ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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出会いから

翌日、明久はまた凪沙のお見舞に寄っていた。

しかし、明久より先にクラスメイトが来たらしく、凪沙はそのクラスメイトと楽しそうに会話していた。

それを邪魔するつもりは無い明久は、ふと据え付けられていたテレビに視線を向けた。

すると、欧州のネプラシ暫定自治区で未知の病気が起きているらしく、民間人達が次々と倒れては吸血鬼化している。と報道されていた。

それを見た明久は、激しい頭痛に襲われた。まるで、忘れている何かを思い出せ、とでも言うようだった。

その後、見舞いが終わった明久は帰り際に凪沙から洗濯物を預かった。

 

「ん……なんだ?」

 

それを感じたのは、病院の階段を降りていた時だった。

明久が居たのは、丁度一階に到着した時だ。何やら一度、胸が高鳴った。

それが気になった明久は、軽く周囲を見回してから、背後を見た。

その先には地下に続く階段があったのだが、そこに一人の少女が居た。

腰辺りまで伸ばした長い金髪に、赤い目が特徴の一人の少女だ。

 

「き、みは……」

 

何故かその少女に既視感を覚えていた明久だったが、威圧しないようにと片膝を突いて、少女に視線の高さを合わせながら問い掛けた。

すると、少女は

 

「……我の名前は……アヴローラ……アヴローラ・フロレスティーナ」

 

と名乗った。

 

「ん、アヴローラでいいかな?」

 

明久の問い掛けに、アヴローラが頷くと

 

「それじゃあ、親御さんは?」

 

と問い掛けた。

アヴローラが出てきた地下区画は、所謂特別区画と言われており、簡単には入れない区画になっている。

 

「我に、血族は有らず……我は、孤独……」

 

「そっか……」

 

アヴローラの言葉に、明久は頷きながら

 

(この感覚……この子、魔族か……けど、登録の腕輪が無い……なんなんだろ?)

 

と内心で首を傾げた。

すると、アヴローラは

 

「我は衣を替えたい……」

 

と言ってきた。

 

「着替えたい? 着替えは……無いよね……」

 

今アヴローラが着ているのは、所謂病人服と言われる簡易的な服だ。

さて、どうしようか。と明久が考えていると、アヴローラはジッと明久が持っていた紙袋を見ている。

その紙袋の中には、凪沙の洗濯物が入っている。

 

(アヴローラの身長は……凪沙より少し小さい位か……)

 

そう目測した明久は、深々と溜め息を吐いた。

そして、数分後

 

「最後に……よしっと」

 

明久はアヴローラに、凪沙の制服を着せていた。

最初はアヴローラに着替えてもらおうかとも考えたが、アヴローラが制服の着方が分からないと言ったので、仕方なく明久が着させたのだ。

ただ無心で着替えさせた明久は、今居る多目的トイレのドアをゆっくりと開けて、外を見回した。

幸いに、人は居ない。

 

「よし……アヴローラ、静かに着いてきて」

 

「う、うむ……」

 

アヴローラが頷いたのを見て、明久はアヴローラの手を握って歩き始めた。

そもそも、何故明久はアヴローラと一緒に行動することを決めたのか。

明久はアヴローラが、違法研究の被害者ではないか。と考えたのだ。

魔族特区たる絃神島だが、時々魔族に対する違法研究をやって捕まる研究者が出るのだ。

そう判断したのは、まずアヴローラが血族すら居ないと言ったこと。つまりは、違法研究施設に捕らえられても、探してくれる人が居ない。

そして二つ目は、魔族登録章が無かったこと。

この魔族登録章にはGPSを含めた様々な機能が備わっていて、対称の魔族が何処に居るのか、体調はどうなのか、どういった状態なのか、ということを常に人工島管理公社に伝えている。

それが無いということは、後ろ暗いことに使われていると思ったのだ。

だから明久は、アヴローラを一度自分の家に連れていくことにしたのだ。

 

(大丈夫……これは人助け……犯罪じゃない……堂々としてれば、怪しまれないはず……)

 

明久はそう自身に言い聞かせながら、まず受付で面会許可証を返却。

そして、出口に向かった。

今のアヴローラは、先の病人服から凪沙の制服を着ていて、更に革靴も履いている。

革靴は少し歩きづらいようだが、明久はなるべくアヴローラに歩調を合わせた。

そうして病院から出て、暫く

 

「だあぁぁぁ……緊張した……」

 

周囲に人が居ないことを確認した後、明久は深々と溜め息を吐きながらそう言った。

 

「さてと……買い物に行かないと……アヴローラ用の服もだけど、食料買わないと……アヴローラ、何か食べられないのある?」

 

「……分からぬ……」

 

明久の問い掛けに、アヴローラは首を振った。

 

(うーん……これは、かなり厄介事に首を突っ込んだかなぁ……けど、やらないで後悔よりマシかな……)

 

明久はそう思いながら、よく行くスーパーに向かった。

その頃、ある場所では

 

「はあ……はあ……はあ……やったわ……十二番目を解放出来た……!」

 

と霧化から本来の姿に戻った、少女吸血鬼。

ヴェルディアナが、嬉しそうに呟いた。

宴への参加を拒まれて、親族の遺品だった聖鎗。

古代の遺物、魔力殺しの鎗も没収されてしまったが、その鎗はヘッドホンを着けた少年と三白眼が特徴の少年達により、取り戻せた。

その後ヴェルディアナは、一度拠点としていたクルーザーに戻り、その物置の中から牙城が用意していたボウガンを持ち出し、アヴローラが収容されていた病院の地下に、霧化の能力で侵入。

ボウガンに装填した鎗を使って、アヴローラを縛っていた封印を破壊。アヴローラを外に出したのだ。

その後、再び霧化の能力で地下から脱出。

今居る区画まで、何とか逃げてきたのだ。

そこに

 

「なんとか、無事みたいだな」

 

とヘッドホンを首に掛けた少年、基樹が三白眼の少年、康太と一緒に現れた。

 

「それで、本当なんでしょうね……私の隠れ家を用意してくれるって……」

 

「ああ……つーわけで、掴まりな」

 

基樹はそう言いながら、ヴェルディアナに手を差し出した。

それを見たヴェルディアナは、僅かに躊躇ったが今は二人しか頼れる人物が居ないからと、基樹の手を握った。

 

「いいぜ、康太……あの店に」

 

「……分かった」

 

基樹の言葉に頷き、康太は自身の能力。影を発動。

三人の姿は、そこから消えた。

こうして、物語は加速していく。


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