ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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逃亡の第四真祖編
序章


「ったく……相変わらず、無駄に長い階段だぜ……おっさんには辛いっての……」

 

牙城はブチブチと文句を言いながら、長い石段を登りきった。そうして到着した境内。灯籠の電球も消され、人の気配一つしないことから、今居る神社。

神緒多(かみおだ)神社は、既に今日の営業が終わっているのが分かる。この神緒多神社はあまり知られていない神社だが、歴史は旧く、特に呪術との関わりが深い。

現宮司の緋紗乃(ひさの)は、かつて何度か大規模な魔導災害の鎮圧に尽力したことがあるらしく、政府の魔導関係機関とも浅からぬコネを持っているらしい。

そのため年末年始となると、緋紗乃を訪ねてくる客は多い。

しかも時期的に考えて、緋紗乃や巫女達は、年末年始の準備に追われている筈なのに、静かだった。否、静か過ぎた。

周囲が木立に囲まれているために、境内は一層暗く完全に暗闇に包まれていた。

そうして牙城は、参道の真ん中辺りに来ると、溜め息を吐いて

 

「やれやれ……かくれんぼする歳でもないんだがな……おら、そこに隠れてる奴。出てこい」

 

と一つの灯籠に視線を向けた。

 

「……OK……出てこないんなら、こっちから仕掛けるからな」

 

牙城はそう言って、何処からか一挺のサブマシンガンと缶状の物を取り出した。そして、缶状の物からピンを抜くと、無造作に投げた。

牙城が投げたのは、スタングレネード。

スタングレネードは灯籠付近に落ちて、効果を発揮した。一気に明るくなる周囲と爆発的な音。それらで目と耳を潰すのだ。

 

(まあ、効果無いんだろうが)

 

牙城の予想通り、灯籠の陰から小柄な人影が飛び出してきた。それを見て牙城は、サブマシンガンの引き金を引いた。

軽い炸裂音が連続して響き渡り、秒間10発の弾丸が相手に飛翔していく。だが、弾が効果を発揮することは無かった。

 

「今のは……疑似空間切断か……六式? いやあれは確か、扱いが非常に難しくて、一人しか使い手が居なかった筈……となると、量産型……ははぁ、六式改か。既に実践運用段階だったか」

 

「つっ!?」

 

牙城の言葉に動揺する気配がするが、直ぐに立て直したらしく、一瞬にして懐に入り込まれ、サブマシンガンが弾かれた。

 

「お、中々やるね……だが残念賞!」

 

牙城がそう言った直後、両手に散弾銃が現れた、

 

「なっ!?」

 

「驚いてる場合かなぁ!?」

 

牙城は散弾銃をフルオートで撃った。明らかに、人に向けるには過剰な火力で、その証拠に一本の木が折れて倒れた。

 

「はっはぁ! まだまだ行くぞ!!」

 

弾切れになった散弾銃を放り投げると、次は二挺の大型拳銃を取り出した。その時

 

「唯里!」

 

「お?」

 

新しい声が聞こえて、牙城の体が重くなった。視線を上に向けると、牙城の頭上に幾何学模様。魔法陣があった。

 

「あー……そういやあ、六式改は対って話だったな……忘れてたわ」

 

牙城はそう言って、爪先でトントンと地面を叩いた。その直後、ズボンの裾から小さい何かが落ちて、凄まじい閃光を放った。

 

「しまった! 魔法陣潰し!?」

 

魔法陣潰しとは、その名前の通り様々な効果を発揮する魔法陣を使えなくするための道具で、新たな相手が展開した魔法陣は消えていた。

それで自由になった牙城は、拳銃を肩越しに撃って背後の相手が居る木の枝を撃って、折った。

 

「わ、わぁっ!?」

 

「志緒ちゃん!?」

 

仲間が落ちたからか、唯里と呼ばれていた少女の気が牙城から反れた。そして牙城は、その隙を見逃さず

 

「それ、戦場じゃあ死ぬぞ」

 

と言って、唯里を志緒と呼ばれた少女の方に投げた。

 

「わああっ!?」

 

「うぐっ!?」

 

唯里と志緒はぶつかり、そのまま転倒。すると、牙城が

 

「しっかも、なんだこの下着は? 攻めすぎだろ」

 

いつの間にか、牙城の手には一枚のショーツがあった。どうやら投げた際に、唯里のを脱がしたらしい。やっていることは、ただのエロオヤジである。牙城はそのショーツを放り捨てると、落ちてきた二挺拳銃をキャッチし

 

「さて、どうするよ」

 

と言って、二人に銃口を向けた。その時

 

「そこまでです。このバカ息子」

 

と聞こえ、強烈な光が当てられた。眩しかった牙城は、思わず片腕で視界を覆った。そして気付くと、周囲には物々しい銃火器を持った一団が居て、全員が牙城に銃口を向けていた。

 

「……ババア……」

 

しかも、階段の方には一人の老婆が居た。彼女が、吉井緋紗乃。明久達の祖母に当たる人物である。しかし、その背筋はピンとしており、右手には薙刀があった。しかもその背後に居た人物は、意識が無いらしい凪沙を抱き抱えていた。

 

「ちっ……わあったよ……ったく」

 

舌打ちした牙城は、持っていた拳銃を投げ捨てると両手を挙げて降参の意志を示した。それを確認した緋紗乃は、立ち上がった二人の少女に

 

「ご苦労様でした、羽波降魔官に斐川降魔官。少しの間ですが、ゆっくりと休みなさい」

 

と告げた。

 

「は、はい!」

 

「失礼します! 緋紗乃樣!」

 

二人は深々と頭を下げた後、それぞれの武装(唯里は自身のショーツも)を回収し、去っていった。そして緋紗乃は、月を見上げて

 

「……もうすぐです……もうすぐ、終わる」

 

と呟いた。


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