ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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焔光の宴5

「……君は……」

 

「……許されるなんて、思ってない……なんであれ、私は……牙城を……」

 

外に出た明久の目の前には、血に濡れたメイド服を着た一人の少女。ヴェルディアナが居た。その表情は沈んでおり、自殺しても可笑しくない雰囲気だった。

 

「……船に乗って……私が、貴方達をあの場所に、連れていくから……」

 

ヴェルディアナはそう言って、明久とアヴローラを船に乗させた。彼女が言うあの場所というのは、凄まじい魔力が柱のように立ち上っている場所のことだろう。

ヴェルディアナは船のエンジンを始動させると、舵を取った。船は少しずつ速度を上げて、旧アイランドサウス第十地区へと向かった。

旧アイランドサウス第十地区は、今から数ヶ月前に建設中にテロが行われ、いつ倒壊しても可笑しくないという損傷を受けて、他の人工島から切り離された人工島だ。

それ以降、旧アイランドサウス第十地区は犯罪者の隠れ家となっており、近づくだけで襲われるということも多発。近い内に、警備隊が対処する予定だった。

 

「あそこに……?」

 

「ええ……魔力で分かるわ……あそこに、その子以外の第四真祖が居るわ……」

 

明久が視線を向けると、ヴェルディアナはそう教えた。

確かに、まだ距離が有るというのに、明久も尋常ではない魔力を感じていた。もし耐性が無い者が近付けば、それだけで体に変調を来しかねないだろう。

そして船は、ヴェルディアナの操舵で旧アイランドサウス第十地区の橋だったのだろう場所に接岸。明久とアヴローラは、そこに飛び移った。

そして、ヴェルディアナも飛び移るだろうと思い、振り返った。しかしヴェルディアナは、船に乗ったままだ。

それを見た明久は僅かに首を傾げたが、すぐに驚愕で目を見開いた。

 

「体が!?」

 

ヴェルディアナの体が、少しずつ薄くなっていたのだ。この時の明久は気付かなかったが、それは吸血鬼の能力の一つ。霧化能力の制御が出来なくなったから起きた現象だった。

ヴェルディアナは牙城を刺した後に、ネプラシ武器商の戦闘班数名と交戦した。しかしその際、重傷を負っていて、それを霧化と再生能力を併用して誤魔化していたのだ。そして、牙城を刺してしまった罪悪感から明久を旧アイランドサウス第十地区に送ったのだが、そこで限界が来てしまった。

 

「……貴方なら、終わらせられるって……信じてるわ……吉井明久……」

 

そう告げた直後、ヴェルディアナの姿は無くなった。

それを見た明久は、歯をギリッと鳴らして

 

「……終わらせます……焔光の宴だかなんだか知らないけど……こんなふざけたことは、終わらせる!」

 

と言って、アヴローラを抱えて走り出した。

目的地は当然、魔力が立ち上る中心地。原初のアヴローラの場所へ。

 

「……なんで……」

 

しかしその場所で、明久は驚いた。確かに、そこには凄まじい魔力を吹き出している相手が居た。

だがそこに居たのは、爛々とした好戦的な笑みを浮かべた明久の妹。

凪沙だった。

 

「凪沙ぁ!?」

 

明久が駆け出した直後、凪沙。

否、原初のアヴローラは右手を明久のほうに向けて

 

「行け、一番」

 

と告げた。その瞬間、明久の眼前に雷で出来た獅子が居た。

 

「なっ!? があぁぁぁぁ!?」

 

辛うじて直撃は避けた明久だったが、余波の雷に全身を焼かれた。

地面を転がりながら明久は、背中から一本の刀。雷切りを抜刀し

 

「なんで、凪沙が眷獣を!?」

 

と困惑していた。暫定ネプラシ自治区議長に呼び出された原初のアヴローラは、自身の魂が宿るに相応しい体を探した。本来ならばそれは、全ての個体が合体したアヴローラが担う役割だったが、そもそも今絃神島に居るのは12体ではなかった。

実は、絃神島に来ていたのは11体だった。牙城も含めて今回参加・参加出来なかった勢力は、探したが、見つからなかった。

しかし、一体を除いて集まったのだから出来る筈だとあの男が声高に提唱したために、宴は強行された。

それ自体が、世界最強の兵器を入手して、兵器として運用しようと企んだからだ。

しかし、その企みは失敗。

その後アヴローラは、相応しい肉体を見つけた。それが、絃神島に居る中では最高峰の霊媒体質を持っていた凪沙だった。勿論凪沙は、精神防御に関する修行もしていて、並大抵の精神系の術では小揺るぎもしない防御を得ていた。

だが、相手が悪すぎた。なにせ原初のアヴローラは、神を殺戮するために造り出された存在だ。その能力もまた、殺神(さつじん)級だった。

それにより、凪沙の体を支配した原初のアヴローラは、絃神島に居たアヴローラ達を吸収したのだ。

ただ一人、アヴローラ・フロレスティーナを除いて。

 

「来い、12番目よ……我と統合し、世界を焼き尽くそうぞ」

 

原初のアヴローラはそう言いながら、アヴローラに手を伸ばした。しかし、アヴローラは

 

「否……我らの役割は、そのようなことではない……我、アヴローラ・フロレスティーナは、原初に反逆する」

 

と宣言した。

 

「くっくっく……ハッハッハッハッハ! 本気か、12番目よ……分身の人形風情が、我に敵うとでも……思うたか!!」

 

一頻り笑った後原初のアヴローラは、周囲に数体の眷獣を召喚した。一体一体が天災級の眷獣の一斉召喚。それにより、凄まじい魔力が吹き荒れた。

その余波だけで、明久は吹き飛ばされそうになるが、重心を低くして耐えると

 

「凪沙の体で、好き勝手言ってくれるじゃないか! お前が誰かなんて、知ったことか! こっから先は、僕の戦争(ケンカ)だ!!」

 

て凪沙を助けるために、戦いを挑んだ。


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