ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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準備

獅子王機関の派出所から離れた明久と雪菜は、一旦帰宅。食事をして、落ち着くことにした。そして食事が終わると、明久は凪沙の部屋に入り

 

「さて……凪沙のことだから……ここかな」

 

と凪沙の勉強机の裏に、手を伸ばした。そして、少しすると

 

「あった」

 

明久が取ったのは、ひとつの鍵。それを見た明久は、ぐるりと凪沙の部屋を見回して

 

「……あれかな?」

 

と言って、タンスの鍵穴に鍵を差し込んで回した。するとカチリという、解錠の音が聞こえた。それを聞いた明久は、引き出しを開けると

 

「いや、この中かい……」

 

その中には、下着が詰められていた。明久も洗濯物を折り畳んでは仕舞うので、凪沙が下着を入れる場所は知っているが

 

「……増えすぎでしょ……しかも、このチョイス……バカ親父か……今度から、エロ親父って呼んでやる……」

 

その下着は、かなり過激な物ばかりだった。透けていたり、小さかったりと。

 

「あのエロ親父……実の娘に、どんな下着を送ってるんだよ……」

 

恐らく、鍵付きの引き出しに仕舞ったのは、恥ずかしかったからだろう。凪沙は、かなり純心である。以前のラブレター騒動(実際は猫の相談)の時も、顔を赤くしていた程だ。

 

「……母さんにバレたら、母さん何を仕出かすやら……」

 

明久はそう呟きながら、その引き出しの奥の方に手を突っ込み、目的の物の掴んだので、引っ張り出した。

それは、二冊の通帳だ。名義は、凪沙と明久になっている。

明久は数学が苦手で、家計簿等がどうしてもズレが生じてしまう。そこで、数学が得意な凪沙が家計簿だけでなく明久のお小遣いも管理することにしたのだ。

明久と凪沙のお小遣いは、母親が月一で振り込んでいる。

明久も自分のお金の管理が杜撰なのは自覚していたので、お小遣いの管理は凪沙に一任することにした。

だが、今は緊急事態として取り出したのだ。

明久は通帳を開き、残額を確認。

 

「うん……これなら、大丈夫だね……というか、母さん。お小遣い増額したの? あー……そういえば、研究成果が認められて、給料が増えたって言ってたな……そこからか」

 

明久はそう言って、通帳に挟まっていたキャッシュカードを取り出して、自分の財布に入れた。その時

 

「先輩……何をしてるんですか……?」

 

「わーお……タイミング悪ぅ……」

 

背後から聞こえた雪菜の低い声に、明久は天井を見上げた。後ろを見てみれば、そこには冷たい目を向けてくる雪菜の姿があった。

 

「……先輩……何か、言い残すなら聞きますが……?」

 

「即死刑!? 待って!? 話を聞いて、裁判長(雪菜ちゃん)!?」

 

「誰が裁判長ですか」

 

雪菜は怒気を揺らめかせながら、ゆっくりと雪霞狼を取り出した。それを見た明久は、思わず雪菜の前で正座した。そして雪菜は、開きっぱなしの引き出しを見て

 

「……先ほど、その引き出しに手を入れてましたが……随分と過激な下着が入ってますね?」

 

「その下着に関して、僕は一切知りません。恐らく、エロ親父が犯人です」

 

雪菜の問いかけに、明久は素直に答えた。それを聞いた雪菜は、明久に視線を向けて

 

「それで、何を取り出したんですか?」

 

「通帳とキャッシュカードです」

 

明久の返答を聞いた雪菜は、片眉をピクリと動かした。

 

「何故、通帳とキャッシュカードを……先輩、まさか……」

 

「……多分、雪菜ちゃんが考えてる通りになるかな?」

 

明久がそう言った直後、雪菜は明久の肩を掴み

 

「一人で本土に渡るつもりだったんですね!? 何故ですか!?」

 

「今、雪菜ちゃんと一緒に行くことは出来ないと思ったからだよ……今回の件は、獅子王機関が関わってる。下手したら、雪菜ちゃんが裏切り者扱いされる」

 

「だからと言って、先輩を一人で行かせられる訳が無いじゃありませんか!? 忘れたんですか!? 獅子王機関は、魔導災害対策機関なんです! 対魔族装備は、警備隊の比ではありません! 先輩が、殺される可能性だって!?」

 

「だからって、雪菜ちゃんを連れていったら、最悪仲間から殺されるかもしれないし……雪菜ちゃんに、仲間を攻撃させるなんて出来ない」

 

明久のその言葉に、雪菜は声を詰まらせた。はっきり言って、雪菜のコミュニケーション能力は、お世辞にも高いとは言えない。しかしそんな雪菜でも、獅子王機関に知り合いは多数居る。その人達と戦うというのは、確かに生半可な覚悟では出来ない。

しかし

 

「それでも、先輩を一人で死地たる本土には行かせられません! 私は、先輩の監視役ですから!!」

 

雪菜の覚悟の籠ったその言葉に、明久は雪菜を止められないと悟った。だから明久は、タメ息混じりに

 

「わかった……それじゃあ、本土に行く準備をしようか……絃神島(ここ)じゃ使わない、冬服とか」

 

「そうですね」

 

明久の提案に、雪菜は頷いた。常時常夏の絃神島では分かりにくいが、今の季節は冬である。夏服で行ったら、凍えてしまう。

だから明久は、物置から冬服を取り出しに向かった。


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