ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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情報収集

浅葱の部屋は、浅葱らしい飾り立てつつもシンプルな部屋だった。ただ異色なのが、机の上の幾つものモニターだった。

浅葱は、その内の幾つかを点けて

 

「それじゃあ、本土に着いてからの跡を追うわね……モグワイ!」

 

と相棒を呼んだ。

すると、モニターのひとつの隅っこにあのアバターが姿を現し

 

『よう、嬢ちゃん。新年明けましておめでとさん。おっと、彼氏(予定)さんとライバルの嬢ちゃんを呼んで、3Pでもやる気か?』

 

いきなり、猥談をぶち込んできた。そんなモグワイに、浅葱は

 

「新年早々、ぶっ飛んでじゃないわよ。初期化するわよ?」

 

割かし容赦なく、そんな言葉を投げ掛けた。

 

『おっと、そりゃ勘弁だ。話は聞いてたぜ? そっちの妹さんと親父さんの跡を追うんだったな』

 

「そうよ。だから、さっさとやるわよ」

 

『あいよ』

 

そこで会話を終わらせると、浅葱は素早くキーボードを叩き始めた。そして、一分と経たない内に

 

「よし、見つけたわ……飛行機は、予定通りに本土に到着してるわね……その後は……レンタカー店に寄ってるわ……偽名で借りてるわね」

 

『ちなみに、名前は冴羽遼だな』

 

「何で偽名。どこの掃除屋だ」

 

偽名で車を借りた父親に、明久は思わず突っ込みを入れた。しかも、女にだらしない所が同じだから、複雑な気分であった。

 

「その後は……ネズミ園に行ってるわね」

 

「何故真っ直ぐ行かなかったのか」

 

恐らくは、まともに帰ってこれないから、その代わりの家族サービスかもしれないが、さっさと行けと言いたかった。

 

『んで、その後は近場のホテルに泊まってるが……ストリップショー見てるぞ』

 

「母さんにリークしてやる……」

 

モグワイの告げた内容に、明久は深森に牙城の所業を告げ口することを誓った。

 

「そして翌日は……新宿で買い物してるわね……女の子用の服とか……凪沙ちゃん用みたいね」

 

「だから、早く行けと……」

 

牙城と凪沙は、本土に渡って一日経っても本来の目的地に到着していない。

 

「えっと、夕方位まで買い物したり食事をしてから……あ、高速に行ったわね……神縄湖方面よ」

 

「漸くかい」

 

丸一日と数時間経って、漸く牙城と凪沙は本来の目的地。神縄湖方面に向かった。

 

「ん、待って……なんか、おかしいわ」

 

その違和感に最初に気付いたのは、浅葱だった。

 

「何がおかしいんですか、藍羽先輩?」

 

「……これ、年末なのに、高速がいやに空いてない?」

 

雪菜が首を傾げていると、モニターを見ていた明久が二人が乗った車がスイスイと走ってることを指摘した。

すると、浅葱も頷き

 

「幾ら何でも、これは不自然過ぎる……」

 

と言って、再びキーボードを叩き始めた。それから少しすると、ひとつのモニターに情報を表示させて

 

「これだわ。神縄湖方面に、規制が張られてることになってる」

 

とある一文を指差した。確かにそこには、《神縄湖方面、規制中》と表示されている。

 

「だったら、父さん達も検問で止められてる筈……まさか、人払い?」

 

「っぽいわね……自衛隊の攻魔大隊が出動してる……出動理由は、魔導災害発生ってことになってるけど……その依頼人は……陰陽公社って所」

 

「陰陽公社!?」

 

浅葱が告げた名前を聞いて、雪菜は思わず声を挙げた。

 

「雪菜ちゃん?」

 

「陰陽公社というのは……獅子王機関のダミーカンパニーのひとつです……」

 

明久が顔を向けると、雪菜は声を震わせながらそう告げた。つまりは、獅子王機関が関わっているということになる。そして、責任感が強い雪菜のことだから、凪沙の行方知れずに獅子王機関が関わっているとしたら、自責の念を抱いているだろう。と明久は予想し、そんな雪菜の頭を撫でて

 

「大丈夫、雪菜ちゃんのせいじゃないから」

 

と励ますが、雪菜の表情は固いままだった。しかし、無理ないかもしれない。雪菜にとって、獅子王機関は幼かった自分を育て上げ、更には生きる術を色々と教えてくれた所だ。しかし、その獅子王機関が監視対象の家族であり、自分の友達を巻き込んだ作戦を始めようとしている。

気にならない訳がなかった。

そして、少しすると

 

「ん、これだわ」

 

と浅葱が、少し大きめのモニターにあの写真と同じらしい魔法陣を表示させた。

それを見た明久は

 

「……この魔法陣、煌坂さんのやつに似てない?」

 

と指摘した。

 

「確かに似てますが……しかし沙矢華さんは、主に国外案件が担当です……国内では、考えにくいですが……」

 

「……だったらさ、量産型ってのはある? あの弓だけの奴とか」

 

明久のその言葉に、雪菜は唸りながら

 

「確かに、そういう話も有りましたが……そもそも、沙矢華さんの六式は非常に扱いが難しいために、沙矢華しか扱える人が居なかったんです。ですから、それを量産型にするとは言っても、相当扱える人は少ない筈です……」

 

と答えた。つまりは、雪菜が知らないだけで、造られてる可能性は高いということになる。

そう考えると、色々と辻褄が合うのだ。

そう考えた明久は、頭をガシガシと掻いてから小さく

 

「これは、面倒事な気配がビンビンするなぁ……」

 

と呟き、更なる情報収集を始めた浅葱を見たのだった。


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