ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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来襲

「ねえ、あれって結瞳ちゃんじゃない?」

 

と言ったのは、浅葱だった。12月末の最終登校日。冬休みが始まった明久達は、これからどうしようかと話ながら、校門に向かっていた。すると浅葱が、校門に結瞳が居ることに気付いたのだ。

 

「あ、本当だ」

 

浅葱の言葉を聞いた明久は、校門付近をよく見た。すると確かに、校門の柱に背中を預ける形だが、結瞳が居た。そのタイミングで結瞳も気付いたらしく、笑顔を浮かべて駆け寄ってきて

 

「お久しぶりです、明久さん!」

 

と挨拶してきた。

 

「久しぶり、結瞳ちゃん。元気そうでよかったよ」

 

「はい! ようやく、明久さんに会えました!」

 

結瞳は嬉しそうに言いながら、明久に抱き付いた。すると、周囲から何やら、鋭い視線が明久にザクザクと突き刺さる。

すると浅葱が

 

「そういえば、結瞳ちゃんが着てるのって……天奏学館(てんそうがっかん)の制服?」

 

と問い掛けた。今結瞳は、白を基調に水色のラインが入った制服を着ている。

 

「あ、はい。今日、編入手続きが終わったんです」

 

「へー……というか、天奏学館って、かなり偏差値高くなかった?」

 

明久が首を傾げると、結瞳は持っていたカバンに手を入れながら

 

「はい、確かに少し難しかったですけど……問題ありませんでした」

 

と言いながら、一枚の紙を明久達に見せた。

それは総合成績表と書かれてあり、全てに於いて高い成績だった。

 

「うわ……結瞳ちゃん、頭良いんだ」

 

その成績を見て、明久は思わずそう溢してしまった。流石に浅葱には及ばないだろうが、将来有望だろう。

 

「ありがとうございます! 今は無理ですが、待っててください、明久さん!」

 

結瞳のその言葉に、周囲がざわついた。そして明久が冷や汗を流していると、基樹が携帯を取り出して操作を始めた。それを見た明久は、思わず

 

「待った、基樹……何をしようとしている……」

 

と問い掛けながら、その手を掴んだ。

 

「なにな、学園の掲示板に明久がロリコンだと書こうかと……」

 

「待て、こら……そんなことされたら、僕が社会的に死ぬことになる……!!」

 

基樹の言葉を聞いた明久は、基樹の愚行を止めようと、取っ組みあいを始めた。しかし基樹も、あの手この手を駆使して、携帯を操作しようとしていた。その時だった。

 

「せっ!」

 

「えいっ」

 

浅葱が脛を、結瞳が股関に蹴りを放った。二人の蹴りを受けて、基樹は言葉にならない悲鳴を漏らしながら悶絶する。

 

「流石に、ネットマナーは守りなさい」

 

「明久さんを貶めることは許しません!」

 

二人はそう言うが、今の基樹に聞く余裕など無かった。

 

「も、基樹……大丈夫……?」

 

まさかの横槍、しかも急所への一撃に明久は基樹を心配し声を掛けたが、基樹は痙攣するのみ。それから数分後、何とか復活した基樹と一緒に、一行は近くの喫茶店に向かうことにした。

しかし、そんな一行を少し離れた位置から見つめる人影があった。誰であろう、雪菜である。

 

「先輩……! 結瞳ちゃんは小学生なんですよ……! 節度を持ってください……!」

 

雪菜はそう呟くが、離れている明久に聞こえる訳がない。すると、そんな雪菜を後ろから見ていた凪沙が

 

「いや、近づいて言いなってば、雪菜ちゃん……」

 

と半ば呆れていた。

 

「それは……出来ません……」

 

凪沙の指摘に、雪菜は僅かに視線を反らしながらそう告げた。なぜ近づかないのか。それは、浅葱と結瞳にある。浅葱は少し派手目ではあるが、紛れもなく美少女。そして結瞳は、幼いがこれまた美少女である。そんな二人に手を捕まれている明久も含めて、周囲からの視線は凄まじく、そんな中に自己に対する評価が低い雪菜は突撃する勇気は無かった。

しかし、凪沙から言わせてもらえば、雪菜も間違いなく美少女なのだが。

 

「まあ、いいけどね。見てるこっちからしたら、色々と楽しいから」

 

凪沙はそう言うと、明久達の方に視線を向けて

 

「あ、明久君達、あの喫茶店に入るんだ! あそこのショコララテ、美味しいんだよねぇ。飲みたいけど、今入ったら怪しまれるし。よし、隣のコンビニで飲み物買ってくるね! 雪菜ちゃんは何が飲みたい? 炭酸? スポーツドリンク? 果汁系?」

 

「え、えっと……冷たいお茶で……」

 

マシンガン張りの凪沙のおしゃべりに、雪菜は半ば気圧されながらお茶を頼んだ。雪菜の注文を受けた凪沙は、グッと親指を立てると、隣のコンビニに突撃していった。最近は慣れたつもりだったが、いきなりのマシンガントークにはまだ慣れそうになかった。

そして雪菜は、近くに人が居ないことを確認してから、式神を明久の方に飛ばし、近くのベンチに座って一息吐いた。

その時

 

「隣、いいかな?」

 

と雪菜に、一人の中年男性が話し掛けてきた。暑いというのに着ている黒いコートと黒い中折れ帽子が特徴の男だった。

 

「は、はい。どうぞ……」

 

「ありがとうな。いやぁ、この歳になると一日中立つってのが疲れるんだわ」

 

雪菜の言葉を聞いた男は、軽い口調でそう言いながらベンチに腰かけた。しかし雪菜は

 

(この人、いつの間に!? さっきまで、誰も居なかった筈なのに!?)

 

突如として現れた男に、警戒心を露にしていた。しかし男は、そんな雪菜の内心を知ってか知らずにか

 

「しかし、君。音楽やってるのかい? そのケース、何が入ってるんだい?」

 

と雪菜に問い掛けてきた。雪菜は、そんな男の声に聞き覚えを感じながら

 

「あ、あの……私、そんなに音楽は得意ではなくて、これはクラスメイトのを預かってるだけで……」

 

と当たり障りの無いように答えた。

 

「ほうほう……しかし、さっきは何を見ていたんだい? 何やら熱心に見ていたようだが……あれか、青春か? 男かな? いやぁ、いいねぇ、若いってのは!」

 

「あ、あの……!?」

 

矢継ぎ早の言葉に、雪菜は狼狽え始めた。その時だった。男の顔面に、ペットボトルが直撃し

 

「ごふぁっ!?」

 

男は情けない悲鳴を挙げながら、大きく体を仰け反らせた。それを見た雪菜は、反射的にペットボトルが飛んできた方に視線を向けた。

するとその先には、ペットボトルを投げた張本人。明久が

 

「あんたは……一体、何をやってんだ! このバカ親父!!」

 

と怒っていた。

 

「へ……親父ってことは……吉井先輩と凪沙ちゃんの……」

 

明久の言葉を聞いた雪菜は、男。明久と凪沙の父親、吉井牙城の方に顔を向けた。すると牙城は、右手に明久が投げたペットボトルを持ちながら

 

「どうも、バカ息子と凪沙の父親の吉井牙城です。ヨロシク」

 

と何故か怪しい発音で、気楽に挨拶してきた。


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