砕け散った。

しかも、牙城の切り札たる呪式弾も効かず、志緒の六式降魔弓・改の術式までもが無効化された。

無力を感じて動かなくなった志緒を狙って放たれた攻撃を受けて、牙城は重傷。緋沙乃も倒された。

そして、凪沙が連れ去られそうになった時に、ヴァトラーが現れて、凪沙を抱き上げ

 

「……少し予定が早まったが……これで、三体目(・・・)、か」

 

と呟いた。この直ぐ後に、イブリスベールと浅葱を乗せた多脚戦車が現れて、ヴァトラーは浅葱を見ながら、衝撃的な言葉を紡いだ。

 

「これはこれは、イブリスベール・アズィーズ殿下……よりにもよって、《カインの巫女》を連れて御来臨とは……予想もしてませんでした」

 

ヴァトラーの言葉を聞いて、イブリスベールは驚愕の表情を浮かべながら浅葱を見た。

カインの巫女、かつて聖殲を引き起こしたとされる咎神に使えたとされる巫女。

そして、イブリスベールとヴァトラーの部下が協力し、騎士。咎神に使える騎士を撃退し、飛竜を確保した。

そこへ、豪華な装飾が施され、アルディギア王国の紋章が入った一隻の飛行船が降りてきた。

こうして、神縄湖での戦いは、明久の予想を超えた規模へと発展していくことになるが、明久は知らなかった。


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